2018.11.19
【日替わりレビュー:月曜日】『終わりの国のトワ』土田完
『終わりの国のトワ』
BL枠でのレビューですが、ベースはBLというより、とても美しく繊細な絵で紡がれるファンタジーです。アナログ作画で、ジブリや童話のような雰囲気があり、1コマ1コマが本当に素晴らしいです。(土田完先生は、柳沢ゆきお名義でBLも描かれています)。
文明が滅び、文字を読める人がほぼいなくなり、本が本として認識されず、「女」という生き物が消えて男のみになった世界。男は宿り木と交わり、子をなすという世界観です。木に子が実るというと十二国記を思い出しますね。そんな「女」がいない世界で、おそらく唯一「母」から産まれたトワが主人公です。
彼は、いずれ「女」となって兄の子を産む使命があるのだと言い聞かされて育っています。また、ほぼ読める人のいない文字を読むこともできます。
世界の異端児として旅をするトワ。センの国の王と知り合い、センの国の図書を読みたいと願い、司書に引き合わされます。失言して牢に閉じ込められたり、仮初のこの世界を終わらせ「真の朝」を迎えるために図書を焼こうとする一団に命を狙われたりと、スリリングな展開が目白押しです。
いつか女になって兄の子を産むという、性転換系+近親相姦っぽい気配もするBLな設定もありますが、恐らくこれは物語の核心であり、1巻ではそこまで話はすすんでいません。男しかいないこの世界では、男同士で恋をするのは普通のことのようで、攻が兄、受は弟と呼ばれています。
トワが子を産む相手という「兄」は恐らく実の兄を指していると思われますが、このトワの兄は生死不明です。
謎が多い世界観で、巻が進むごとにこの世界の秘密が解き明かされていくのかと思うとわくわくが止まりません。トワのお相手が最終的に誰になるのか。トワは本当に文字通り「男と交わって子をなすことができる女」に変化して誰かの子を生むのか。それによって、男しかいなくなったこの世界がどう変わっていくのか。
壮大な世界設定の中にBL的な要素も入っているというこの物語。この歪な世界に、どのような変革がもたらされるのか。トワはそれにどう関わっていくのか。続きがとても楽しみです。
©土田完/徳間書店