2018.11.21
【インタビュー】『スターマイン』ストロマ「ここからがメインシナリオ」
流れ星に向かって「彼女超欲しい!!」と願いごとをしたら、空から女の子が降ってきました。しかも、一度に9人(+保護者)も……。花火のように彩り鮮やかな女の子たちが読者の目を楽しませてくれる、ハーレムラブコメ4コマ『スターマイン』。
各巻の最終話で、主人公の行成とヒロインのひとりがキスをするのもこの作品のお約束。本日発売された9巻では、読者人気ナンバーワン(?)の金髪ツンデレ娘・叶得がフィーチャーされています。
これで、メインヒロインの9人が1回ずつ表紙を担当したことに。物語はいよいよクライマックスを迎えるのか、それとも……? 作者のストロマ先生に、本作の制作経緯、今後のストーリー展開などをたっぷりと伺ってきました。
あらすじ:4コマまんが史上最多恋人登場!? 正統派ヒロイン・不思議さん・ツンデレ?女子・メガネっ子・スポーツ姉御肌・家庭癒し系・元気ゲーム・妹と、個性豊かな9人の恋人たちが織り成す流星感覚ラブコメディ! ギャルゲー好きの貴方にも、ひたすら萌えたい貴方にもオススメする次世代ハーレム4コマの決定版!!
(取材・文:ましろ/編集:コミスペ!編集部)
ぱれっとにラブコメマンガが多いのは、『スターマイン』の影響?
──まずは、9巻発売おめでとうございます。ヒロインの星野姉妹の人数と同じ、9巻まで続ける構想は最初からあったのでしょうか?
ストロマ先生(以下、ストロマ):もちろん長く描けたらいいなとは思っていましたが、各ヒロインで1巻ずつという予定ではありませんでした。4コマで9巻まで続くって、あまり聞かないですし。読者様様です。
──『スターマイン』を描くことになったきっかけをお聞かせください。
ストロマ:最初は「まんが4コマKINGSぱれっと」(現「まんが4コマぱれっと」)に『ふぃっとねす』という読み切りを何回か載せてもらっていて、それの反応がよかったので連載枠が取れたという話を担当さんからいただきました。
そのまま『ふぃっとねす』を続けるか、新しい作品で一から始めるかと相談した結果、新しい作品にしようと。そこからキャラクターや設定を考えて生まれたのが『スターマイン』です。
──ラブコメもの、ハーレムものにしようと思ったのはどうしてですか?
ストロマ:とにかく、シンプルなものにしたかったんです。当時のぱれっとは色々なジャンルの作品が入り乱れていたので、ひと目見たらこういうマンガだと分かるようにしようと思っていました。
ただ、インパクトが弱くてもいけませんし、分かりやすいけど派手なものを試行錯誤していたら、いつの間にかヒロインがこんなに多くなっていました。
──最近のぱれっとにはラブコメマンガが増えている気がしますが、『スターマイン』の影響も大きいのでしょうか?
ストロマ:自分の影響とは思いませんが……、どうなんでしょう?
「まんが4コマぱれっと」担当編集(以下、担当編集):うちとしては、芳文社さんの「まんがタイムきらら」は先行する萌え4コマ誌として当然意識していましたし、あちらには女の子同士の作品が多いので、ぱれっとならではの色を出したいとは考えていました。
そうした思惑もある中で色々な作品を載せていったところ、自然と男女のラブコメものが多くなり、今の路線にナチュラルにシフトしていきました。『スターマイン』が最初期の作品だったのは、偶然だけど必然みたいな部分はあったかもしれません。
星野姉妹9人の間では、あえて差をつけない
──ヒロインが9人というラブコメマンガを描くにあたって、注意されたことがあれば教えてください。
ストロマ:4コマのメインキャラの数は、3~5人くらいが理想だと言われています。『スターマイン』はその2倍以上なので、普通に描いていたら収拾がつかないとはネームの段階から思っていました。
なので、11人ではなく、主人公の行成、ヒロインの星野姉妹、保護者ポジションの志染という3つのグループで考えることにしました。星野姉妹9人の間では差をつけないといいますか。
──風見がメインヒロインっぽい気はしますが、他の8人より抜きん出ているわけではありませんね。
ストロマ:全員、ちょっとサブっぽいんですよね。黒髪ロングみたいな、いかにもな子がいない。雪華の外見はそうですけど、性格は違いますし。明らかにメインだと思われそうな子は作らないように意識しました。
──その中でも、志染さんだけは最初から特別だったと。
ストロマ:志染は、立ち位置的にも他のキャラとは違うので。かといって、彼女がメインでもないと分かるようなデザインです。
──連載初期と比べて、この子は変わったなと感じるキャラクターはいますか?
