2020.03.27
【インタビュー】『ななこまっしぐら!』小池恵子「4コマの枠にこだわらず、何でも自由に描いていい」
節約上手の主婦ななこと、平凡なサラリーマンのタク。そんなふたりの永遠の新婚生活を描いた4コママンガ『ななこまっしぐら!』が、惜しまれつつも完結を迎えました。
現実の季節に連動した行事や時事ネタ、日常生活の些細な疑問にフォーカスを当て、いつでも、どこでも、誰とでも読める作品として読者に愛され続けた本作。
コミスペ!は今回、作者の小池恵子先生にメールインタビューを実施し、『ななこまっしぐら!』の誕生経緯や、印象に残っているエピソードなどについてお伺いしました。
デビュー作の『あれるげん。』があったからこそ『ななこまっしぐら!』がある
──約17年間に及ぶ連載お疲れさまでした。今のお気持ちはいかがですか?
小池恵子先生(以下、小池):無事に幕を引けた達成感が大きいです。
──小池先生のマンガ家デビューは宙出版のTL誌「恋愛白書パステル」でしたが、そこから「まんがライフ」などのファミリー4コマ誌に活動の場が移ったきっかけは何だったのでしょうか。
小池:「恋愛白書パステル」で連載していた『あれるげん。』を見た竹書房の編集さんから連絡をもらい、読み切りを経て連載のお仕事をいただけるようになりました。
その後『あれるげん。』の連載が終わり、TL誌で自分にできることはやりきったと思い、ファミリー4コマ誌の仕事がメインになっていきました。デビュー前に竹書房さんに何度か投稿をしたことがあったので、連絡をいただいたときはうれしかったです。
──そのデビュー作『あれるげん。』は、毒舌あり、下ネタありのハイテンションなギャグ4コマでした。一方、『ななこまっしぐら!』は佐藤夫婦の結婚生活を描いたハートフルな内容となっています。本作の設定はどのように決められましたか?
小池:昔から趣味で未発表の4コマを何本か描いており、その中のひとつに『ななこまっしぐら!』の原型がありました。思い込みの激しい妻に夫がただただ翻弄されるようなネタで、それを土台に編集さんと相談しながらファミリー向けに練り直しました。
──『あれるげん。』に一度だけ登場したカップルが佐藤夫婦に似ていた気がするのですが、このキャラクターがふたりのモデルになっているのでしょうか。
小池:原型の一部です。
当時、『あれるげん。』でカップルに嫉妬してばかりのかなこを描くうち、自分の中にだんだんとカップル側の話も描きたい気持ちが湧いてきていました。『あれるげん。』があったおかげで『ななこまっしぐら!』があります。
──『ななこまっしぐら!』というタイトルの由来は何ですか? 失礼ながら、『ななみまっしぐら』にタイトルが似ているなと思ったのですが……。
小池:パイロット版では『あまい♥せいかつ』というタイトルで、某映画から拝借しました。そのままではパンチが足りないということで連載直前まで編集さんと話し合い、ななこさんが猫好きだったことから「猫まっしぐら」のフレーズをもじってこのタイトルに。
その後、仰る通りすでに似たタイトルの作品があることを知り、自分の不勉強さを恥じました。本当に申し訳なく思っております……。
大きな時事をからめた回が印象に残っている
──『ななこまっしぐら!』は現実の季節に連動した行事や日常の些細な出来事など、読者が共感できる話が多かったと思います。毎月の連載のテーマはどのように考えられていましたか?
小池:日々の生活の中で気になったことをメモして、そこから話をふくらませていきました。
また、原稿を描くのは実際に雑誌が発売される季節の数ヶ月前なので、季節感をつかむために過去のスケジュール帳を読み返して「今回はこの行事の話を描こう」とヒントにしました。
──スーパーをはしごするなどのななこさんの節約術は、小池先生が日ごろから実践されているものなのでしょうか。
小池:食材のストック方法についてはだいたい実践しています。スーパーのはしごは時間に余裕のあるときだけですね。
──イラストレーターの隣人・汐路ミカさんの仕事に対するストイックな姿勢は、小池先生自身の考えが投影されているのでしょうか? ある意味で同業者として、小池先生とミカさんの似ているところ、違うところがあれば教えてください。
小池:あんな風になれたらいいなとは思っていますが、投影しているかは自分でもわかりません。
似ているところは果てしないズボラ加減、違うところは、自分は絵が下手なところです。汐路さんはとても画力があるのでうらやましいです。
──これまでに描いてきたエピソードの中で、思い出に残っているものはありますか?
小池:「こたつむり」の回は読者の方に好評でした。また、レシートの略語解読の回は「いい意味でバカ」とほめてもらいうれしかったです。
他にはリーマンショックなど、大きな時事をからめた回はどれも印象に残っています。
──タクさんが働いている会社に『うちは寿!』の万里さんがいるなど、他作品のキャラクターがゲスト出演することが多いのも小池先生の作品の特徴だと思います。これはファンサービスの一環なのでしょうか。
小池:一部サービス、一部自分の楽しみです。
「ここにあのキャラがいる」と気付いてもらえたらうれしいですし、私自身は「この子、相変わらず元気でやってるなぁ」と、街で久しぶりに会ったときのような気分で楽しんで描いています。
──『Spring!!』のキャラクターもよく登場していますね。あの作品も大好きだったのですが、単行本未収録エピソードの公開予定はあったりしますか……?
小池:『Spring!!』のこと、覚えていてもらえてとてもうれしいです。ありがとうございます。
ただ、あの作品で描いたOLさんの描写は、今あらためて見ると古く感じるようになりました。再度公開するのは時代にそぐわず難しいかなと考えています。
©小池恵子/竹書房
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