2018.07.10

【インタビュー】『はねバド!』濱田浩輔「人は一人だけじゃ成長できない」

北小町高校バドミントン部の主将・荒垣なぎさは、全日本ジュニアで惨敗したスランプをずっと抱えていた。そんなある日、羽咲綾乃という新1年生が現れる。バドミントンが嫌いな綾乃が、なぎさたち仲間やコーチ、他校のライバルたちと出会い、インターハイを目指す青春部活物語『はねバド!』

作者の濱田浩輔先生は「週刊少年ジャンプ」にてバスケマンガ『どがしかでん!』、ラブコメマンガ『パジャマな彼女。』を連載。その後「good!アフタヌーン」に移籍して本作『はねバド!』をスタート。

7月からはテレビアニメもオンエアされている大人気バドミントンマンガです。そんな濱田浩輔先生にロングインタビューを実施しました!

アニメ化についての率直な感想や、個性の強いキャラクターたちの深掘り解説、絵柄が変わっていった理由についても鋭く質問しています。

濱田浩輔:「週刊少年ジャンプ」にてデビュー。主な作品に『どがしかでん!』『パジャマな彼女。』(集英社)。2013年6月より「good!アフタヌーン」にて『はねバド!』連載開始。

(取材・文:かーずSP/編集:コミスペ!編集部)

原作を上手に再構成したアニメ版。試合シーンは度肝を抜かれた

©2018 濱田浩輔・講談社/「はねバド!」製作委員会

──試写会で3話までご覧になられた感想はいかがでしたか?

濱田浩輔先生(以下、濱田):原作3巻までの内容をアニメ1~3話でうまく再構成して頂いたと思います。原作ではめったに出番のない海老名悠伊勢原空が、部員同士の仲を取り持つ良い役割として活躍してますね。

綾乃やなぎさのチームメイト、海老名悠と伊勢原空

部活を辞めた3人組にもスポットが当たっていて、ちょっとハラハラしました。なぎさ孤立してるな、大丈夫かなって(笑)。あと、三浦のり子の恋愛好きな性格は事前に確認がきたんですけど、僕は気に入っています。

──アニメスタッフに何か要望は出されたんでしょうか?

濱田:すべてお任せしました。原作者がちょっとでも口を出すと、それが足を引っ張るやっかいな一言になったりするので、やめておこうと。
アニメのプロデューサーがバドミントン経験者で熱量の高い方だと聞いていたので、情熱がある人に任せた方が良い結果になるだろうと判断しました。

──アニメのお気に入りシーン、見どころは?

濱田:原作よりも、なぎさが置かれている状況がくっきりしています。原作を既読の方は、再構成された人間関係にも注目してください。

見どころは試合のシーンです。すごかったですよね! 劇場版かというくらいの動き方でド肝を抜かれました。シャトルを打つ音も、実際に会場で観覧している時と同じ音に聞こえました。ここまで作り込んでくださって本当にありがたい限りです。

綾乃の表現は、人間性が変わったのではなく、素直さの現れ

──バドミントンマンガを描かれようと思ったきっかけを教えてください。

濱田:ちょうどロンドンオリンピックの時でした。バドミントン準決勝の藤井瑞希・垣岩令佳ペアが銀メダルを獲得した試合をテレビで見ていて、このスピード感をマンガにしたら面白そうだと感じて、考え始めました。

その頃考えていた綾乃は定食屋の娘で、三角巾をかぶってましたね。商店街の期待を背負ってオリンピックを目指している女の子を、高校の部活ものに変えたんです。

本作の主人公・羽咲綾乃

──今の綾乃からは想像つきませんね。改めて、羽咲綾乃はどんな女の子でしょうか?

濱田「どうしてこんなに怖くなってしまうんだ」とアニメスタッフの方にも言われたんですが(笑)、僕の中では綾乃が変わってしまったとは感じていないんです。

序盤の様子とは裏腹に綾乃の本性が現れていく

1話から、いわゆる大人しい良い子としては描かなかった記憶があります。エレナにすべて丸投げしてますし(笑)、その幼さは、個人的には嫌いではなくて、気を使ったりできない子という印象です。

綾乃は最初から「良い子」ではなかった

──綾乃の中の幼さが、後半の綾乃に繋がっていると。

濱田:例えば4巻の芹ヶ谷薫子との試合では、精神的にも相手の上を取りに行こうとしています。これは幼さと、勝ちに行こうとする素直さの現れだと思います。

試合前からマウンティングをする綾乃

対して、9巻で薫子からキツいことを言われて「優しくなりたい」って気づけたのは、綾乃の成長の証です。

薫子とのやりとりを経て内面の変化が現れる

好きな気持ちをずっと強く持てることは才能

──作者からみた荒垣なぎさは、どんな女の子でしょうか?

