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2018.10.23

【日替わりレビュー:火曜日】『邪眼は月輪に飛ぶ』藤田和日郎

『邪眼は月輪に飛ぶ』

『からくりサーカス』アニメ放映おめでとうございます! ってことで、もしもアニメ化されたら劇場版を2時間でたっぷりと見たい、『邪眼は月輪に飛ぶ』を紹介します。

長編が多い藤田和日郎先生のマンガとしては珍しく1巻完結。その中に、「喜怒哀楽」全てが詰まっています

なぜ劇場版に例えたかというと、ハリウッド映画的な話の構造になっているんです。まず、冒頭から戦闘が起こります。見られただけであらゆる生物が死に絶える、邪眼を持つフクロウ「ミネルヴァ」。かつて老マタギと相打ちになった凶鳥が、13年後に解き放たれて東京の街が壊滅する。大きなフックから始まるんです。

マタギの老人・鵜平もミネルヴァ殲滅作戦に参加。「ジジイは引っ込んでろ」ってゴツい大男たちがバカにするけど噛ませ犬だったとか、オープンカーのカーアクションとか、ハリウッド大作映画的なお約束にニヤリ。

アメリカ軍人、CIA、老マタギ、巫女さんという凸凹がチームを組んで、「ミネルヴァ」退治に赴く胸熱展開が「喜」の感情を刺激します。

続いて「怒」。ベースは復讐劇になっています。アメリカ軍人のマイケルは、部下たちをフクロウに殺されています。鵜平にとっては奥さんの仇ですし、巫女のはミネルヴァ退治を諦めた鵜平にずっと腹を立てているところから物語は始まっています。

「哀」。あらゆる化学兵器がミネルヴァに効果がないという絶望感は、『双亡亭壊すべし』の双亡亭のよう。無敵のミネルヴァが、なぜ、たかが木彫りの像に執着していたのか。持って生まれたその能力ゆえに───多くは語りませんが、その理由が切ないです。

藤田和日郎作品は、メイン主人公と同じくらい周辺のキャラクターたちも魅力的で、群像劇になっている点もすごく盛り上がります。

マイケル(アメリカ軍人)が熱血タイプ、ケビン(CIA)は冷静タイプで、凸凹な性格同士の掛け合いも楽しい。偏屈ジジイの鵜平が、養女の輪には素直に従ってしまうズッコケ感もユーモラス。

展開が進むにつれて、鵜平+マイケル、ケビン+輪で行動をともにします。様々な組み合わせが掛け算のように「楽」しめます。それでいて、個性のバラバラな4人が一つの目標に突き進む一体感を演出。めちゃくちゃ滾る!

筆者は「人間の感情を揺さぶるのがエンターテイメントである」という持論を持っています。『邪眼は月輪に飛ぶ』は一冊で「喜怒哀楽」全てを大きく揺さぶってくる、とんでもない怪物マンガです。ぜひ1000万部くらい売れまくって、劇場版アニメになってくれ!という願いを込めつつ、毎週『からくりサーカス』を楽しんでいます。

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この記事を書いた人

かーずSP

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