2020.04.29
からかい褐色高身長メイドと、金髪の幼い少年が織りなすキュートなラブコメディ!『最近雇ったメイドが怪しい』昆布わかめ【おすすめ漫画】
『最近雇ったメイドが怪しい』
妖艶さあふれるメイドは幼い少年に敵わない
「おねショタ」ジャンルの魅力は、成長している女性側に少年が振り回される「おね→ショタ」と、女性側が少年側の一言一句に戸惑う「おね←ショタ」の両方がある。今回取り上げる『最近雇ったメイドが怪しい』はその両方が含まれていて、2度美味しい作品。
両親を失い、使用人もいなくなった広い屋敷に、一人で住んでいるお坊ちゃまのゆうり。
彼の屋敷にやってきて「住み込みで働かせていただければお給料はいりません」と言い出したのが、褐色肌でちょっと露出度の高いメイド・リリス。遺産も何もない屋敷で仕事をする、というのはあまりにも怪しすぎる。名前だって後から判明したくらいだ。
てきぱき仕事をこなし、食事もおいしい。ゆうりは仕事っぷりを認めつつも、全く何者かわからない彼女を警戒していた。
「実はこの瞳で 坊ちゃまを私の虜にする魔法をかけてたのです」「そのお料理には坊ちゃまが私を好きになるお薬…いわゆる惚れ薬が入ってるんですよ♡」
リリスは頻繁にゆうりをからかう。ゆうりは素直なので、全て信じてしまう。この怪しいメイドは何者なのか暴くため、彼女のことをたくさん知ろうとしはじめる。
話には2つのターンがある。1ターン目はリリスが仕事をきっちりこなしながら、ゆうりをニヤリとからかう。ここでのリリスは逆光が多めに使われており、官能的な怪しさに満ち溢れている。ゆうりはもちろん、読者もたじろぐような艶めかしさだ。
2ターン目にゆうりの切り返しが入る。リリスのジョークは全て信じるゆうり。その正直さゆえにリリスへの好意をすべて言葉にしてしまう。
「僕は騙されないからな! どんなにお前が可愛くても お前を見ると胸が苦しくなってそれどころではなくなってしまう! むしろ切なくてぎゅってなって 笑顔どころか顔は強張ってお前の顔が見れなくなるんだからな! 騙されるもんか!」
流石に年長のリリスもこれには反撃できない。妖艶にリードするリリス、ひっくり返されて赤面してしまうリリス。オムニバス形式でお姉さんメイドキャラの両面を、直球で楽しませてくれる。
ゆうりに性の目覚めが来ていないのは「少年キャラ」として大きなポイント。会話を見ていると、リリスに対してかなり強い好感を抱いているようだが、本人はそれを恋心だとわかっていない。リリス側は勘付いているから、顔を真赤にして言葉に窮してしまう。
もしかしたら「怪しい」が生み出す吊り橋効果的なものもあるのかもしれないが、ゆうりの発言を見る限りもっとシンプルで純粋なもののようだ。
リリスはフェチズムオンパレードのような造形のキャラクターだ。大きく開いた胸元と背中、異国感漂う小麦色の肌、切れ長の目と紫の瞳に、目元と胸元のほくろ。ゆうりは彼女の容姿を「綺麗」「可愛い」と率直に幾度も褒めているから、読んでいて気持ちがいい。
褐色高身長メイドと、金髪の幼い少年の並びは、対比でとても絵になる。彼女の謎の正体も気になるが、それよりも2人きりの幸せなやり取りがずっと続いて欲しいと願ってしまう。
©昆布わかめ/スクウェア・エニックス