2018.09.15
【日替わりレビュー:土曜日】『ふたり生徒会』ゆずチリ、かとそん
『ふたり生徒会』
学校の生徒会。
フィクションではやたら権威があったり、むやみに多忙だったり、役員が変人超人ぞろいだったりと、おもしろ極端な描写がなにかと多い存在である。また、それを逆手にとって「いやいや生徒会にそんな権力ないから!」とメタな否定をする作品なんてのもあったりする。
「読売中高生新聞」紙上の人気作で、2017年夏から小学館「サンデーうぇぶり」でWeb連載もされているマンガ『ふたり生徒会』もまた生徒会を舞台とする作品だが、さて、そのさじ加減はどのような感じだろうか。
メインとなる登場人物はタイトル通り、二人である。
まず生徒会長・渡静士郎(わたり せいしろう)、中学二年生男子。書記・会計・庶務も兼任。ひとなつっこく、コミュニケーション能力と行動力に富んだ明るい少年。
もうひとりは副会長の水谷涼子、中学一年生女子。淡々と落ち着いた物腰の、マジメ&天然な黒髪ロング眼鏡っ子だ(いいですね……)。
そんな対照的なふたりが放課後に生徒会室に集って会報を作ったり、雨の日には持ち主不明の置き傘を集めて傘を忘れた人へ貸し出す制度を考案したり、会長がノリノリで作ったご意見箱へ意見が少ないことに気をつかった副会長がこっそり投書したり、雪が積もればかまくらを作って生徒会室第二号と言い張ったり、活動がない日には宿題をしにきたり、リコーダーの練習をしたり……。
微笑ましい光景の数々が、毎回5ページのショートコミックとしてさらりと読者に投げかけられていく。
むやみに派手な奇矯さに頼らず、かといって逆張りの否定でもなく。
のんびり、ほのぼの、たまに現実的な範囲でにぎやかな、あくまでも日常的空間としての生徒会を描くというアプローチが、本作の特色であり美点である。
なお、まだ単行本化されていない範囲では、のちに登場人物の卒業・進級によって生徒会の代替わりが進み、水谷さんが繰り上がりで会長をつとめて引退、さらに現在は後輩キャラだった小柄な元気っ子の橘春花が二年生で会長となり、長身朴訥少年の草刈柊馬一年生を副会長につけた三代目が活躍中。ショート形式の日常コメディでありながら、全体通して読むとちょっとした大河感もにじみ出てきている。
ひとが変わっても続く“ふたり生徒会という空間”そのものが、本作の主役といえるかもしれない。
©ゆずチリ、かとそん/小学館