2019.09.27
【インタビュー】『社畜さんと家出少女』タツノコッソ「苦しい生活の中にも必ず希望はある」
「このタイトル社会的に大丈夫かな」と不安だった
──『社畜さんと家出少女』って、だいぶ直球なタイトルですが、他の案はありましたか?
タツノコッソ:いえ、自分だと全然思いつかなくて、このタイトルもまず担当さんが案を出してくれました。最初は「家出少女と社畜さん」だったんですけど、語感などを考えた結果「社畜さんと家出少女」に。
でも、少し不安もありましたね。このタイトル社会的に大丈夫かなって。
──「社畜」という言葉がですか?
担当編集:「家出」のほうですね。家出した女の子を部屋に連れ込んで……みたいな事件は現実にもちょくちょく起きていたので。とはいえ他のタイトルも考えてはみたものの、やっぱりこれが一番しっくりくるなというところで落ち着きました。
タツノコッソ:ふたりの関係は、社会通念上は決して正しいものではないかもしれませんし、こんなの誘拐じゃないかと思う人も当然いると思います。少なくとも自分としては、犯罪を助長しているように見えないよう注意して描いているつもりです。
だけど、ナルさんとユキちゃんのように、傍から見れば間違っていても本人たちは幸せに暮らしているケースもきっとある気がするんです。実家だけが居場所じゃないといいますか。
──扱うテーマがテーマなだけに、現実とフィクションのバランスには注意されているんですね。
タツノコッソ:担当さんとの打ち合わせでも、「シリアスになりすぎないように」という話は毎回しています。暗くしようと思えばいくらでもできてしまうので。雑味を消しすぎてもいけないんですけど、やっぱりふたりには楽しく生活していてほしいです。
──ただ、単行本1巻の最終話となる第13話では、ふたりの生活もいつまでも続かないことが暗示されています。
タツノコッソ:来るべくして来たというか、描くべくして描いた回ですね。最近は比較的平和な話が続いていましたし、2巻に向けて引きになる話を作る意図もありました。
ナルさんがユキちゃんに接するときの距離感はいつも気をつけて描いてるんですけど、13話のラストシーンは特に時間がかかりました。
──距離感?
タツノコッソ:ナルさんは今の状況を本当はどう考えているのか、といいますか。ふたりで外を歩いたとき周りの人にどう見られているのかとか、自分はユキちゃんを妹として見ているのか、それとも……みたいな。たぶんナルさん本人もよく分かってないでしょうし、私もうまく言語化できないんですけど。
──2巻以降の展開も、すでに考えられているんでしょうか。
タツノコッソ:はい。ユキちゃんの家庭の問題もありますし、ナルさん側の新キャラも登場します。1巻はナルさんの部屋の中でほぼ完結していましたが、これからは外の話も増えていくと思いますので期待していてください。
「マンガ」といえば「4コマ」だった子ども時代
──子どものころはどんなマンガを読んでいましたか?
タツノコッソ:落書きばかりしていて自分ではあまりマンガを買わなかったので、妹が持っている本を借りて読んでいました。『ポケットモンスター4コママンガ劇場』とか、「ハムスペ」という雑誌の4コマとか。
──ポケモン4コマは、自分も本がボロボロになるまで読んでました。
タツノコッソ:私たちの世代なら絶対読んでますよね! 向水遙先生のマンガのコイルくんがかわいかったです。
──やはりというか、昔から4コマをよく読んでいたんでしょうか。
タツノコッソ:そうですね。ポケモン以外に『ドラゴンクエスト 4コママンガ劇場』も読んでいて、アンソロジーコミックの作家さんは4コマ専門誌で描いていることが多いので、その流れでオリジナルの4コマ作品も読むようになりました。
特になんば倫子先生の『てんぷら』や水田恐竜先生の『放課後キッチン』など、夫婦ものが好きで。私の中では「マンガ」=「4コマ」という認識で、ストーリーマンガはアフタヌーンを買うまでほとんど読んだことがありませんでした。
──挙げられているラインナップを聞いていても、根っからの4コマファンなんだなと感じます。
タツノコッソ:コミスペ!の伊藤いづも先生のインタビュー記事を読んでたしかにと思ったんですけど、4コマって情報量が多いんですよ。だから、同じ本を何回読んでも面白い。私はあまりマンガを持っていなかったから、その点でも4コマとは相性がよかったのかもしれません。
──そして、今ではご自身でも4コマを描かれるようになったと。作風に影響を受けた作品はありますか?