ストロマ:繭はあまり噛まなくなりましたね。いちいち噛ませていると、単純にテンポが悪かったからなのですが。まあ、滑舌もよくなっていくでしょうということで。
妹キャラの鈴は、病弱でことあるごとに吐血するという初期設定がありましたが、興奮すると鼻血を出す程度に落ち着きました。毎回幼女が血を吐いていたら、ギャグとしてスルーもできませんし(笑)。
あと、志染は最初、博士キャラみたいな口調にする予定でした。「もっと女性らしくしたほうがいいんじゃないか」と担当さんに言われて、今のような話し方に。これは変えて正解だったなと思います。
──お気に入りのヒロインをひとり挙げるとしたら、誰になりますか?
ストロマ:よく聞かれるんですが、最新話に出てくる子が一番好きと答えます。いつも、最新話を一番面白い話にしたいと思いながら描いているので、特に思い入れが強くなりますね。
描きやすいキャラという意味なら、風見、郷、叶得、志染あたりでしょうか。彼女たちが登場していると、勝手にいい感じに動いてくれて助かっています。
──読者人気が高いのは、どのヒロインでしょうか?
ストロマ:Twitterの感想を見る限りだと、牧乃、叶得、志染の出てくる回は反響が大きい気がします。
──牧乃は私も大好きです。叶得と志染さんは先ほども名前が出てきましたが、人気の理由は何だと思いますか?
ストロマ:やっぱり、立ち位置が特殊で目立つからですかね? 志染は保護者だし、叶得もツンツンしていて。ただ、他との差がそんなにあるわけではなく、一番人気のヒロインは毎月変わるイメージです。
──ストロマ先生と同じように、読者の方も最新話に登場するヒロインが好きになるんですね。
ストロマ:そこは計算通りである一方、計算外でもありました。何だかんだで、特定の誰かに人気が集中すると思っていたので。どの子も万遍なく好きになってもらえたからこそ、ここまで長く続く作品になったのかなと。
──各ヒロインの出番にも、偏りが出ないように意識されているのでしょうか?
ストロマ:はい、結構気をつけています。しばらく里梨のメイン回をやっていないからそろそろいっとくか、みたいな。かと思えば、メインじゃないけど前回も結構出ていたりして、バランスを取るのが大変です。
叶得がメインヒロインになる可能性もあった?
──単行本の表紙とキス回を担当する順番には、何か法則がありますか? ぱれっとのキャラ紹介の順だと思っていたのですが、3巻は潮だったので……。
ストロマ:雑誌の紹介順は担当さんが決めたものなので、特に関係ありません。結果的には近くなっていますが。キス回の順番は、言ってしまえばノリです。していくならこの子たちからだよね、という。
だいたい、雑誌の紹介順だと叶得が3番目になってしまいますし。それは早すぎでしょ?(笑)
──叶得のキス回が9巻になったのも、必然の流れだったと。
担当編集:8巻を出したときは、担当としても感慨深かったですね。次はいよいよ叶得か……って。
ストロマ:あんなにツンツンしている子が先に行成とキスしちゃったら、後の子の立場がないじゃないですか。できるだけかわいそうな思いはさせたくないので、叶得がラストなのは順当だったと思います。
──初期のころはひとりだけ行成を敵視していたり、叶得は他の姉妹と比べても異質な印象があります。
ストロマ:今でこそ好評をいただいて9巻まで続いていますが、もし1巻や2巻で終わることになっていたら、叶得が最終的なヒロインになる予定でした。空から降ってきた女の子の名前が「叶得(かなえ)」というのも、いかにもそれっぽいですし。
──ひとりだけ携帯を持っていたり、行成とお風呂場で何度も遭遇したり、叶得関連のイベントが多いのもその名残ですか?
ストロマ:そうですね。ヘアバンドを取るという変身要素もあったりして。隠しヒロインじゃないけど、姉妹の中でもちょっと特殊なキャラクターです。
担当編集:昔、ぱれっと誌上で『スターマイン』のエピソード人気投票を開催したことがあったのですが、そのときも叶得との水族館デートの回が1位でした。
【ぱれっと情報】2月号で実施中の『スターマイン』エピソード人気投票、ご要望いただきましたのでこちらでも応募要項を告知します。添付記事をご参照ください。※本誌にはエピソード一覧含めた詳細情報あります。 pic.twitter.com/gQiJfepz
— まんが4コマぱれっと編集部 (@4komaPalette) 2013年1月1日
──当時からずっと気になっていたのですが、あれ、どうして「キャラクターの人気投票」ではなかったんでしょうか?
