2020.06.26

【インタビュー】『極主夫道』おおのこうすけ 「人に寄り添うようなマンガを描き続けたい」

WEBマンガサイト『くらげバンチ』にて絶賛連載中の『極主夫道』は、元・最凶ヤクザの『不死身の龍(たつ)』が極道から足を洗って専業主夫になるという、斬新な設定で繰り広げられるコメディ作品です。

コミックス(既刊5巻)の売上は累計200万部を突破し、『みんなが選ぶTSUTAYAコミック大賞2020』や『このマンガがすごい!2019 オトコ編』、『第4回次にくるマンガ大賞 Webマンガ部門』など数々の賞を受賞・ノミネートされました。

コミスペ! は今回、そんな大注目マンガ『極主夫道』の作者、おおのこうすけ先生と担当編集の西川さんにインタビューを実施。強烈なキャラクターの数々は一体、どのようにして生まれたのか、色々とお聞きしていきます!

おおのこうすけ

滋賀県出身。9年のアシスタント活動を経て2016年、『月刊コミック@バンチ』(新潮社)に読み切り作『Legend of Music』が掲載され、デビュー。同社のWEBコミックサイト『くらげバンチ』にて初の連載作『極主夫道』を2018年2月23日から連載開始。犬や猫などの動物が好きだが動物アレルギーである。柴犬を飼っている。(wikipediaより抜粋)

(取材・文:紳さん/編集:八木光平

”すんなり決まった” ヤクザ×主夫というアイディア

──単行本5巻発売、コミックス売上累計200万部おめでとうございます! また、今回TSUTAYAコミック大賞でのトップ10入賞ともなりました。まずは、いまの率直なお気持ちを聞かせてください。

おおのこうすけ先生(以下、おおの):本が売れにくい時代に、とてもありがたいことです。感謝の気持ちでいっぱいですね。

──おおの先生はTwitterもやられていて、12万人のフォロワーがいます。ファンである読者の方とメッセージのやりとりなどはするんですか?

おおの:僕はほとんど返信しないんですよ。持論ですが、マンガ家は読者と距離が近すぎない方が双方にとって良いと考えておりまして。たまに「ありがとうございます」くらいの返信をさせて頂くことはありますが、作品に関わる質問や意見にお答えすることはしていません。

──それにしても『極主夫道』すごい人気ですね! ヤクザ×主夫というギャップのあるアイディアは、どのようにして思いついたのですか?

おおの:連載ネームを作っていく中で、「強烈なキャラクターが欲しいよね」という話は担当編集の西川さんとずっと話していたんです。

連載が決まるまでの合間でちょくちょく読切マンガを描きながら、キャラクターのアイディアについて考えていたんですが、その読切マンガの中でヤクザが出てくるシーンを描いた時に「そういえば、ヤクザって色々と使えそうだな」というイメージが湧いてきまして。

ヤクザとギャップのある何かを組み合わせることはできないか、とアイディアを出し合う中で、西川さんが「専業主夫」というワードを出したんですよ。そのワードが出てからはすんなり、今のアイディアに決まっていったという感じですね。

──担当の西川さんの言葉がきっかけで『極主夫道』は誕生したんですね!

おおの:ウチの担当はアイディアマンなんです!(笑)

──ちなみに西川さんにもお聞きしたいのですが、「主夫」という設定に落ち着く前、他にはどんなアイディアがあったのですか?

担当編集・西川さん(以下、西川):初期の頃に「ヤクザ×おかん」というアイディアでネームを作ってもらったことがありました。

ヤクザとめちゃくちゃ世話を焼いてくるおかんの話は面白かったんですけど、おかんのキャラが目立ちすぎてボツになりました(笑)。

──ヤクザ×おかん(笑)。それも見てみたかったですね。『極主夫道』を描くにあたって、色々とヤクザに関する知識を仕入れることになると思うのですが、どうやって調べたのですか?

おおの:ヤクザに関する本を読みました。ただ、影響を受けやすくなってしまうのでヤクザの出てくる「マンガ」を読み漁るとかはしないようにしましたね。

とはいえ、ヤクザって昔から映画とかマンガにはたくさん出てくるし、日本では親しみやすい「キャラクター」でもあるのでイメージはしやすかったです。

──ところで、おおの先生は元々、コメディマンガを描くのが得意だったんですか?

