2018.08.13
【日替わりレビュー:月曜日】『よだかは唄わない』濱久実
『よだかは唄わない』
濱久実先生の初コミックです!
シリアスチックな表紙とタイトルですが、雰囲気を裏切らないちゃんとしたシリアス作品です。
田舎の村で育った幼馴染同士の再会ラブとなっております。
山沿いの村で育った泰良と昌は、高校進学で泰良が東京に行ったことで離ればなれになってしまいます。
それから一度も会っていなかったのですが、村で起こった事件をきっかけに泰良が里帰りして再会します。
昔は昌に尻に敷かれていた泰良ですが、再会した昌は以前のオラオラ感はなりを潜め、不器用ながらも優しい性格が前面に出てきていました。
そんな昌の変化に戸惑いながらも次第に惹かれていく泰良。
しかし、泰良が村に戻ってくる原因となった事件の犯人として、昌と以前失踪してしまった昌の父が疑われ始めます。
泰良自身も、違う、そんなはずはないと思いながらも疑念を拭いきれずにもやもやした気持ちを抱えたまま日々を過ごします。
好きだから信じたいけど、昌しか知らない数え唄が事件に関わっていることを知って、もしかして? と思ってしまう……。
この、子供のころから相手に抱いていた気持ちが、時間を経て変化していく過程がたまらないですね。
田舎特有の閉鎖的な空気も相まって、また身内が絡む事件の湿度も加わって、作品全体にセピアに染まったような雰囲気が漂っております。
二人は揃って村を出て事件にかかわりがあるかもしれない昌の父親を捜しに行きますが、そのちょっとした冒険の最中に両想いになって結ばれます。そのあと無事に事件は解決して(もちろん昌は犯人ではありませんでした)一件落着となります。ただし、事件自体の後味は、残念ながらあまり良くないです。
泰良は結局、村には残らず東京の大学に戻り、ちゃんと一人前になって昌を迎えに行きます。最後の流れがなんだかおとぎ話みたいで、ちょっとほっこりしました。
しっとり萌えがお好みの皆様、ぜひご賞味くださいませ~。
©濱久実/大洋図書