2019.11.19

【インタビュー】『明日ちゃんのセーラー服』博「明日小路は最初、”空っぽ”なキャラクターだった」

明日ちゃんには”性格”がない?

──先ほど、「明日ちゃんは感情移入しにくい」と仰っていたのが意外でした。博先生から見て、明日ちゃんはどんな性格の女の子ですか?

:性格……。むしろ、明日ちゃんには性格がないんじゃないかと思います。透明というか、空っぽというか。

──性格がない?

:性格って、自分だけで決めるものではなくて、同年代の子と比べたり友達に「あなたってこういう人だね」と言われたりして初めて自覚していくものだと思うんです。

だけど、明日ちゃんの小学校には生徒が1人しかいなかったから、比べる対象が限りなく少なかった。本来なら友達との人間関係で悩んだりしながら成長していくはずの時間を、ひたすら好きなことだけして過ごしてきた。自分の性格なんて考えたこともないし気にする必要もなかったんだと思います

──明日ちゃんは成績もよくて運動もできて社交的でもあるけれど、ある意味クラスメイトの誰よりも幼いのかもしれませんね。

:そうだと思います。自分の性格すらよく分かっていなかった女の子が、同年代のクラスメイトたちとの日々を通じて少しずつ自分がどんな子なのか理解していく。他の子が小学校でやってきたことを、中学1年生になって初めて経験しているんでしょうね。

──1巻の第3話で明日ちゃんのクラスメイトたちが紹介されていますが、連載が始まった時点で全員の顔と名前は決まっていたんでしょうか。

:はい、連載前にはちゃんといました。まず明日ちゃんを含めた6・7人を描いて、明日ちゃんを主人公にするという流れが決まってから追加で何人か増やして。自分で描いていて楽しい子を基準に16人を決めていきました。

──描いていて楽しい子というのは、具体的には?

見た目から感じる印象と、実際の性格が違う子でしょうか。男性でも女性でもそういうキャラクターが好きなので。

──ギャップのあるキャラクターが好きという感じでしょうか。

:そうですね。このインタビューもですけど、誰かと話すときってどうしても外見から「この人はこういう性格なのかな」って想像してしまうじゃないですか。良くも悪くも、第一印象は見た目で決まる気がします。

なのでクラスメイトを決めるときも、まず自分で描いた絵をじっと眺めて、「怖そうな顔のこの子が実は優しかったら?」という風に考えてみたんです。そのときグッとくるものがあったら正解で、さらに明日ちゃんと組み合わせたときにどう動くのかが見えなかったら、より正解ですね。

──木崎さんはまさにそんなキャラクターだと思います。ツーサイドアップの髪型でぱっと見だときつそうなんですが、本当はすごく優しくて。

:ツーサイドアップの女の子は、自分の作品に必ずひとり描いてます。出すと決めているわけではないんですけど、今回も自然と出してしまいました。

──博先生の作品には黒髪ロングのヒロインが多いですが、ツーサイドアップのほうがお好きなんでしょうか。

:これもギャップにつながる話で、ツーサイドアップという時点ですでに勝ち気な印象があるから、裏を考えやすいんですよね。ゲームの『Kanon』に出てきた沢渡真琴という子が大好きだったので、そのキャラクターの影響も大きい気がします。

もちろん、黒髪ロングも好きです。描くのに時間はかかりますけど、髪のなびきで表情が出せるし、描ききったときに達成感があります。

──クラスメイトの中で、読者人気が高いと感じるキャラクターはいますか?

:登場回数が多いので、やっぱり木崎さんや兎原さんに言及してくださる方は多いと思います。ただ、キャラクターの人気はあまり考えないようにしていますね。

──それは、人気がある子を贔屓してしまったり、逆に出番を少なくしてしまったりしそうだから?

:はい。現時点で明日ちゃんと一緒にいる機会が一番多いのは木崎さんですけど、それも最初に出会って席も隣だったからであって、明日ちゃんはクラスメイトたちのことが平等に気になっているんだと思います。そこに大小の感情はまったくなくて。

友達同士を比べて接し方を変えるようなことはせず、目の前の相手だけをまっすぐ見つめている子なんですね。自分もそんな明日ちゃんになりきりながら描いているので、誰が人気なのかを意識してしまうと『明日ちゃんのセーラー服』という物語を描きにくくなってしまう気がするんです。

──クラスメイトの名前についても質問したいと思っていました。動物の名前が入っている子が多いですが、何か法則があるのでしょうか。

:動物……?

──”兎”原さんとか、”龍”守さんとか……。

:あ、たしかに! 動物は大好きですけど、特に意識してませんでした。どちらかといえば「色」ですね。キャラクターのイメージカラーを考えてみて、その色から連想される漢字を使うことが多いです。

例えば「鷲尾瞳」だと、黒髪で眉毛も濃くて硬派な性格なので、自分の中で黒の印象がある漢字で統一しています。画数が多くて見た目も黒いですし。

反対に「水上りり」は、マロンっぽい薄い髪の色なので画数が少ない漢字。「りり」は洋風とか、今風とかいうイメージです。

──なるほど、色からでしたか。神黙根子さんなんかは、名前の通り猫みたいなキャラクターですが。

:根子に関しては、たしかに「猫っぽい女の子」というコンセプトもあります。地に足ついているイメージだから「根」みたいな。足どころか、全身ついて寝ちゃってますけど。

アニメーターを目指していた経験が今につながっている

──博先生は子どものころ、どんなマンガを読まれていましたか?

