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2018.05.25

【日替わりレビュー:金曜日】『花野井くんと恋の病』森野萌

『花野井くんと恋の病』

『おはよう、いばら姫』森野萌先生による新連載『花野井くんと恋の病』の第1巻が発売されました。

前作は、男の子が主人公であったり、ちょっとファンタジックな要素が混じったりと、少女マンガとしては異色だったのですが、今回はタイトルと表紙を見る限り、普通の恋物語っぽいですね。

主人公・日生ほたるは、周囲が恋に夢中なのに、自分は全く恋愛に興味を持てない高校一年生。ある日、学校でも一番のイケメン男子・花野井くんに何気なく傘を差し出したところ、次の日教室で告白をされてしまいます。ほたるはもちろんお断りするも、彼の熱心なアプローチに押し負け、お試しでお付き合いをしてみることにするのですが……

格差ラブかと思いきや…

お相手の花野井くんは、偏差値も顔面偏差値も80を超えると噂されるハイスペックイケメン。なるほど、これは地味なヒロインと王子様のようなヒーローとの格差恋愛を描いたお話なのかな……なんて安易に考えていたのですが、いいえ、全然違いました

この花野井くん、ほたるとお付き合いする前も、実は色々な女の人と付き合ってきました。けれども必ず彼女の方からフラレてしまう。なんとなく想像できるのは、彼があまりに完璧すぎて、自分が嫌になってしまうというものですが、そうではありません。

その理由は、彼の愛が重すぎるから。その驚くほどの重さは、ほたるに対しても早々に発揮されます。

重すぎて引く

彼女が無くしてしまったヘアピンを雪が降り積もる中夜通し探したり、待ち合わせでは1時間前から待機、結べるほどに長かった髪も彼女の何気ない一言からバッサリ切ってきたり……それらを花野井くんは笑顔で嬉しそうにしちゃうワケですが、その笑顔が逆に怖い

「重い」と一口で言っても、いわゆる嫉妬や独占欲から来るそれとは違って、純粋に彼女に尽くしたい、喜んで欲しいという重い想いから来ている行動で、それゆえにタチが悪いと言いますか。私のために死んで欲しいって言ったら、本当に死んじゃいそうな、闇(病み)を感じさせます。

知り合って数日、お試しでお付き合いしている段階でこの重さ。読んでいて思わず「ゲエっ」って言ってしまうぐらいのレベルなのですが、確かにこういうタイプのヒーロー、これまでいなかった気がします。完全にブルーオーシャンじゃないですか。やりましたね森野先生!

……しかしながらここまで重いヒーローを、素直に愛でることのできる読者がどれだけいるのかは、正直なところ疑問ではあるのですが。

ヒロインの懐が広いんです

”彼女としたいこと”を考えた時に最初に出てきた言葉が「最終的には同じお墓に入れたら幸せかな…」とナチュラルに出てきたり、電話の着信は数分おきに大量に……そりゃあ普通の人は耐えられないでしょう。毎回フラレてしまうのも納得です。

しかしこんな花野井くんを、ヒロインのほたるは受け止めちゃうわけですよ。元々恋愛がどういうものか分からないので、ドン引きするラインがおぼろげ。そして何より根が真面目でとても心優しいので、彼の頑張りを人間として咎めつつも、その努力自体はちゃんと認めて喜んであげるわけで。

その懐の広さに驚かされるばかりです。女子力とかじゃないです、人間力で持っていってます、これは。

そんな愛がわからないほたるも、彼と過ごすごとに、徐々に恋心というものが芽生えていきます。けれどもそれも、花野井くんの度が過ぎた頑張りを契機としているので、やっぱり普通のカップルとはどこかズレた形に。

彼の尽くしっぷりも、恐らく巻が進むごとによりオーバーになっていくことになるのでしょうが、どこまで行くのか楽しみでもあり、怖くもあり……。けれどもどこまで彼が暴走したとしても、きっとほたるは受け止めて、しっかりカップルの形にしてくれるんだろうなぁという妙な安心感もあるのです。

不安と恐怖と安心感とが入り交じりながら見守る恋愛って、なかなか他では味わえません。そんなオンリーワンな恋物語を、私と一緒に見守ってみませんか?

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この記事を書いた人

いづき

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