2019.02.12

【日替わりレビュー:火曜日】『白暮のクロニクル』ゆうきまさみ

『白暮のクロニクル』

オタク歴35年になりました、かーずSPのかーずです。小学生の頃に『ダーティペアの大冒険』にハマってからの計算になります。

そこから怒涛のヲタ活が始まるのですが、10代の多感な時期に大きな影響を受けたクリエイターが、ゆうきまさみ先生です。中学で『究極超人あ〜る』、高校で『機動警察パトレイバー』、大学以降に『じゃじゃ馬グルーミン★UP!』という洗礼を受けた直撃世代。

大ベテランのゆうきまさみ先生が、いまなお現役でマンガを描いてくださっているありがたみに感謝しつつ、『白暮のクロニクル』を取り上げたいと思います。

現代社会でありながら、不老不死の「オキナガ」が共存する世界の話。見た目は少年、中身は88歳の殺人事件マニア雪村魁というオキナガと、厚生労働省の新米公務員・伏木あかりが様々な事件を解決するミステリーもの。

ただのミステリーではありません。「オキナガ」という不思議要素を一つ盛ることで、オリジナリティ溢れる新鮮な刺激を受けます。死ににくい、体の成長が止まっている、夜しか活動できない、人間の血を吸いたくなる、社会的弱者で生活保護を受けている者が多い、などなど。

そう、これを聞くと、例の架空の種族が思い浮かぶと思うんですよね。でもあえて序盤ではその名前は出さずに、ずっと「オキナガ」としか呼称していません。あえてじらして、途中で明かすのも個人的にニヤリです。

それに関連して、3巻のエピソードが印象に残ります。岐阜県山中の限界集落で、外部からやってきた、大きな屋敷に暮らす一家。夜中に散歩する一人のオキナガの少女。小野不由美先生の『屍鬼』をゆうきまさみ流にアレンジしていて、両方の作家のファンは感涙ものです。

ちなみに小野不由美先生が『屍鬼』を書き上げた理由として挙げられているのが、スティーブン・キングの『呪われた街』。名作は名作を生み出す。その連鎖を見た感じがします。

殺人事件が発生。雪村魁と伏木あかり達が調査して、証拠を揃えて犯人を追い詰める妙。ここ、『機動警察パトレイバー』で正体不明の犯罪レイバー・グリフォンの追跡をする、捜査活動を彷彿とさせる読み味になっています。皮肉屋な雪村魁と伏木あかりの軽妙な会話とともに、じわじわと事態が進展していく。ゆうきまさみ節、今なお健在です。

個別の事件は、昭和30年に起きた雪村魁の因縁に繋がっています。人間関係や謎、伏線が複雑に絡み合っていたものが、パズルのピースのように繋がり、ラストの11巻で綺麗な絵図が完成する大団円。ちょっとほろ苦いテイストも混じったラストが、しみじみと心に染み渡ります。最終話を読み終えて、心地よい余韻に浸りながら第一話を読むと、まったく違う感情に支配されるでしょう。

ゆうきまさみ作品の集大成。いや、進化し続ける、ゆうきまさみ先生の到達点として、『白暮のクロニクル』は生涯の記憶に残る名作として輝き続けています。

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かーずSP

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