2020.02.10
複雑な家庭事情で闇堕ちしている美青年×22歳童貞にして未だ恋を知らない社会人。『その恋は彼を蝕む』猫野まりこ【おすすめ漫画】
『その恋は彼を蝕む』
現代が舞台のBLです。住む世界が違う者同士が、偶然が重なって出会って惹かれ合っていくというシリアスな恋愛ものとなっております。
カップリングは、「複雑な家庭事情で闇堕ちしている年下美青年」蒼真×「22歳童貞にして未だ恋を知らない社会人」亮太という感じ。
受の方が年上なのですが、社会の明るい場所を歩いてきた感じのする、社会的経験値が低めなスペックです。ただし深く人と付き合うことは苦手で、特に肉体関係を伴う恋愛などとんでもないと、告白されてもすべて断っていて未だにチェリーボーイ。
そんな彼がうっかり間違えて夜のハッテン場に迷い込んでしまったから大変です。即獲物コースです。あっという間にトイレに連れ込まれて有り金を巻き上げられ、恋愛感情を知る前に身体的に経験を積む寸前までいってしまいます。
そんな絶体絶命のピンチのところを、偶然通りかかった蒼真に助けられます。
命の恩人にほぼ一目惚れしてしまった亮太ですが、別れ際にいきなり唇を奪われた挙句、「こっち側」には近づかないほうがいいと忠告を受けてしまいます。
だからと言ってそんな一言で忘れられるはずもなく、自分を助けてくれた相手に会いたい一心で、トラウマになっていた公園に通い詰めます。なんとなくヤバい気はしていても、自分にはないと思っていた熱を引き出した彼にもう一度会いたくて仕方がなかったのです。
一方の蒼真も、毎日、忠告を無視して公園に通ってくる亮太を見ていて、ついに2回目の接触に踏み切ります。関わるべき相手ではないと薄々感じながらの邂逅でした。
社会の裏側で育ったような蒼真と、ずっと表側を歩いてきた亮太。
蒼真は亮太のことを新しい「オモチャ」だと認識して「大事に遊んでいた」し、亮太は初めて「恋」をして相手のことをもっと深く知りたいと望んでいました。お互いの認識のずれに眩暈がしてきます。
こんな状態で長く続く人間関係があるはずもなく、あっという間に歯車は噛み合わなくなります。
歯車は狂って一度は離れてしまいますが、それでも、あっさり忘れてなかったことには、お互いにできません。亮太は忘れようとしますがもちろん無理で、亮太以上にダメージを受けたのが蒼真でした。ちょっと物珍しいオモチャで遊んでいたつもりが、「とても大切なオモチャ」で、「なくてはならないオモチャ」になっていたことに、亮太がいなくなってから気づいてしまったのです。
お互いが別方向に致命的に不器用で、若くて未熟でどこかが壊れていて、だからこそ自分にないものを持っている相手に惹かれていったのかな、という凸凹カップルです。
引き返せない感じの恋として最終的にくっついて終わりましたが、この先、物事の認識違いでめちゃくちゃ喧嘩が多そうな組み合わせだなあという一抹の不安が拭いきれません。
肌色シーンは素晴らしい充実ぶりで、シリアスタッチのBLが好きな方にはたまらない作風だと思います。あとは、年上だというのに亮太がとてもかわいいです。これは蒼真じゃなくてもお持ち帰りしたくなるわ……という感じです。
別シリーズの番外編的な作品なのですが、この1冊でひとつのお話としてまとまっていますので、これだけ読んでも全く問題ありません。好みかも? と思ったらぜひぜひ、読んでみてくださいね。
ちなみにシリーズ本編(同人シリーズ)はポップなノリですよ~。
©猫野まりこ/芳文社