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2018.10.04

【日替わりレビュー:木曜日】『性別「モナリザ」の君へ。』吉村旋

『性別「モナリザ」の君へ。』

コントロールできない体と心

その世界では、人間は12歳を迎える頃、自分がなりたい性へと次第に身体が変化していき、14歳になる頃には男性か女性へと姿を変えてゆく。しかし、なぜか主人公のひなせは18歳を迎えても、性別が定まらないままでいる。

そんなある日、女友達のりつと男友達のしおりに突然告白をされ、衝撃を受ける。ひなせにとって、りつもしおりも好きな「友達」であり、恋愛感情は抱いていなかったからだ。しかし、その日を境に、ひなせのホルモン値が上昇。果たして二人の告白が関係しているかは定かではない。

確かなのは、男性と女性どちらのホルモン値も同時に上昇していた、ということであった。

異性愛者のりつとしおりは、思いを寄せるひなせに対して自分とは異なる性別になってほしい(りつにとっては男、しおりにとっては女)と願う。しかし、ひなせは告白以来、ふたりを意識してドキドキする瞬間はあるが、それが恋心かどうかは自分でもわからない

この物語では、性別の決定権は誰にもない。なりたい性別に次第に身体が変化していくことが、人間の成長の一環としてあるだけで、それ(性別が男か女に定まること)が当然であるという世界観で物語は展開していく。

当初は、そもそも性別を二つにしか分けず、そのどちらかになることが当然だ、という設定や、主人公をめぐる恋心が「異性愛」に限ることに違和感をおぼえていた。前者は世界観の設定として作られたものだとしても、後者については、性別が定まる前のひなせの人間性を好きになったのであれば、そこに性別は関係ないのではないか(なぜひなせの性別に固執するのか)、という部分が気になっていたのだ。

しかし、物語が進むにつれて、りつのひなせに対する率直な想いや、ひなせの異性に対してドキドキするのが「普通」なのだろうかとつぶやくシーン、そして、とある不穏な予感が登場し、むしろ性別に対する一辺倒な価値観を考え直すきっかけとなるような流れにもなっている。

美男美女に迫られる物語が描きたかった(あとがきより)、という作者の当初の思いから、このような作品が生まれたという。たしかに美男美女に猛アタックされるシーンはときめきを感じる。そして、だからこそ、より戸惑いを感じるひなせの姿が印象的だ。

果たしてひなせは今後どのように身体が変わっていくのか。もしくは、変わらないのか。

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