濱田:自分のしたいことがはっきりしている子ですね。なぎさは周りの人が気後れするくらい「バドミントンが好きだ」って気持ちを強く持っていることで、他の子や監督からも一目置かれて、特別視されています。

誰よりも「バドミントンが好き」という気持ちが強いなぎさ

何日何ヶ月何年と同じことを繰り返せば、もしかしたらイチローのようになれるのかもしれません。でも普通の人は休んだりして、そこまで感情をコントロールできないですよね。でもなぎさにはそれができて、彼女の才能なんだと思います。

──コニー・クリステンセンについてはどのように捉えていますか?

濱田:コニーは設定していたスケールが大きくて、シャラポワやマラドーナみたいな競技史に絶対残る存在として描いています。

圧倒的強者・コニー

最初の方はちょっと高飛車だったんですけど、4巻の読み切りで過去編を描いて、ここでだいぶ可愛くなりましたね。

合宿を経てチームメイトにも心を開くようになる

立花コーチと倉石監督にみる、スポーツ指導の対比

──では、生徒達を導く側である、立花健太郎コーチはいかがでしょうか。

濱田:1巻の合宿から、少しずつ指導者らしく彼を描きたいと思っていました。8巻の「競技へのリスペクト」の話を経て、彼は成長したキャラクターだなあと。

健太郎も指導者として成長していく

担当編集:健太郎みたいなコーチングの人は若い人に多くて、倉石監督のようなゴリゴリのスパルタは年配の年代に多いそうです。

石澤の監督、倉石は押しつけ型のスパルタコーチだった

濱田:スポーツ指導にも世代があって、昭和と平成をまたぐかどうかで、スポーツに科学的な根拠を持ち込むか、気持ちを鍛える精神論に基づいているかという違いがあるんじゃないかと個人的には思っています。

僕は小学3年から高校までバスケットボールをやっていたんですが、当時の教えられ方は、特別厳しい学校だったので真夏の練習中にも水を飲むなという根性論のタイプでした。最近だとスポーツ科学の知識がより一般的になり、スポーツの指導法は科学的な根拠を大切にする傾向が強いみたいです。

──今、お話に挙がった逗子総合高校の倉石監督は、厳しい指導者として描かれています。

濱田:小学校の頃の監督は素晴らしい監督でした。でも違う時期のとある学生時代の監督はシュートを外したらビンタが飛んでくるような人で、倉石監督の原型にもなっています。でも一年間ずっと土日であろうと練習試合を組んだりと、監督にとっては良かれと思って鍛えてくれていた面もあったのではないかと思います。

倉石監督も端から見たら間違っている部分もあるかもしれないけど、そんな彼なりの優しさを感じてもらいたかったということがあります。

厳しい指導は倉石なりの優しさでもあった

──じゃあ当時の濱田先生も、その鬼監督に対しては……?

濱田:遠くに見かけたら逃げてましたけど(笑)。とはいえ、自分に期待してくれているという気持ちはありがたかったので。

倉石監督みたいなタイプはどの部活にも、他の学校にもごまんといました。そういううまくいかない指導者に、こうしたら良かったんじゃないかっていう気持ちも込めた結果、倉石監督の場合は改心して自分の指導を見直していくように描いています。「成長するおじさん」ですね。

生徒だけでなく、指導者達もバドミントンを通して成長していく

人は一人だけじゃ成長できない

──そんな倉石監督のパワハラを一身に浴びる石澤望。どんな子でしょう。

濱田:倉石監督の強い干渉から逃れるために、自分のオリジナルを発見しようと模索する。でもなかなかうまくいかないというのは、自分もすごく理解できます。

自分のマンガ描きのスタイルを模索していって、「じゃあ自由にどうぞ」と言われても、できないことがたくさんあります。それが反映されたキャラクターですね。

自分自身だけのスタイルを模索する石澤

──全国大会でも登場しますが、吹っ切れて良い表情するようになりました。

濱田:『はねバド!』全般に言えるんですが、人間は一人じゃ成長できない、だから二人で成長するっていう構図が多いです。

石澤と倉石監督の仲もすごく良くなりましたし、二人して成長する姿が描けて良かったです。

石澤と倉石は二人三脚で成長し合える存在に

──かんざしを刺している髪型も可愛いです。

濱田:どんどん大きくなっていってますよね。これは絵を描く人あるあるだと思うんですけど、リボンとかもだんだん大きくなりがち(笑)

たしかに徐々に石澤のかんざしが大きくなっている気が…!