ストロマ:明確に順位をつけたくなかったんですかね、要は?
担当編集:どのヒロインにもファンがいてくださっている中で、誰が一番と可視化されてしまうのは、我々の中ではちょっと違うのかなと。
その一方で、「この話が面白かった」という読者さんの思い入れが作品を支えているとも感じていました。個人的に知りたいという興味もあったので、エピソード人気投票の形になった次第です。
──先ほど仰っていた、星野姉妹の間では差をつけないという話にもつながりますね。
ストロマ:この子が人気だから今こういう展開になってるんだなとか、そういう読み方をしてほしくなかったんですよね。とにかく、フラットに楽しんでほしい。
エピソードくらいなら順位をつけても納得してもらえるだろうし、なんとなくキャラ人気も分かる。なあなあで行きたかったんです。
──せっかくなので、ストロマ先生が好きなエピソードも教えていただけますか?
ストロマ:ちょうど話題に上がった、3巻に収録されている叶得との水族館デートの回は思い出深いですね。読者さんがいてこその作品ですし、みなさんがよかったと言ってくれたという意味で。
あとは、1巻の海水浴回。3号連続でカラーページをいただいて、本格的にアンケート上位を狙っていこうと担当さんと話していた時期でした。雑誌のアンケートで初めて1位になったのがあの回だったので、今も印象に残っています。
ハーレムマンガだからこそ、主人公の行成が一番重要
──行成の幼馴染の透は、どのようなきっかけで生まれたのでしょうか?
ストロマ:行成は第1話で「彼女欲しい!」って叫んでますが、別にモテない感じでもない。その部分を補強する意味で、昔から行成のことが好きな透を登場させました。
いわゆる「落ちものヒロイン」の星野姉妹に対して、透は行成との時間を経てきているという対比でもあります。立場的には、星野姉妹の恋のライバルなんですが……、色々かわいそうな子ですよね。かわいそうな思いはさせないって言ったばかりですけど(笑)。
──「彼女欲しい」って叫んでいましたね。今の行成ならあんなセリフは言わない気がしますが、性格面は自然に変わっていったのでしょうか?
ストロマ:自分としては、特に変わったとは思っていません。最初の願いごとも、冗談で言ったら本当に叶っちゃったという感じなので。おまけに9人もですから、胸焼けしておとなしくもなりますよね。
──ストロマ先生から見て、行成はどのような主人公ですか?
ストロマ:一緒にご飯を食べていて楽しそうな奴。どんなに料理がおいしくても、嫌いな相手と一緒だと台無しなので。ハーレムマンガだからこそ、ある意味一番気を使って描いているキャラではあります。
──行成は、男性から見ても好感が持てるキャラクターだと思います。星野姉妹や透にモテていても、あまり嫉妬しないといいますか。
ストロマ:ありがとうございます。最初のキャラシートでは目つきがやらしくて、女の子たちに対して下半身が……みたいなところもあったのですが、描いていくうちにきれいになりました(笑)。
今までは共通ルート。ここからがメインシナリオ
──ひとつのコマが小さい4コマで、『スターマイン』のようなキャラの多いマンガを描くのは大変ではないですか?
ストロマ:やっぱり、どうしても作画コストは高くなりますね。全員が出てくる話だと、1コマの中にいくつも顔を描かないといけなかったり。
──最近はワイド4コマも増えてきていますが、『スターマイン』をワイド4コマに切り替えるご予定は?
ストロマ:『スターマイン』に関しては、できるだけ最後までこのままの形で続けていくつもりです。ワイド4コマも描いてみたいので、次回作はどうなるか分かりませんが。
──通常の4コマ形式へのこだわりは強いですか?
ストロマ:というより、9巻まで出しておいて今さら変えるのも……(笑)。読み心地やここまで読んでくださった読者さんのことを考えると、今のところはこの形で続けるのが一番いいのかなと。
ワイド4コマも増えている中で、『スターマイン』はプレゼント箱のような作品というか、開けたら中身がぎっしり入っていた、と喜んでもらえたらいいなと考えています。
──10巻以降の構想はもう決まっているのでしょうか?
