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2019.02.09

【日替わりレビュー:土曜日】『腕鳥。』先御見瑠人

『腕鳥。』

本日は、先月に取り上げた『おじいさん家のものの怪』と同じ「Hugピクシブ」連載作から再びピックアップしよう。

鳥──
野生として空を翔け、樹上や水辺、草原などいたるところで群れあい、時には貴重な食料となり、また時にペットとして屋内で飼われる動物。それは犬猫にならび、われわれ人類にとって重要な隣人たる動物だ。飛行能力と、歌にも例えられるさえずりといった特徴からしばしば宗教、軍事、スポーツその他さまざまな分野でシンボルマークに使われることも多く、文化的な意味からも存在感の強い種である。

その鳥たちが、ある日いきなりニョキニョキっと腕を生やしたらどうなるか

そんなユニークすぎる発想のもと人間と鳥の絶妙な距離感を描き出すゆかいなアニマルコメディが、題名そのままド直球のWebマンガ『腕鳥。』である。

例えば、鳥類テーマパークで暮らすプライドの高いタイハクオウムは、担当の飼育員が自分以外の鳥をかわいがると激しくヤキモチを焼いて「浮気者!」と言わんばかりにムキムキの腕で襟首をつかみ、殴りかかってきたり。
ある家庭で飼われる人懐っこいボタンインコは、一家の少年が寝坊したのを起こしてやろうと、くちばしでつっつく代わりに手でまぶたをめくりあげてきたり。
檻から出してほしいセキセイインコは、おやつのエン麦を手にとると往年の野球投手を思わせるポーズでふりかぶり、全力投球で飼い主の頭にぶつけたり。
人間のイタズラっ子が公園でハトに豆鉄砲を物理的に食らわせようとすれば、ハトは飛んできた豆を手でキャッチして五本の指でグシャリと握りつぶしたり……。

といったふうに、「鳥にヒトのような腕があったら何をしだすか」のシミュレーションを次々とショートマンガの連作で見せていく形で、飽きさせない内容になっている。

おもしろいポイントは、腕鳥たちが腕を使って人間くさい動作をしながらも、生態そのものは鳥らしさがよく温存されている点だ。ぱっと見のインパクトが強い一方で、劇中の“腕ギャグ”はほとんどが飼い鳥や野鳥の「あるある」を巧みに取り込んだ描写とセットになっている(上に書いた中でいうと、タイハクオウムが嫉妬で怒りだして飼い主や他の鳥へ攻撃に出るのは実際にある行動だそうです)。

腕が生えるという部分的な違和感は、それが部分的であるがゆえに、むしろ鳥である全体を引き立てる効果を生じている。かろやかなファンタジーを経由してこそ行きつくリアルが、そこにはある。

なお、単行本は現時点で2冊出ている。第1巻が2016年発売の『腕鳥。』で、第2巻に相当するのが2017年発売の『腕鳥。-いろんな鳥に生やしてみた-』。個人的にはギャグのテンポがこなれた2巻目をおすすめしたいので、2冊あわせて一気にチェックしていただけるとうれしいところ。

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この記事を書いた人

miyamo

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