──綾乃の母、有千夏のリボンも大きいですよね。

濱田:しかもなんでそんなに横に立っているんだって。もちろん作者も気づいてはいます。針金でも入っているのかなあ?(笑)

特徴的な有千夏のリボン

──作風がリアルになっていく中でも、芹ヶ谷薫子はずっとお嬢様ヒロインで安心します。

濱田:薫子はアニメでも出てきた途端に急に明るい雰囲気になって、いいキャラクターです。

正統派お嬢様キャラ・芹ヶ谷薫子

綾乃とは汚いことを言い合える仲でして、綾乃はエレナとは罵り合いができません。本音でぶつかり合うって、どこかで同じ部分を持っている対等な相手じゃないとできないことなので、バドミントンで拮抗する綾乃と薫子は、それができる良い関係だと思います。

辛辣な言葉を浴びせるが、それは思いを共有できるからこそ

「あの時もう少し頑張れてたら」という後悔

──橋詰英美についてはいかがですか?

綾乃と理子に立ちはだかる、橋詰英美

濱田:かなり思い入れがあるエピソードです。橋詰が特別酷いわけではなくて、「もうちょっと頑張れたよな」って後悔する瞬間なんて、だれしもあると思うんですよね。

──試合後の橋詰と重盛との語らいが胸に刺さります。

濱田部活動を引退した日。放課後に毎日通っていた体育館に行かなくていいってことになったときの悲しさは、自分が小中高の部活で経験したことです。

放課後、吹奏楽部の楽器がボーボー鳴っていたあの光景を、もう自分は味わえない。そんなすごく切ない感じを橋詰のラストでも描いています。

敗北後、引退する橋詰は放課後の尊さを知る

──益子泪(ルイ)はいかがでしょう。

全国三強の一人、益子泪

濱田:実は、泪と血が繋がってるのはお父さんだけで、兄の推(スイ)は両親の子供ですけど、泪は母親が違うので、血が半分しか繋がっていない兄妹になります。

担当編集:益子の家庭環境はエグみがあるからはっきりと明記しないでほしいと、ネームの段階では伝えました。

濱田:一応、家庭環境については「母さんの子じゃないのに」とか、「お義母さん」といったようなセリフで匂わせてはいます。母親も本当は泪によくしてあげたい。でもできなくて、辛くあたっちゃっているという心情になっています。

独特な人物像は、過去の環境も影響していた

なぎさvs綾乃のラストシーンは、失神しそうになりながら描いた

──読者から反響の大きかった対決やエピソードはありますか?

担当編集なぎさvs綾乃戦に尽きます。数字としても発行部数が5巻〜7巻でぐっと伸びたんです。結局みんな、これが見たかったんだなって思いました。

なぎさと綾乃の死闘

濱田:なぎさと綾乃の試合は最後まで描ききるという気持ちで臨みました。ラストの見開きの部分とか、もう描いていて気分的に失神しそうでした(笑)。ラストの決着はこういう終わり方をする戦いを描きたいとずっと思っていたんです。

あまりにも意外な最後で幕が引かれた

──といいますと?

濱田実際のスポーツで起こる不測の事態を入れたいんですよ。ただのステータスで勝負が決まるなら、計算にしかなりません。この時体調が悪かったとか、いろんな要素で勝ち負けが決まるのがスポーツの面白いところだと思っています。

全国大会編は、フィジカルで劣る綾乃が奮闘

──なぎさvs綾乃の試合以降は、全国で強豪とぶつかる第二部といった感じです。

濱田:全国大会では、それぞれテーマを決めて描いています。例えば橋詰&重盛瑞貴タッグのダブルスの試合は「評価」。自己評価と他人の評価のズレで苦しい橋詰。重盛がC特待生として入学してくるエピソードも、最後に監督がマジックで評価を書き換えるシーンに繋がってます。

重盛は、元々あまり期待されていないプレイヤーだった

──「天才」モンスタータイプの綾乃が、益子泪戦ではフィジカルで劣っている普通のプレイヤーとして描かれます。

濱田:綾乃を最初にデザインした時から、華奢なフィジカルのなさは絶対に足を引っ張るだろうと思っていました。

綾乃は、フィジカルで劣る益子に苦戦を強いられる

7巻までは「神童」としての綾乃を描いています。綾乃の旧姓を「神藤」にしたのも、神童を意識して名付けました。でも神童としての綾乃はなぎさ戦で一回終わって、そこからは全国の神童たちが集まってくる世界になっています。

──綾乃の役割の変化は意識されたんでしょうか?