ストロマ:行成と星野姉妹の絡みもひと通りやりきって、美少女ゲームでいうところの共通ルートは終わったと思います。ここからメインシナリオに入って、追加ヒロインも出てきたりして、物語は終盤へ――。みたいな感じですかね。
──「追加ヒロイン」というのは、言葉通りの意味と受け取っても……?
ストロマ:それはまあ、お楽しみということで(笑)。これからがんばって描きます。
──9巻に収録される話の中で、志染さんが不穏な言動をしていましたが、今後のストーリーに関わってくるのでしょうか?
ストロマ:結構、重要なファクターではあります。今の時点では、ふわっと覚えておいてもらえれば。
担当編集:逆に、あのシーンは読者さんから見ても引っかかりましたか?
──そうですね。やっぱりといいますか、志染さんは絡んでくるよなあ、と。
ストロマ:星野姉妹や志染は人外ヒロインなんですが、人間じゃない感は今まであまり見せていませんでした。タイミング的にもそろそろ出していこうということで、9巻では新しい展開も感じていただけたらうれしいです。
読者に楽しんでもらいたいと思いながら描いている
──ペンネームの由来は何でしょうか? ネットで検索すると、植物の葉緑体の中の液体とか、「ストロマトライト」という岩石などがヒットするのですが。
ストロマ:それらはまったく関係ありません。初代プリキュアのEDテーマに「ストレスよりロマンスでしょ」という歌詞があって、縮めて「ストロマ」です。デビュー前にハンドルネームとして名乗っていたのを、そのまま使い続けています。
──ということは、アニメ鑑賞が趣味なんですか?
ストロマ:もちろん観ますけど、ほどほどですね。それよりは、お笑いや特撮の映像を観ることが多いです。特にさまぁ〜ずさんが大好きで、DVDはだいたい全部持っています。
──おすすめのマンガがあれば教えてください。
ストロマ:『トライガン』や『北斗の拳』は、子どものころからよく読んでいました。
ハーレム・ラブコメとは正反対のジャンルですが(笑)。そっち系だと、『ラブひな』とか『To LOVEる -とらぶる-』あたりが好きです。
──マンガ家デビューされたきっかけは?
ストロマ:学生時代に同人イベントで4コマ本を出していたとき、「月刊ComicREX」の編集者さんに声をかけていただいたのがきっかけです。ぱれっとが創刊されたばかりのころで、こういう4コマ誌を作ったからよければ投稿してみてねと。
夏休みを利用して東京に行って、一迅社さんと芳文社さんに持ち込みをしました。先にマンガが載ったのはきららのほうなんですが、その直後に一迅社さんからも連絡をいただき、ぱれっとに『ふぃっとねす』の読み切りを載せてもらって、あとは最初にお話しした通りです。
──学生のころから、マンガ家を目指されていたんですね。
ストロマ:むしろ、在学中にデビューしないと死ぬしかなくなるなと思っていました。不安定な仕事なのは分かってましたし、学生のうちにデビューできないようじゃやっていけないだろうと。
サラリーマンになるつもりはなかったので、当時は本当に必死でした。デビューが決まったときはほっとしましたね。これで生きていけるなって(笑)。
──それでは最後に、読者の方へのメッセージをお願いいたします。
ストロマ:『スターマイン』では、自分の考えを伝えたいとかは特になく、純粋に読者さんに楽しんでもらいたいと思いながら描いています。ギャグで笑いたい、ラブコメでニヤニヤしたいと考えている方は、ぜひ読んでみてください。損はさせません!
あと9巻では、赤松健先生より帯に推薦文をいただきました。
ストロマ・担当編集:原稿作業などご多忙にも関わらず、赤松先生からはたくさんのコメントをいただきまして、その中からチョイスさせていただきました。大感謝です!
担当編集:それから、電子版のカバーが、すべての巻が完全描きおろしイラストによる特別新装バージョンに変わります。9巻発売後、各電子書籍店舗様ごとに順次切り替わってまいりますので、これをきっかけに、電子版でもスターマインをお楽しみいただけましたら幸いです。(※旧バージョンのカバーもエクストラページとして閲覧可能です。)
また、本日は『スターマイン』9巻の発売日ですが、明日11月22日にはぱれっとの最新号も発売されます。『すのはら荘の管理人さん』とのW表紙になっていて、片面に叶得さんがバーンと載っているので、本屋で見かけた際は9巻とセットでご購入をお願いいたします。
──本日はありがとうございました。
作品情報
©ストロマ/一迅社