2018.12.09
【日替わりレビュー:日曜日】『僕の心のヤバイやつ』桜井のりお
『僕の心のヤバイやつ』
優勝! 完全に青春ラブコメとして優勝!
「週刊少年チャンピオン」でのスタート以降、Twitterでもすぐに話題となったので、ご存じの方も多いはず。
学校一の美少女と中二病男子という「陽キャ×陰キャ」な組み合わせに、キレッキレのギャグを散りばめたラブコメディを展開する傑作、『僕の心のヤバイやつ』の記念すべき第1巻が12月7日に発売されました。(現在、連載は「マンガクロス」に移籍しています。)
作者は、『子供学級』やアニメ化もされた人気ギャグマンガ『みつどもえ』を描き、現在本作と並行して『ロロッロ!』も同時連載している桜井のりお先生です。
恋を知らない陰キャ少年(中二病)の話①#僕ヤバ pic.twitter.com/iziePukAtx
— 桜井のりお最新作「僕の心のヤバイやつ」公式 (@boku__yaba) 2018年12月6日
主人公で中学2年生の市川京太郎は、バキバキの中二病でいつもアブナイ妄想をしている、ちょっとイタいやつ。多分に漏れず、陽キャが憎くて、特にその中でも学校一の美少女・山田杏奈の殺害を妄想しほくそ笑んでいました。
しかし、昼休みにいつも行きつけの図書室に行くと、おにぎりを口いっぱいに頬張った山田に遭遇。見たことのない姿に面食らいながらも、隠れて観察していると、パーティ用のお菓子をニコニコ鼻歌交じりに1人で食べたり、自分は一生懸命だけど端から見ると雑にしかみえない感じで宿題を頑張っていたりと、なにやら彼女に抱いていたイメージがどんどん崩れていくのです…。
そう、山田は、雑誌で専属モデルをするほどの美人なのですが、でもその実態は何よりもお菓子が大好きで、そしてだいぶと人よりも抜けているところがあって、「おもしろい」と言われることが彼女にとっての一番の褒め言葉というような、かなり変わった女の子でした。
市川は自分の中2病的メンタリティを保とうとするのですが、毎度アホな子な山田の言動に振り回されるし、彼女は図らずとも距離をどんどん縮めてくるので、ウブな中学男子らしく赤面させられっぱなし。
この山田の素っ頓狂なアクションひとつひとつがあまりにもおもしろ可愛いし、そしてそれにモノローグで突っ込みながらも恐る恐る相手をしていく市川の掛け合いの姿は非常に可愛く、めちゃくちゃニヤニヤさせられます。
そして、他の登場するキャラクターたちも個性的で、作品の土台をがっつり支えてくれているのも魅力の1つ。
クラス女子へのえっちな言動や想像が童貞くさい、神崎、足立、太田のクラスメイト男子3人組はすごくバカで笑えるし、山田と仲良し女子の関根、小林、吉田とのやりとりは萌え4コママンガのようにほのぼのゆるいやりとりでかわいく、ブス専こと神崎が想いを寄せている、原さんはちょっとぽっちゃりでブスじゃないしとっても良い子。
彼らとのやりとりも通しながら、市川と山田の関係性も深まっていきます。
山田は気づけばいつの間にか大体図書室にいるようになってるし、教室や廊下で市川に話しかける様子も、表情のちょっとした移り変わりややりとりの変化を微妙な機微で描いており、市川との会話を心から楽しんでいくように段々なっていく表現はとても秀逸です。またそれに比例するように、市川くんの突っ込みは回を重ねるごとに冴え渡っていくし、ネタのテンポ感も絶妙でギャグマンガとしても何度見ても笑えます。
1巻ラストではとある事件を経て、山田への恋をはっきりと自覚する市川くん。それに応じて、行動の積極性も上がりアクセルが踏まれてきており、ここからより一層おもしろさもアップしていきそうな期待感で満ちています!
単行本では、お話を通して見返していくことで、市川はもちろん山田の感情の変化がとても分かりやすいですし、お話の間の空白を埋めてくれるような描き下ろしも追加されているので、非常におすすめです。
連載を追っている方も、ぜひ単行本で見直してみてくださいね。
©桜井のりお/秋田書店