2020.09.14

映画のようなスケールで展開される、NYの弁護士と、元アーミッシュの青年の年の差BL!『親愛なるジーンへ』吾妻 香夜【おすすめ漫画】

『親愛なるジーンへ』

2018年「このBLがやばい!」のコミックス部門で1位になった『ラムスプリンガの情景』のスピンオフ作品です。

作品の設定はそのままに、主人公を変えてのお話となっており、1巻では終わらない証として「1」の数字が燦然と輝いております(BLはなかなかシリーズにならない……)!

スピンオフですが、この作品単体で読んでも全く問題なく世界観に浸れるようになっています。ラムスプリンガの情景を読んでいる人は、ちょっと見知ったキャラが出てきたりもします。

本作のカップリングは、「NYの弁護士×元アーミッシュの青年」となっており、知らない人に「叔父です」と紹介しても納得されるというかなりの年の差恋愛です。

アーミッシュとは、ドイツ系移民が、電気やガスをほとんど使わない移民当時の生活を守り続け、農耕や牧畜によって自給自足生活を営む宗教集団です。

受の青年・ジーンは親がアーミッシュでしたが、戒律を守らなくてもよいとされるモラトリアム期間「ラムスプリンガ」の終わりに、アーミッシュとして生きることを辞め、親兄弟と縁を切って俗世で生きていくことを選んでいました。

ジーンは冬のNYで行き場をなくしかけていたところを、ひょんなきっかけから弁護士のトレヴァーと出会い、彼の家でハウスキーパーをすることになります。人生の大半をアーミッシュとして生きてきたジーンは、中世からタイムスリップしてきたように、一般的な現代社会の便利技術を知りません。

あまりの世慣れない、世間ずれしていない純粋さと、それに反するような教養を感じさせるジーンに、いつしかトレヴァーは惹かれていきます。

お互いがお互いに心を寄せているけれども、最初はそれを相手に直接は告げないで同居生活を送り、お互いの気持ちを知ったあとは、酒の勢いも借りて身体を重ねることになります。二人が過ごした穏やかで幸せな時間が眩しすぎて、この後を考えるのが少し怖くなります。

1巻ということで、2人の出会いと、彼らの気持ちが通じ合うまでが描かれているのですが、この作品自体がトレヴァーの本物の甥っ子のジーンが、トレヴァーの手記を見つけるところから始まっているのです。

この手記はいわゆる回想録で──、おそらく今現在、トレヴァーは一人で暮らしています。幸せな時間を過ごした彼らがこの先どうなっていくのか。

怖くもあり、映画のようなこの作品の流れが気になるのもあり、2巻が読めるまでドキドキしながら待つことになりそうです。人を好きになって一緒にいたいと思うようになる、その過程がとても丁寧に表現されていて、読み応えのある物語なので、冊数が嵩んでもしっかり彼らの人生を眺めてみたくなります。

お洋服を脱ぐシーンはそれほど多くないのですが、最後の方にわりとガッツリ入っていますのでご安心下さい。

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この記事を書いた人

アキミ

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