タツノコッソ:ちゃんとマンガを描くようになってからはきららの雑誌をよく読んでいて、三上小又先生の『ゆゆ式』や異識先生の『あっちこっち』は参考にさせていただきました。ただ、作風という意味では藤島じゅん先生の影響もわりと大きい気がします。
藤島先生の作品は基本的にハイテンションなギャグ4コマなんですけど、シリアスな話も多いんです。4コマの中でもストーリー性のある作品が昔から好きで、『社畜さんと家出少女』にもたぶんそういった要素は含まれてるんじゃないでしょうか。
──「4コマ」以外に、「百合」もタツノコッソ先生の作品を語る上では外せませんが、百合を好きになったきっかけは何でしょうか。
タツノコッソ:百合に関しては……、これといったきっかけはありません。夫婦4コマとか、まず男女ものの作品を好きになって、自然と百合作品も読むようになっていったんだと思うんですけど。
女の子同士の恋愛がというよりは、「ロマンシス」(強い絆で結ばれた女性同士の関係)が好きなんですよね。『ゆゆ式』の3人もそうですけど、お互いを信頼しあっている女の子たちの関係性が尊いし、ずっと眺めていたい。だから個人的には、片方の女性にたとえ男性のパートナーがいたとしても全然百合として成立するんです。
今の自分に描ける、一番楽しい話を読者に届けたい
──『社畜さんと家出少女』は、タツノコッソ先生の初連載作品でもあります。これまでを振り返って、商業誌で描くのと同人誌を描くのでは意識の面で違いは感じますか?
タツノコッソ:それはもう。二次創作で神様(原作者)の作品をお借りするのも当然プレッシャーはありますけど、自分の作品だと一切言い訳できませんから。やりがいもある一方で、読者さんは面白いと思ってくれてるのかな……と恐る恐る描いてしまうときもあります。
──ゼロから作品を生み出すというのは、やはり苦労も多いんでしょうね。
タツノコッソ:そうですね。特に私の場合、絵柄なんかにも『ゆゆ式』の影響を受けていることはパッと見ですぐ分かるでしょうし……。きらら本誌とMAXで雑誌が違うとはいえ、三上先生と同じ場所で描いていいのかなと悩むこともありました。
だけど、無理に描き方を変えようとは思っていません。これまで同人誌でマンガを描いてきた経験を活かしつつ、今の私に描ける一番楽しい話を読者さんに届けたいなと考えています。
──担当さんは今までに多くの作家さんを見てきたと思いますが、商業誌での経験が少ない方にアドバイスをしたりはしますか?
担当編集:作品のコンセプト、対象の読者層を明確にするといった話も当然しますし、きらら特有の事情ですが「読みやすい4コマとは?」みたいな技術的なアドバイスもよくします。ただ、タツノコッソ先生の4コマは最初から完成度が高かったのでその点は何も心配ありませんでした。
タツノコッソ:そうですかね……? いや、そう言っていただけるとすごくありがたいです。
──昔から4コマを読んできた経験が、描くほうにも活かされているんでしょうね。
担当編集:きららに来るまではストーリーマンガを描いていた作家さんも多いので、最初から4コマの基礎が出来上がっている方は本当に貴重です。他だとはんざわかおり先生くらいじゃないでしょうか。
──9月27日には、晴れて単行本1巻が発売されます。装丁デザイナーが里見英樹さんなのも驚きでした。
担当編集:『きんいろモザイク』など、昔からデザインを担当してもらっている作品はありますが、新作だと久しぶりですね。とても忙しい方なのでダメ元でお願いしてみたところ、快く引き受けていただけました。
タツノコッソ:私にとっては、『週刊わたしのおにいちゃん』の方というイメージです(笑)。
──表紙のデザインに要望などは出されましたか?
タツノコッソ:タイトルが目立つようにしてほしいとご相談した気がします。そしたらもう、私じゃ絶対思いつかないような素晴らしい文字の配置にしてくださって……! デザイナーさんってすごい。
この表紙を見ているだけで感無量といいますか。里見さんにお願いしてよかった、ここまで描き続けてきてよかったと思います。描き下ろしもがんばりましたので、本屋さんで単行本を見かけたらぜひ手に取ってみてください!
──本日はありがとうございました!
作品情報
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