:小学校時代は外で遊ぶことが多かったですけど、兄の影響で「コロコロコミック」や「コミックボンボン」は読んでいました。『グランダー武蔵』とか『爆球連発!!スーパービーダマン』とか『爆走兄弟レッツ&ゴー!!』とかひとしきりハマりましたね。

その中でも、SDガンダムが特別好きで。自分がハマりだしたときには玩具展開が終わりに差しかかっていたので、レンタルビデオ屋さんでOVAを借りて何度も観たりしていました。

──SDガンダムのどんなところがお好きでしたか?

:ストーリーも面白いですし、何よりかわいいですね。個人的には、SDガンダムが描けたら美少女も描けるとすら思ってますから。

──えっ!? たしかにかわいいですけど、女の子のかわいさとはだいぶベクトルが違うような……。

:いやいや、本当に。

──実際に明日ちゃんたちを描かれている博先生が言うと説得力(?)があります。先ほど、アニメーターを目指していたという話もありましたが、そのあたりの話もお聞きしていいでしょうか。

:アニメーターの前に、まずイラストレーターになりたいと思ったのが高校2・3年生のころです。クラスメイトが持っていたラノベを読ませてもらって、表紙にイラストレーターの名前が載っていることに衝撃を受けました。そのとき初めて、絵を描いて生きている人がいると気づいたんです。

──それで自分もイラストレーターになろうと。

:一応、趣味レベルで絵を描くのは好きだったものの、絵を仕事にできるのは個展を開くような画家だけだと思っていたので、自分には無理だと諦めてしまっていたんです。だけどそのハードルが一気に下がって、受験勉強と並行してイラストレーターになるための方法を調べるようになりました。

──アニメーターを目指すようになったのもその流れで。

:はい。直接のきっかけは『かみちゅ!』のアニメでした。OPを観て、あれだけ上手な絵が描けるのに、スタッフロールにも名前がほとんど出てこないという奥ゆかしさがかっこいいなと。

本格的にデッサンの勉強を始めたのもそこからです。かわいいとかかっこいいとかの前に人間の体をちゃんと描けるようにならないといけないと思って、骨格とか筋肉のつき方とかをひたすら暗記していきました。

──ただ、アニメーターを目指されていたものの、博先生は今こうしてマンガ家として活動されています。何か転機となる出来事があったのでしょうか。

:大学に入って、就職活動の時期になって一応アニメ制作会社の採用試験は受けました。ただ、そのときすでに「まんがタイムきららキャラット」で『アクアリウム』を連載していました。

──『アクアリウム』は10年前の作品だから、たしかに博先生が大学生のころですね。

:自分の中で、マンガ家は画家と同じくらいなるのが難しい職業だと思っていました。絵のうまさだけじゃなくて、構成力とか他のスキルも必要なので。だけど、いろんな偶然と縁が重なって、今マンガ家として生きることができています。

残念ながら『アクアリウム』は2巻で終わることが決まって、そのあと『ゆめくり』の担当さんから声をかかるのと、アニメ制作会社から内定をもらうのがほぼ同時でした。『ゆめくり』の話がなかったら迷わず就職してましたけど、マンガ家とアニメーターを天秤にかけてものすごく悩んだ結果、自分はマンガ家を選んだという経緯になります。

──その決断に至るまでに多くの葛藤があったと思います。ただ『明日ちゃんのセーラー服』を読む限り、アニメーターを目指していた経験が現在の作風につながっている気がします。

:そうですね。デッサンを勉強したからこそ、自分でも納得がいく絵が描けるようになったわけなので。アニメーションっぽいこともやらせてもらっていますし、あのときの選択に後悔はありません

──貴重なお話をありがとうございました。最後に、単行本6巻の見どころもぜひお聞かせください。

:6巻では、兎原さんや龍守さんたちクラスメイトの小学校時代を描いています。明日ちゃん自身の成長にとっても、同年代の女の子の過去に”初めて”触れることの意義は大きいんじゃないでしょうか。

──兎原さんの小学校時代のエピソードなど、今までの優しい世界観の中では見られなかった話だなと感じました。

:それもギャップのひとつですね。兎原さんみたいな明るい女の子に辛い思い出があったら……という。もともと考えていた話ではあって、ようやく表に出すことができました。

クラスメイトの過去を知った明日ちゃんが何を思い、どう行動するのか。それは東京旅行編の2日目でじっくり描いていく予定なので、まずは6巻の1日目をお楽しみいただけたら嬉しいです。

──本日はありがとうございました!

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