濱田:はい。小学校で神童と言われていた上手な子が、高校に入ったら平凡とか、いなくなるとか、そういうのをたくさん見てきました。元神童だった子のキツさや頑張りを、綾乃でやりたいというのが全国大会編です。

弱さと向き合い、それでも天才だと証明するべく奮闘する綾乃

──どのスポーツでもそういうことがあるんですね。

濱田:小学校の時は体格差があまり出ないから運動神経で勝っていたのが、高校になるとパワー差が出てくるからかもしれません。特に男子は体格差が露骨に出てきます。フィジカルの力は鍛えたとしても、個人差が出てどうしても限界があるから、それを『はねバド!』では才能として扱っています。

スポーツにおける”才能”とは

絵柄を変えた理由は、「迫力ある試合を描くため」

──4巻から絵柄を変えられました。理由をお聞かせいただけますでしょうか?

リアル路線の絵柄へと方向転換してきた

濱田連載中に描きたいものがどんどん明確になっていったんです。試合をより迫力あるものにするために模索していった結果です。特に、なぎさvs綾乃戦のラストの見開き。あのグリップのページは、前の絵柄では表現できませんでした

手からラケットがすっぽ抜けるシーンを、大迫力の絵で見せた

──確かに、1巻の絵柄ではここまでの迫力は出なかったと思います。

連載開始当初の試合の様子

濱田:連載開始当初は、ラリー中の複雑な駆け引きは表現できないと諦めてブレーキを踏んでいました。でも絵柄を変えることで細かく描けるようになったのも、成長かもしれません。

──絵柄を変えることの不安はありませんでしたか?

濱田:(担当編集へ向けて)不安って言ってましたっけ?

担当編集:僕が不安でした。絵というのは人間における見た目と同じなので、元々のお客さんが嫌がっちゃうんじゃないのかなって。でも突っ走るべきだとも言いました。結果として5〜7巻で発行部数が増えまして、読者の方はストーリーで読んでくれていたことに安心しました。

──絵柄の変化にともなって、試合の勢いも増しているように感じます。

担当編集:濱田さんはネームのやり方を変えてから、絵に急激に勢いが出るようになりましたよね。

濱田B7の小さいノートに描いてます。ここにすばやく描くことで、絵にも勢いがつくような気がするんですよ。例えば、運動のシーンは丁寧に一生懸命、なぞるようにラフを描くと、絵が止まって見えて迫力が出ない感じがします。カラーの絵なんかは、ちっこいのに描いて拡大するやり方で描いています。

特別公開! 濱田先生の実際のネーム

敗北が成長につながることを大切にしたい

──全体を通して、負けて気付かされる、敗北することで成長することにこだわりを感じます。

濱田:そうですね、負けたあとの選手を濃く描いています。高校スポーツはたった一校・たった一人の選手だけが勝ち、準優勝以下の全員は負けた人になって、試合の期間が終わっていきます。

でも負けた人は伸びるチャンスがあります。次へ向けて頑張れば成長していけるというのは一番大切にしている部分です。

負けを確信した試合でも、次に向けて一つでも学びを得ようとする選手の姿も

──幕間に描かれている「著者近況物語」、好きでした。もうなくなってしまったのでしょうか?

「著者近況物語」では先生がエッチなお姉さんの姿で登場

濱田:5巻で「ここは真剣に読ませましょう」ってことでカットして、7巻で一回復活したんですけど、なくなりました。

なぎさvs綾乃戦後に一度復活した

ああいう著者マンガみたいなのは、少年誌の頃のサービス精神だったのかなって思います。少年誌ってサービス精神旺盛な単行本作りで、おまけが多かったりするじゃないですか。

担当編集:アニメの江崎慎平監督は、これのせいで濱田さんは女なんじゃないかって混乱していました(笑)。

濱田:あはは(笑)。今ではもう作品のノリとあってなさすぎて、こういう軽いノリは別のところでやりたいですね。

「自分のことが自分にもわからない」悩み

──マンガ家デビューして12周年。振り返ってみていかがですか?

濱田:嬉しいです。この歳までマンガで食べていけるのは当たり前じゃないと思うので、今ある仕事をしっかりやるだけです。すごいスピードで走っていかないと、後ろから道が崩れていくインディジョーンズみたいな感じになっているので。

──なるほど(笑)。影響を受けたマンガ、子供の頃に好きだったマンガはありますか?