おおの:最初の頃は普通にストーリーマンガを描いていたんですけど、「あれ? 思ったより描きたいことが少ないな?」ということに気がつきまして(笑)。それならばシンプルに読者が楽しめるマンガを描いていこう、と思ったんです。

『極主夫道』に登場する、個性的すぎるキャラクター達

──主人公の龍は元・最凶ヤクザでありながら、『極主夫道』の中ではものすごく可愛い面を見せてきますよね。このギャップが真骨頂だとは思うのですが、「ヤクザの怖さ」を活かすために、龍の恐ろしい部分をどれだけ残すべきか、という葛藤はありませんでしたか?

おおの:『極主夫道』はコメディマンガなんですけど、「笑い」は緊張と緩和で成り立つものなので、ヤクザ的な怖い要素は大切だと思っています。

とはいえ、「龍が人をめちゃくちゃ殺してる」みたいな設定にすると笑えなくなっちゃうと思うので……バランスには気をつけていますね。

──龍はファンシーなものが好きですよね(笑)。作中でもほとんど暴力を振るわないですし、もともと優しい人なのかなって思いました。

おおの:舎弟として出てくる(まさ)に対してだけはビンタしたり、意外と暴力を振るう場面もあるんです。愛のある暴力なんですけど(笑)。

龍は優しいというより「真面目」なキャラクターだと考えていて、世話焼きだったり、面倒見が良いという設定は初期の頃から持っていますね。

──龍の嫁である美久も気になります。龍とどのようにして知り合ったのか、何があって結婚することになったのか、謎に包まれていますよね。このあたりのエピソードも今後、作中に登場する予定ですか?

おおの:それに関してはまだ、あまり喋ることはできないんですけど… ただ、今後の展開次第ではその辺りの話も描いていけたら良いな、とは思います。

──楽しみです。『極主夫道』は実にたくさんの個性的なキャラクターが登場していますが、登場人物の設定なども西川さんと相談して決めているのですか?

おおの:そうですね。西川さんとは付き合いも長いし、二人三脚という感じでマンガを描いています。

──コメディマンガにおいて、ツッコミキャラの存在はすごく大切だと思っていたのですが、『極主夫道』にはあまりオーソドックスなツッコミキャラは出てこないですよね。かなり独特な作風だと感じています。

おおの:確かに「ツッコミが少ないマンガ」とは言われていますね。ツッコミはボケをわかりやすくする役割がありますが、『極主夫道』ではツッコミ役もボケたりすることが多くて(笑)。

あと、読みやすくするためにツッコミのセリフを入れないようにしている、という部分もありますね。絵の内容で明らかにボケていると伝わる場合は、ツッコミをあえて入れなかったり。

──虎二郎と一緒にタピオカ屋を開く回も、いきなり登場する謎の情報屋とかツッコミどころ満載だったのですが、一切のツッコミが無かったですよね。最後のオチも実にシュールで。

おおの:特に意識はしていなかったのですが、あの回はそうか、ツッコミが無いのかぁ……元々、「どかーん」って大爆笑をとる作風ではないので、全体的にシュールな感じにはなりますね。

──ちなみに、おおの先生的に美久は「ボケとツッコミ」だったらどっちよりの設定なんですか?

おおの美久はツッコミですね。あのマンガの中では常識キャラなので。

美久は常識人……!?

──な、なるほど。ちなみに、おおの先生が一番好きな、お気に入りのキャラクターっていますか?

おおの:僕は「オタクくん」が好きなんです。わりとどこに放り込んでも面白くなるんで、ストレスなく描けるんですよ(笑)。基本的に彼は人の目を見て話していないので、龍のことも怖がったりしませんしね。

──では、逆に描くのが難しいキャラクターは?

おおのそれに関してはめちゃめちゃいますけど……。特に、5巻に出てくる剛田(G-GODA)は大変ですね。

そもそも、オールラウンダーみたいキャラを出すよりは、「こいつ、今後どうすんねん?」っていうキャラを出した方が面白くなると思って描いたんですけど、思った以上に変人過ぎて……毎回、ラップを考えないといけないし、困り果ててますね(笑)。

──剛田は本当にヤバイですよね(笑)。その他、登場させたいキャラクターなどで考えているアイディアとかありますか?

おおの:あ〜、これはどこまで言って良いんだろう?

西川:……大丈夫じゃないですか?

おおの:まぁ、だいぶ前から考えているんですけど、形になっていないのが「占い師」です。

ヤクザと組み合わせたら面白くなりそうだし、主夫と占いって相性良さそうじゃないですか。「占い師」は使えそうだなって思っているんですけど、なかなか……。

西川:このままずっと出ないかもしれない(笑)。

──マル秘情報をありがとうございます! 占い師の登場、楽しみです。

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