2018.11.30

【日替わりレビュー:金曜日】『花はどっちだ?』小田原みづえ

『花はどっちだ?』

小田原みづえ先生の新連載『花はどっちだ?』の単行本が発売されました。あらすじはこんな感じです──。

来生花・28歳。これまで真面目に生きてきたけれど、仕事では失敗ばかりで、彼氏には浮気された挙げ句貯金を持ち逃げされ、やさぐれ気味。そんなある日、階段で足を踏み外し、目が覚めたら……なぜか全く別人の17歳の女子高生・山田花になっていた! 「これは変な夢。いつか醒める。」そう思っていたものの、何日経っても醒める気配がない。なすすべなく、山田花の下宿する生田荘で、社会人や学生の住人たちと共に、女子高生・花として生活することになってしまい……

序盤に驚きの事実が

いわゆる”転生もの”とか、”入れ替わりもの”の匂いを感じるストーリー。なろう小説的に異世界に飛んだりとか、全然別の時代にタイムスリップしたとか、パラレルワールドに飛んだりとかではなく、同じ時間軸でかつ、地理的にも比較的近い場所で転生します。女子高生になったことに戸惑うのもつかの間、元の自分がどうなっているのか確認しに行くのですが、そこで知るのは衝撃的な事実でした。

──来生花は、階段から落下した事故で死んでしまった

てっきり「山田花の方は、来生花の体に入ってるのかな?」とか、安易に入れ替わりものとしての先読みをしていたので、いきなり退路を絶たれるという展開に驚くばかりですよ。「え、あれ、これどう物語を折りたたんでいくんだろう……」と。

2人のイケメンの狭間で

戸惑うばかりの花を支えてくれるのが、社会人の陽希と、陽希の従弟で高校生の晴親。花の必死の説明と、来生花が実在しており既に亡くなっていたという事実を目の当たりにしたことで、山田花の中身が別人であることを信じるようになります。

陽希は明るく優しい性格で、人一倍花を気にかけてくれている感じがわかる、頼れるお兄さん。一方の晴親は、ちょっと空気読めないタイプの不思議くんで、花の中身が全くの別人になっていることを直感で見抜いたという、独特の感性の持ち主。空気を読まずにズバズバ物言う性格が、気持ち良いです。

元の体に戻れそうもないので、とりあえず山田花の代行として女子高生生活を送ることにするのですが、元々どんな子で、どういう交友関係を築いていたかもわからないので、一つ一つが手探り状態。下宿先での人間関係もそうですし、学校での友達付き合いも。携帯もパスワードがかかっており、真実は闇の中。

陽希はなんとなく過去になにかあったような雰囲気を感じさせるし、一方晴親はというと、入れ替わった来生花の方に興味津々。なぜだか2人とも異様に花との距離が近く、代行とはいえ花の心はドキドキさせられっぱなし。思わぬかたちで再び訪れた高校時代に、2人の素敵な男子の狭間で、揺れ動くことになります。

びっくりするぐらいストーリーが頭に入ってくる

山田花の人格はどこへ行ってしまったのかとか、陽希との間に何があったのかとか、明かされていない裏設定や過去など様々ありそうで、物語が進むごとにますます深みを増してきそうなところが、まずオススメしたいポイント。

またそういったミステリー的な側面はありつつも、小田原先生の作品らしく基本的には明るい雰囲気のコメディとなっており、非常に読みやすいです。なんなんでしょうね、小田原先生の作品って、どんな物語設定だとしても、ストーリーがスッと頭の中に入ってくるんですよ。

この作品だって、結構ひねった設定で、サラッと物語を進めるのってものすごく難しいと思うんですよね。でも全然それを感じさせない。むしろシンプルで簡単な物語にすら感じられるぐらい自然。ひとたびページを捲ったら、何にも邪魔されないまま、あっという間に最後まで読み進めてしまうことでしょう。

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いづき

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