濱田『スラムダンク』『ピンポン』とかいっぱいあります。子供の頃は『魔法陣グルグル』『覇王体系リューナイト』の二つが、ものすごく好きでした。

『ドラゴンクエスト』みたいなRPGの世界にすごく憧れていたので、ああいう牧歌的な絵柄で、緑の綺麗なところで冒険したいなって。『魔法陣グルグル』はコマ割りも少なくて動作を分割しない、絵本的な感じがいいですよね。

──マンガ以外だと最近はどんな本を読まれていますか?

濱田デカルトとかの哲学書を読んだりしています。「自分のことが自分にもよくわからないんじゃないか」って疑問をずっと抱えていて、それは綾乃にも投影されている悩みになっています。

──過去にお好きだった映画はどうでしょうか?

濱田:岩井俊二監督の『四月物語』が好きです。

『四月物語』(ノーマンズ・ノーズ)

桜の絵がすごく綺麗だし、音楽がめちゃくちゃいいんですよ。北海道から東京の大学に上京してきた女の子の話です。自分も上京してきた頃に観たので、余計に感情移入していたからもしれません。

──最近おすすめのマンガを教えてください。

濱田石黒正数先生の『天国大魔境』と、奥浩哉先生の『GIGANT ギガント』はどちらも続きが気になります。

奥先生のつかみの威力が半端ないです。あまりキャラが喋らなくても淡々と話が進むのと、圧倒的に読みやすい感じ。あれだけ背景の密度が高いのに見やすくて、映画を見ているような気持ちになります。

──マンガ以外のご趣味については。

濱田スポーツ観戦ですね。バドミントンはもちろんいっぱい見てます(笑)。高校の頃からNBAバスケはシーズンで追っていて、10月末から6月までの試合を見るのが自分にとっての風物詩になっています。

──スランプ脱出法などはありますか?

濱田:脱出できているのかわからないんですけど、ひとつ確実に言えるのは、キツくても描くということだと認識してます。

「駄目だ、自信がない、嫌だ」としか思いつかなくても、机に向かって手を動かさないと、本当にボーッとしている時間だけが過ぎていくんですよ。それと手を動かすと脳が働くっていうことが、科学的にあるのかもしれません。

担当編集:濱田さんは連載が始まってから一回も休載がなくて、締め切りにも遅れたことがないので、今スランプになるって聞いて意外でした。

濱田:普通にたくさんあるんですが、休んだ方がキツいとも思っているんです。スポーツで1日休んだら取り返すのに3日かかると言われているのと同じで、一ヶ月も休むことを想像すると恐ろしいです。なのでインフルエンザになった時も描いてました。

担当編集:それは休みましょうよ(笑)。

──13巻も先日発売しました! 内容のご紹介や、他告知を頂けますでしょうか。

13巻書影

担当編集:13巻では、ついになぎさとコニーの戦いが決着し、インターハイベスト4、最後の1人が決まります。8月には浜松でインターハイが始まりますし、作品と現実の時間がリンクするタイミングですので、今以上にバドミントンが盛り上がってくれたら嬉しいです。

放送中のアニメも、スタッフの皆さんの情熱を感じる作品になっていて、毎週見るのが楽しみです。原作と違うところはあると思うのですが、濱田先生と一緒に応援していきたいと思います。スタッフの皆さんも『はねバド!ぼっち』を描いていただいている篤見唯子先生も、作品に愛情を持って頂いている方ばかりで、本当に感謝しかないです。原作、アニメ、どちらも是非見ていただけれればと!

──ノベライズも出ましたね。志波姫唯華をメインにしたのはなぜでしょうか?

『小説 はねバド!』(望月唯一,濱田浩輔/講談社)

担当編集:綾乃以外で語られてない人気ヒロインとして、唯華が選ばれました。

人気キャラ・志波姫唯華

濱田:声優さんに聞いてもみんなだいたい唯華っていうくらい人気ですよね。小説は、ちょうどマンガにおける時間軸の一年前に唯華が主将になった時の話です。

──読んでみていかがでしたか?

濱田:青春群像劇っぽい感じは、小説の方が爽やかかも(笑)。でも原作に通じる青春の苦さもあったり。勝利に対する考え方の違いは原作のテーマにも沿っていて、原作ファンも楽しめると思います。ヒナと若柳小町って主人公の子が元々ライバルで、同じ高校でも競い合っている感じですね。私が挿絵も描いてますのでぜひ読んでみてください。

──最後に皆さんへのメッセージをお願いします。

濱田:このたびアニメにもなって、知っていただける機会も増えたと思います。是非原作の方も、試合をするシーンが後半いっぱいありますので読んでほしいです。

──本日はありがとうございました!

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