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2018.05.24

【日替わりレビュー:木曜日】『さよならデイジー 眉月じゅん初期短編集』眉月じゅん

『さよならデイジー 眉月じゅん初期短編集』

眉月じゅんの描く「普通の女の子」

先日堂々たる最終回を迎えた『恋は雨上がりのように』
以前、アニメ版の監督である渡辺歩さんと、橘あきら役を演じた声優・渡部紗弓さんにインタビューをさせていただいた際に、以下のような話が出たことが印象に残っていた。

渡部:特に周囲からの反響が大きかったのが、第5話。ハムスターをきっかけにバイト先でちやほやされる店長に対してやきもちをやいてしまうあきらに、「あそこが一番可愛い!」って声をたくさんいただいて。ぱっと見クールな子が感情を見せる瞬間に、私も含めてみんな惹かれるんだな、と。アニメのクールなキャラクターって、ずっとクールなイメージがあるんですけど、橘あきらはあくまで普通の女の子なんだな、と思うようになりました。

確かに、一見クールに見えるあきらの表情は、どれも意外と「普通の女の子」なのだ。私も最初は、絵柄も相まって、いわゆるファンタジックなキャラクターを想像しながら読んでいた。しかしそこに描かれているのは、現実離れした都合のいいキャラクターではなくて、どこか親近感のわく、リアルな女の子だった。

だからこそ、彼女が、親ほどにも歳が離れた店長へ恋慕を抱くといった設定も、納得感をもって読むことができたのではないだろうか。後付けのようだが、今振り返ってみてそう思う。

そんな作者が、2007年から2017年までに描いた短編を一冊にまとめた『さよならデイジー 眉月じゅん初期短編集』が発売された。
集英社から出ている短編集だが、中に収録されている作品には「マンガ・エロティクス・エフ」(太田出版)や「ビックコミックスペリオール」(小学館)などに掲載されていたものもあり、10年間の彼女が描いてきた「女の子」の軌跡を、様々な角度から見ることができる。

表紙にもなっている表題作の「さよならデイジー」は、主人公の蝶野デイジーがある学校に転校してくるところから始まる。彼女は魔女で、転入したクラスの隣の席の男の子に一目惚れ。いいように弄ばれるも、鈍感な彼女はそれを意に介さずすべて受け入れてしまう。

表題作以外にも、ストーカー気質の女の子・サイ子が彼女もちの男の子にアタックする話や、自らの性欲に抗えず下の階に住む男性を襲う女性の話など、ちょっとどころかだいぶ頭のぶっ飛んだ女の子ばかりが登場する。

『恋は雨上がりのように』で眉月じゅんという作家を知り、作品が終わった余韻とともにこの短編集を読んだファンは腰を抜かすのではないか? すこし過激なセックスシーンもあり、「爽やかさ」とは程遠い一冊だ。

しかし、『恋は雨上がりのように』と完全なる別物か? というと、やっぱり眉月先生の作品たるものが根底に流れているように思える。
それは先述の引用にもあるように、どこかぶっ飛んだ「キャラクター」のように感じる女の子たちも、ストーリーを読んでいくとそこには驚くほど「普通の女の子」としての表情があるのだ。

時に恋をして、時に恋を諦めようとして、時に失恋を乗り越えようとして。涙を流しながら、踏み出す彼女たちの一歩は、ドラマチックな演出に飾られない。つい「バカだなあ」と言ってしまいながらも、目が離せないのは、そこにいる女の子たちがあんまりにもリアルで他人事のように感じられないからかもしれない。

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