2018.05.14
【日替わりレビュー:月曜日】『メタモルフォーゼの縁側』鶴谷香央理
『メタモルフォーゼの縁側』
──おばあちゃんが出会ったもの、それはBL。──
こんなオビの素敵なガール・ミーツ・ガール本が発売されました。
BL自体ではないのですが、とても素敵なBL界隈のお話なのでこちらで御紹介させてください!
twitterでずっと更新を追いかけていた作品なのですが、この度書籍化されてこのお話の最初の舞台である本屋さんに並ぶことになりました。
75歳の老婦人がたまたま立ち寄った、街の本屋さん。
そこでふと手に取ったきれいな絵柄の──BLコミックス──!
そして、その本の会計をしたバイトの腐女子高校生・17歳。
普段の暮らしの中でのふとした出会いが、何げない日常生活にハリと彩りを添えてくれる、そんなお話です。
BLを媒介にして出会った、年代の違う二人の女子がもう可愛くて可愛くて。
自分と違った年齢の人と友達になれるというのは趣味界隈で多いと思うのですが、リアルのBL界でもそれは同様で、同じ作品を好きというきっかけで知り合って仲良くなるというパターンが散見されます。
お互いにお勧めの萌本を貸し借りしたり、知り合った人のBL歴が浅かったりすると、沼に引きずり込むべく、手取り足とりジャンルレクチャーをしたりされたりという経験をした腐女子はたくさんいるのではないでしょうか。
17歳と75歳という年の差はなかなか珍しいですが、それでも、彼女たちがしている経験を自分もした、という共感を覚える人は私だけではないはず!
もう、久しぶりに「マンガ」という媒体を読んでキュンキュンするおばあちゃんに読んでいるこちらもキュンキュンしますし、初めて出会う男同士の恋愛ものにドキドキしながら萌える様子にはハートを鷲掴みにされること間違いなしです。
BLコミックスの刊行速度の遅さに驚いて自分の予想寿命で割り算し、
「○歳まで生きたら○巻まで読める……○歳までがんばろう!」
ってやるところとか、可愛すぎて切実すぎてその感情に覚えがありすぎて思わず床を転がってしまう光景です。
そして、17歳の腐女子高校生・うららは、BL好きでありながら同じ話題で盛り上がれる友人のいない、いわば「隠れ腐女子」。
初めて出会った萌え友が75歳のおばあちゃんだったのです。
彼女がおそるおそるお勧め本を貸すところで、気に入らなかったらどうしよう、肌色具合が激しすぎてドン引きされたらどうしよう、でも面白いからお勧めしたいしぜひ読んでもらいたいし……と葛藤しながらお勧めBLを差し出すところとかも、彼女の内心が手に取るようにトレースできるBL好きとしては同意しかなくて、読みながら魂が抜けそうになる描写の連続です。
二人でお茶をしたりおすそ分けをしたり、BL系同人誌オンリーのイベントに一緒に向かったりと、萌えがあれば年の差なんて!
というBL界隈のリアルをほのぼのと楽しませてくれる素晴らしい萌本です。
日常生活の中で、誰かと自分の「好き」が共有できる幸せを見せてくれるとても素敵なマンガなので、ぜひぜひ、手にとっていただけたらと思います!!
©鶴谷香央理/KADOKAWA