2019.08.12
カフェを舞台に繰り広げられる、大人と子供の不器用なラブゲーム!『Sugar in my Coffee』北畠あけ乃【おすすめ漫画】
『Sugar in my Coffee』
繊細な美少年を描かせたら右に出る者はいない北畠あけ乃先生が、天下一品の大学生を投入してまいりました。
主人公(受)の千種は、愛された記憶がないせいか少し浮世離れした雰囲気で、無自覚にとても寂しがっています。同じカフェで働いている、無愛想でときどき優しい大人の男が気になって仕方ありません。鞭の合間にあるたまの飴にドキドキして、どんどん気持ちが傾いていきます。
そうしていつの間にか心の隙間に入り込んできたこのカフェの同僚・楠木に、ついに軽いノリを装ってキスしてしまいます。
男が吸ってる煙草を取って仕掛けるキスってなんであんなに色っぽくなるんでしょうね……。煙草の匂いに文句をつけながら仕掛けたキスは、何倍にも濃厚になって返ってきてしまいました。楠木、大学生のお子様が相手でもわりと容赦がありません。
それでも懲りずに、今度は楠木をベッドに誘います。軽く、暇つぶし程度のノリで、初めてなのがばれないように慣れた風を装って抱いてもらったのです。
好きかどうかもわからないまま身体を差し出して、残ったのは虚しさだけでした。埋まらない心の隙間に混乱する千種は、楠木がいる職場であるカフェを辞めてしまいます。
一方の楠木ですが、彼、慣れたように見えてなんと男を相手にするのは初めてだったようです。
初めての割にはうまいことやってたように見えたのですが、余裕がなかったせいで千種も初めてだったことに途中まで気づけませんでした。差し出された身体を前に「未踏の新雪に踏み入るような罪悪感と高揚感」を覚えて、結局、抱いたあとから気持ちが追い付いてくるパターンです。
辞めた千種は、どういう心境の変化かすぐに元の職場に出戻ります。身体の関係ができた後に恋じゃないと自覚して虚しさを噛みしめて、そこから恋に目覚めていきます。
作中にしっかりした人物紹介があるわけではなく、断片的に過去が見え隠れしたり、他のキャラから零れるように語られたりするだけなので、そのピースを繋ぎ合わせて想像していくしかありません。完成図のないパズルを渡されたような作品で、でもピースがはまっていくのがちょっと楽しい感じがします。
ちなみに表紙をめくるとそこにメインキャラの設定が書いてあるので、いろいろと想像して楽しんだ後に答え合わせをしてみてくださいね。
個人的にはカフェのオーナーのお爺ちゃんが良い! 彼の若い頃の恋の話がとてもものすごく読みたいです。脇キャラの背景もチラチラと見え隠れしていて、とても気になるのです。スピンオフに期待したいと思います。
©北畠あけ乃/大洋図書