2020.02.27

【インタビュー】『この美術部には問題がある!』いみぎむる「宇佐美さんが赤面している顔は可愛い」

『この美』の舞台を高校ではなく、中学にした意外な理由

──タイトル名はどうやって決まったんでしょうか?

いみぎ:もう全く覚えてないです! 確かボツったタイトルで「パレット」って言葉が入った案を、仮で付けていた気がします。でも後になって40mPさんのコラボ楽曲「ココロ*パレット」が生まれたので、あの時「パレット」付けなくて良かったーって思いました(笑)

浅川:タイトルを決めあぐねていた頃、けっこう唐突に、いみぎさんから「『問題がある!』ってどうっすか?」ってメールが届いたんですよ。それだけだとわかりにくいですとお返事したところ、『この美術部には問題がある!』だと長すぎますか? ってレスが来て決まりました。

──長期連載の中で、変化したキャラクターはいますか?

いみぎ:予想外に萌香ちゃんが活躍してくれています。最初は1回ゲストに出て終わりくらいの気持ちだったんですが、出番が増えていって、12巻にも登場しているほど準レギュラー化しているのは意外でした。

小山先生の孫、萌香ちゃん

──部長と謎のスキンシップが始まっています。

いみぎ:多分それがあったから、いい意味で広がったのかなって(笑)。

──舞台を高校ではなく中学にした理由はあるんでしょうか?

いみぎ:これは明確な理由があります。美術部が舞台なので、特に宇佐美さんが絵画やデッサンを描くシーンが何度も出てきますよね。高校にしちゃうと、劇中に出てくる「上手い絵」を繰り返し描く必要が出てきてしまいます。高校生が描く上手いデッサンって、もうガチで上手いじゃないですか。

──プロに肉薄する画力の絵を、マンガの背景として描くのは大変そうです。

いみぎ:はい、毎月の連載で大変な苦労をすることになってしまう、「作画カロリー」の要素が大きいですね。高校の美術部にしてしまうと、油絵も出てきますし。でも中学だったら、まだ絵の上達も発展途上なので大丈夫かなって(笑)。

──でも今は高校生で絵が上手い、ゆりねさんが登場しています。

いみぎ:なので、ゆりねさんの絵はなるべく全力で避けていきます!(笑)

もう一つ、浅川さんから「いみぎさんに美術的な専門の要素は誰も求めてないですから」って言われて、それならやんわり描いても大丈夫かなって、肩の荷が下りた気がします(笑)。

──『この美』の面白さの本質はそこじゃないですからね(笑)。でも中学生だからこそ、宇佐美さんの初々しい恋愛に繋がっていると感じます。

いみぎ:そこは結果的にうまくマッチしたと思います。

──企画段階と連載時での変更点はあるんでしょうか?

いみぎ:中学校の名前が変わったくらいで、ほとんど変わっていません。夢子先生を含めた五人は、もう最初から決まっていました。それと企画の段階で「部長はイケメンにしてほしい」とは言われましたけど、結局そこは聞き入れませんでした(笑)

企画段階のイメージイラスト

──次に、連載していて大変なことはありますか?

いみぎ:舞台が部室から離れるところですかね。外に写真を撮りに行ったり、教室だと机や椅子の作画に苦労します。なので極力、部室にいてくれって血の涙を流しながら背景を描いています(笑)。

──いみぎ先生に似ているキャラクターはいますか?

いみぎ:描いているのが自分である以上、リアクションやセリフの言い回しは、等しく全キャラクターに自分の要素が絶対に出ているとは思います。

でも人格的な意味では別人って感じで、似ているキャラはいないと思います。

──ご自身の経験が作中に生かされてるところはありますか?

いみぎ:ん~これもないかもしれないです(笑)。むしろ逆に、自分が経験してないような夢を創作に詰めているタイプかもしれません。「こういうことがあったらいいな」って自分の理想を投影しながら描いているところがあります。

──担当編集から見たこの美の魅力はどこにあると思いますか?

浅川:連載開始してから今まで、ずっと面白いままっていうのがすごいです。宇佐美さんは常に宇佐美さんだし、内巻くんは常に内巻くんで、どっしりした安定感があります。

途中で出たキャラクターをこっちで活かしたり、前のエピソードの細かいネタが矛盾なく繋がったり。「いみぎ先生は女性ですか?」って質問されることもあるんですけど、「いや、おじさんです」って毎度答えていて。

いみぎ:ヒドイ(笑)。

浅川:このおじさんのどこから、こんな可愛いエピソードが何年も生み出され続けているのか、不思議なくらいずっと面白いんですよ。

いみぎ:褒められている感じがしない……。

勘違いが加速して、うまく繋がっていく回がお気に入り

──お気に入りのエピソードはありますか?

いみぎ:私が好きなのは2巻11作品目の「勘違いトレイン」とか。みんながちょっとずつ認識違いで別々のことを言っているんですけど、うまいこと繋がっている。ボタンの掛け違いみたいに、誤解がどんどん広がっていく展開が綺麗にハマったので気に入ってますね。

誤解がどんどん広がる「勘違いトレイン」

──『この美』は、コレットさんが出てくると勘違いが加速するような……。

いみぎ:そこ要員ってところもあります(笑)。あとエロ本関係の話はどれも好きです。5巻29作品目では、伊万莉さんとコレットさんが魔導書を探す一方、内巻くんと部長は例の本を隠そうとしている。あの回も、ある種の勘違いが加速していくお話です。

勘違いが加速する、エロ本回

10巻60作品目の、内巻くんたちと協力して夜の学校に忍びこむ回も好きですし。実は部長だけ、エロ本を探すのが目的だったっていう(笑)。

──部長のスケベに対して、不潔とか最低って言うみずきちゃん。毎回、超可愛くないですか?

いみぎ:それはもう、宇佐美さんがこういう表情すると可愛いだろうなって描いていて、自分の好みが出てます(笑)。

──『この美』を描く上で、気をつけてることはありますか?

いみぎ:綺麗な世界観なので、本当の悪人は出さないように決めています。例えば犯罪の逃亡犯が宇佐美さんを人質に取って~、みたいなネタはやらない。そういう線引きはありますね。

浅川「あいつ憎たらしいな」って感情を煽って読者を引っ張ることは止めましょうと最初にお話しました。伊万莉さんを登場させる時も、ドロドロした恋愛バトルみたいなのは無しにしましょうって。

──内巻くんに嫌味を言う、ライバルの彼がギリギリですか?

いみぎ:はいはい、あの名前のない彼ですね。でも彼は自分的には全然セーフなんですよ。むしろあいつ、割と人気があるんです。

名前のない彼

アニメのスタッフさんにも「あいつが一番好きだ」って方がいらっしゃいました。「どうしようもないヤツで、報われない感じがいい」んだそうです(笑)。

アニメの脚本会議は、黒歴史ノートの読み上げ気分!?NEXT

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