2018.10.03

【日替わりレビュー:水曜日】『井地さんちは素直になれない』ぽんとごたんだ

『井地さんちは素直になれない』

暴走する父娘愛、それもまた幸せのかたち

父・井地初太郎。41歳の会社員。娘のことが好きで仕方ない

「いかなる主観をはぶいてみてうちの娘はダントツなんだ 内からあふれ出る気品と教養 周りへの心配りに慈愛の精神 あらゆる全てがいちじるしく成長しちゃってもう…」

娘・井地はるこ。15歳の高校生。父のことが好きで仕方ない

「俳優かと思わせるあの渋みとセクシーさ!そして全てを見透かしたようなでもどこか憂いにみちた瞳!!それでいておっとっととか言っちゃう少年のような無邪気なかわいさ!あぁ!!どうしようもないほど愛おしい!!」

友人・同僚には激しく相互の愛を主張できるのに、本人には何一つ素直に言えない。父娘の親ばか、子ばかが激しすぎて、何一つ関係が縮まらない、暴走型ファミリーラブコメディ

父は娘に結婚式さながらの巨大ケーキを買い、娘は父に「HARUKO DAISUKI」と文字の入った手編みのセーターを作った。けれども二人とも渡せない。夏、有給を使う気満々の父と、宿題全て終わらせて時間をたっぷり作った娘。けれどもお互い声をかけられないから、夏休みにどこにも出かけられない。

不器用なのは分かるとしても、かなり行動が重すぎる。いやまあ、ちゃんと伝えたらその重い愛を大喜びするだろうけれども、親子だぞ!

第1話では、はるこが「お父さんとあんなことやこんなことをしたいよ!!」と友達に叫んだところを「発言がギリギリだよ!」とツッコまれていた。どうしても父娘の「好き」が行き過ぎると、絵面的に近親相姦的の匂いが強くなってしまう。しかしこの作品は徹底して「親子愛」であることを貫いているのがとても重要。

はるこが父を好きなのは、一見恋愛にしか見えないけれども、根の部分はあくまでもファザコンの範疇だ。

2巻では仕事の都合で別居中の、初太郎の妻でありはるこの母親である、はるなが登場する。はるこは大喜び。

「幸せなお父さんを見れてればそれでいいんです!」「お父さんとお母さんが仲良くしてるのが私は一番うれしいから」

はるなが初太郎にキスをするのを見て、はるこは倒れる。幸せすぎたからだ

「ふ ふたりのラブラブが生で見れるなんて…幸せ…」

お互いに、愛でる対象としての「好き」なのだ。2人の悶々は、うまく行っても行かなくても、家族3人とも幸せにしかならない。だから見ていてとても安心な作品だ。もっとこじれちゃえ。

ところで、「男のツンデレ」と「少女のツンデレ」は、形が微妙に違う。この思考回路の差異をはっきりわかりやすく描き、どちらにも萌えられるようになっている。向いている矢印がぶつかり合っているので、萌え力は倍。むしろ乗算。2人がたまたま手を握ってしまったシーンは、2人とも真っ赤になるもんだから、読んでいるこっちまで赤面してしまう。親子なのに。

大げさな行動は多いものの、ズレっぱなしの生活自体が、2人の幸せそのものだ。

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たまごまご

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