2018.08.12

【日替わりレビュー:日曜日】『この音とまれ!』アミュー

『この音とまれ!』

大人気高校生青春マンガ、『この音とまれ!』新刊18巻が発売、そしてアニメ化がついに発表されました。まだ未読の方には、ぜひこのタイミングでチェックしておいて頂きたく、今回ピックアップさせて頂きます。

廃部寸前の時瀬高校・箏曲(そうきょく)部が舞台。先輩の卒業によりただ一人の部員となってしまった部長・倉田武蔵のもとに、不良少年の久遠愛(くどおちか)やその友達、そして天才的な箏の腕前を持つ少女・鳳月(ほうづき)さとわが現れ、時にボタンの掛け違いはありながらも徐々に一丸となり、力を合わせて全国大会を目指していくという、箏曲つまり「お箏」を中心とした物語が紡がれていきます。

この記事でも言及されていましたが、本作は正に青春マンガの王道。親や大人達との摩擦をはじめ、同級生や先輩、後輩たちとの友情やすれ違い、そしてロマンスといった人間模様と、練習や大会などの箏曲部としての活動との結びつけ方が非常に丁寧で、『ちはやふる』と並び、高校生部活マンガの理想郷がここにあると断言しても良いでしょう。

また、アミュー先生によるキャラクターたちの心理描写の描き方が非常に繊細かつ、力強く、読者の胸を打ちます。私自身最初はちょっと青春クサイ感じの作品かなと穿った見方をしてしまっていましたが、読み進めるうちにそれはまるで「お箏」が奏でる調べのように心にすっと入ってきますし、生徒達のアツい情熱のぶつかりに涙させてくれるのです。

新刊の18巻でも、久遠やさとわをはじめ、物語を彩るキャラクターたちの表情一つ一つから滲み出る複雑な感情を描ききっており、登場人物に対する読者の感情移入はピークへ。元々画力が高い先生ですが、巻が増すごとにどんどんその腕前が高められてきており、大ゴマや見開きでの緩急の付け方はお見事です。特にこの18巻には、ジャンプSQ.でのデビュー作でもある読み切り「ミリオンスマイルズ」も掲載されており、過去作から成長されてきた表現力の軌跡も感じ取ることも出来ます。

さらに本作の魅力のもう一つとして、作中に登場した楽曲がどういったものなのか聞くことができるという点があります。YouTubeには公式の演奏動画や、2017年3月8日に発売されたCD「この音とまれ!~時瀬高等学校箏曲部」の収録曲紹介映像もアップされています。(ちなみに同CDは、第72回文化庁芸術祭レコード部門の優秀賞や、第32回日本ゴールドディスク大賞の純邦楽・アルバム・オブ・ザ・イヤーも受賞。)

なかなか、お箏による曲って一辺倒なイメージしか抱きづらいので、こういったサポートがあると、より作品を深く楽しめますよね。アニメ版でもこういった「お箏」の演奏についてもどのように表現されていくのか期待が高まります。

以上、個人的にも大好きな作品ですので終始褒めちぎってしまいましたが、読めばこの気持ちはわかってくれるはず…! 夏後半戦も暑い日が続いていますが、ぜひ爽やかな青春物語を読んで乗り切って参りましょう!

試し読みはコチラ!

この記事を書いた人

八木 光平

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