コミスペ!

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2018.08.31

【日替わりレビュー:金曜日】『桜庭さんは止まらないっ!』千里みこ

『桜庭さんは止まらないっ!』

やばい作品が登場しました。千里みこ先生の『桜庭さんは止まらないっ!』です。

何がやばいって、ストーリーのテンポ感がやばい。正味7分もあれば1巻読み切れるぐらいです。その内容に触れる前に、まずはあらすじをご紹介しましょう。

イケメンで優しい理想のカレシ、できちゃった♥……だけど、芽依ちゃんの初カレ・桜庭さんはちょっとヘン!?付き合って最初のデートでいきなりお泊り!!はじめてのキス……と思ったらまさかの……!?「芽依ちゃんて食べたいくらい可愛い♥」妄想のナナメ上をいくっ!心拍数暴走ラブコメ第1巻!

出会って5秒で交際

物語の主人公・芽依は恋に飢える女子高生。「カレシほしー」とか言いつつ、行動が恋に直結しない、から回ってばかりの残念な女の子です。……と、ここまでは少女マンガでよく見る光景なのですが、ここからが本作は違います。

芽依が転んだところをイケメンに助けられたと思ったら、いきなり「池田芽依ちゃんだよね?……オレと付き合ってください(爽やか笑顔)」と、出会って5秒でまさかの告白をされます。一瞬にして彼氏ができるという、某AVシリーズも驚きの急展開ですよ。

怖いのは、イケメンとはいえ相手は初対面で、しかも出合い頭に告白してくるようなヤベえ相手でありながら、芽依は何も考えずにオッケーしちゃうっていう。圧倒的にチョロいというか、もはやこれは心配になるレベル。心優しい芽依の友達も、流石にそれは怪しいと「それ絶対エッチ目的だから」と諭してくれるんですけれども、いや、仮にエッチ目的だとしてももっと柔らかなアプローチするだろ。

いちいちパンチ力強め

その後、デートをして怪しい人じゃないってことを確かめようとするのですが、そこで明らかになるのは、彼・桜庭さんが変態だということ。「変態」といってもぶっ飛んだ性癖を持っているというワケではなく、ヒロインの芽依を困らせて、慌てふためく様子を見るのが楽しいっていう、つまるところ優しい男の仮面を被ったドSっていうやつなんですけれども。

しかしその手段が結構唐突というか、流れとか関係なくぶっこんでくるタイプなので、読んでいて戸惑いを隠せません。飛び出してくる言葉が「首輪つけて24時間監視したい」とか「食べちゃいたい」とか、まず言葉が強めなんですけれども、それに加えて行動もパンチ力強め。

特にプッシュされているのが「舐め」なんですけれども、キスすると見せかけて、鼻先を舐めたり耳を舐めたりと、なかなかパンチのあるドキドキを仕込んできます。

大人の階段4段飛び

また、とにかく恋に生き急いでいるヒロインと、それをすべて受け入れてしまう彼氏なので、イベントの投入のされかたも尋常じゃないぐらいハイペース。2回目のデートでハプニングからいきなりお泊りするし、3回目にはナイトプールっていう。これ、桜庭さんから誘導しているわけではなく、むしろヒロイン主導というところがヤバい。自らヘンタイに巻き込まれに行っているので一切擁護できないっていう。

ともにブレーキぶっ壊れている状態なので、もう楽しい方に突っ込んでくしか無いよねという、その勢いの良さに圧倒されます。

考えるな、感じろ

この急展開についていけている読者はどれだけいるのか………いや、たぶんほとんどついていけてるんですよね、これが。

というのも、本作のコンセプトとして、そもそも話の流れはさほど必要としていない。あるのは「キスされるかと思ったら鼻を舐められた」とか「お泊りで布団が一つしか無くてどうしよう」とか「ナイトプールでドキドキ」とか「ヘンタイっぽい発言をされた」とか、その一瞬の、刺激の強いアイコンによる陶酔感。それを間髪入れずに連打することで、読者はドキドキ、クラクラするという構図です。

なので本作の場合、おそらく2話目以降をシャッフルしても全然成り立っちゃう。感情の機微とか、キャラクターが抱える物語背景は薄めで、ただただ事象としての強度が高いイベントがあるだけ(というか、そちらに集中させようとするならば、下手なシナリオは邪魔にすらなる)。

この手法自体は一昔前に流行ったケータイ小説なんかでよく見られたものなのですが、あちらが不幸の集合体みたいな感じだったのに対して、こちらは幸福の詰め合わせのようになっており、受ける印象はこんなにも違うのかと驚かされます。Googleで本作のタイトルを入力すると、サジェストで「あらすじ」って出てくるんですが、調べる必要なんてないよと言ってあげたい。

個人的にはこういう展開の作品はなかなか戸惑いが大きくなかなか消化できないのですけれども、こういう作品の方が案外イケメン俳優さんを起用しての実写化と相性が良かったりするので、普通に来年あたり映画化・ドラマ化してても全然おかしくありません。ベツフレとジャニーズないしイケメン若手俳優ってものすごく相性良いんですけれど、下手したらその急先鋒になり得る作品なんじゃないでしょうか。

とにかく色々とすごい内容になっているので、物は試しと一読してみてはいかがでしょうか。

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この記事を書いた人

いづき

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