2018.08.22

【日替わりレビュー:水曜日】『未熟なふたりでございますが』カワハラ恋

『未熟なふたりでございますが』

新婚の私達、まだえっちしてません

新婚夫婦の佐伯育馬(いくま)と佐伯澄花(すみか)は、素人童貞と処女。もっとも、別にお互いのことが嫌いなわけでは断じて無いし、倦怠もしていない。むしろお互い愛しすぎていて、早くヤりたくて仕方ない。

ところが夫は極度のロマンチストで引きがち、萎えがち。妻はどストレートで空回りっぱなし。相思相愛でいつでもOKなのはわかっているのに、どうしても一歩前に進めない…。

こじれまくった夫婦のセクシーラブコメディ。エロシーンはないものの、際どいシーンはたくさん。問題はその際どいシーンから先に進めないこと。

育馬はえっちの合図のために、寝室を薄暗くして飾り付けをしたり、花を買ってきたりと、大変まわりくどい。彼はそもそも幼なじみの澄花のことが好きで仕方なくて、なかなか思いを伝えられなかった、という引っ込み思案ゆえに「相手の気持ちがわからない」恐怖感が今も染み付いている様子。

一方澄花はコンドームを見えやすく置いてみたり、「ヤりたいだろ? 誘いたいだろ?」とトークがいちいち露骨。実は彼女ものすごい照れ屋。特に育馬がメガネを外した姿が好きすぎて見られず、緊張してしまうクセがある。真剣に悩みすぎていて、知人にどうしたらえっちできるのか相談しているほど。

この作品における性行為は、性欲の発露としてはあまり掘り下げられていない。恋愛感情のあらわれとして、滑稽に失敗すればするほど2人の「相手への愛」が表現される仕組みになっている。

「したいよ 好きだから隙間なくくっつきたい」と語る澄花の言葉には、性経験の有無を気にしている焦りや、抑えられない性欲の悶えはほとんどない。「夫が好き」という一途な思いが貫かれている。

超草食な育馬視点だと、妻がかわいくて仕方ないのがよくわかる。好きすぎて大切にしたい気持ちは、性経験の有無とは別の、ステキな童貞イズムだ。

寸止め続きの2人の関係は「一緒に寝たり風呂入ったりしてまでヤらないのかよ!」とツッコミたくはなるものの、見ていてあまりやきもきしない。性体験以外の部分で、確実に2人の恋愛は育まれているからだ。

自宅を模様替えして旅館ごっこをするなど、こっちが赤面するほどのバカップルっぷりが楽しい。

近年は「妻萌え」「旦那萌え」マンガが増加傾向。結婚している相手が照れる様子がキュートという、客観的な立場の萌えの需要が強くなってきている。ピュアな恋愛純度の高い『お酒は夫婦になってから』『大正処女御伽話』など、未成年カップルよりも、新婚夫婦の方が生活的に安定している分、安心してニヤニヤを楽しめる

いつまでたってもえっちできなかったカップルマンガといえば『ふたりエッチ』が有名。そこまで長く初体験を引っ張ることはないとは思うが、同じピュアカップルでも「えっちできない」事態への向き合い方は少し違うので、比較してみるのも面白い。

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たまごまご

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