2018.09.19
【日替わりレビュー:水曜日】『恋愛感情のまるでない幼馴染漫画』渡井亘
『恋愛感情のまるでない幼馴染漫画』
幼馴染って域超えてるよね、そのイチャつきっぷり
少しクールめの少年・真田辰季(さなだ・たつき)。暴走お馬鹿さんな少女・後鳥羽空良(ごとば・そら)。高校二年生の2人は幼馴染。今でもいつも一緒にいる仲良し。
歩く時は指を絡めた恋人つなぎ。寒いからと正面同士で抱き合う。軽い気持ちでチュッチュとキスをする。いやいや、それは仲良しの域じゃない。スキンシップ過多では…?
しかしこの2人、恋愛感情がないらしい。誰がどう見ても恋人同士のような行動ばかりなのに、あくまでも幼馴染らしい。
辰季は空良のパンツやブラを見たら喜ぶし、太ももにエロスも感じている。彼女に性的なものはしっかり感じてはいるようだ。空良もムラムラすると辰季に接触もする。男性として辰季の魅力が高いことも明言している。でも辰季は恋愛対象じゃないらしい。耳を舐めあって性的にお互い感じるラインにまで到達している2人。恋人でもハードルの高いプレイを…! なんなの君ら。
空良「あたしとそういう流れになった時にヤっておけばねぇ」
辰季「その後のことちゃんと考えてる?」
空良「絶対気まずくなるでしょ 自制しといてよかったじゃん」
幼馴染だから一緒にいて気楽。どこまでスキンシップをとっても、お互いすんなり受け入れあえる。しかし相手とエッチをしたり恋人関係を意識したりすれば、この関係が一気に崩れてしまうのもわかっている。性的なことをあけっぴろげにできて、スキンシップもやりすぎなくらい取れる。けれども恋愛の駆け引き的な面倒臭さがない。マンガにおける「幼馴染」というイメージが持つ「萌え」の、究極形だ。
抱っこして足絡ませている2人の様子は非常にセクシャル。しかし、この2人が進展してエッチするところは、あまり想像できない。そもそもそういう展開は2人ともまるで求めていない。あくまでもぬるま湯な関係がベストなのだ。
友達以上恋人未満、という言葉では表現できない。「友達+性欲-恋愛感情」という感じ。性的な部分では、お互い触れ合って勃つか、濡れるかのラインと、それを受け入れるか否かの心境は、大きな要素になりそう。
今の所男女関係での嫉妬は無いようだ。これまた気楽で都合がいい。スカートをめくって見せてからかう空良。それを見て喜ぶ辰季。ラブコメの「異性を意識する」瞬間でストップしたまま、永遠に恋愛モードに進展しない空間。
「こんな関係あるわけないだろ!」と言いたくなる気持ちを口にするのが野暮なほど、ひたすら心地よくなれる「幼馴染ファンタジー」作品だ。
©渡井亘/竹書房