2021.01.27
【インタビュー】『下を向いて歩こう』湖西晶「離れていても孤独じゃない、現代的な距離感を描く」
今作では「きれいな湖西」を見せたかった
──もうひとりの主人公であるシエルも、最初はおバカキャラなのかなと思いましたが、実は6ヶ国が話せたり母親の代わりに家事をしていたり、意外とハイスペックな女の子ですよね。
湖西:私も描いていて、この子は賢いのかおバカなのかわからなくなるときがありました(笑)。
だけどシエルの場合、本人の能力が特別高いわけではなく、必要に迫られて言葉や家事を覚えていったんだと思います。家の手伝いが忙しくてなかなか友達ができなかった硝子と同じで、シエルも家庭の環境に左右されてきた子なんですね。
──湖西先生のマンガといえば下ネタという印象があったのですが、『下を向いて歩こう』はそのあたり控えめだったような気がしました。
湖西:『かみさまのいうとおり!』のせいで、すっかりそのイメージが定着してしまって……。なので今回は「きれいな湖西」をお見せしようと、エッチなネタはできるだけ封印しました。ところどころ「いつもの湖西」が出てたかもしれませんが。
──最終話で拾うのが浣腸器なあたり、さすが湖西先生だなと(笑)。
湖西:家族でビーチコーミングをしていたとき、息子が本当に浣腸器を拾ってきたことがあるんですよ。「これ、絶対マンガに描いてね」と言われてたんですけどなかなかタイミングがなく、よりにもよって最終話で描くことに。
──実際、そんなに落ちてるものなんですか?
湖西:場所にもよりますが、かなりの確率で落ちてますね。ビーチコーミングに行くと3回に1度くらいの頻度で浣腸器を見かけます。
──この話題を広げるのも何なので次の質問に……。メインキャラクターの中で、湖西先生に一番近いのは誰でしょうか。
湖西:どのキャラクターにもそれぞれ自分に似ている部分がありますが、強いていえばさざれでしょうか。母性があるというか、お母ちゃんみたいというか。
何を言われても本気で怒ったりしないから、素直じゃない性格のすさみんもさざれに対しては等身大で接してますし。私にも子どもが2人いるので、手のかかる子供たちをゆるく見守っている感じが自分に近いと思います。
──たしかに、さざれの存在があの4人の潤滑油になっている気がします。あと、今回インタビューをするにあたって単行本1巻を再読したのですが、9話から登場するすさみん、実は2話の時点でもう出ていたんですね。
湖西:あ~、それ……。連載当時に篤見唯子先生もTwitterで言及してくれていたんですけど、あえてリプライしなかったんです。なぜなら完全に偶然だったから。
──早い段階から設定があったのかと思ってましたが、偶然なんですか。
湖西:新キャラを出そうと決めたのは9話の直前なので、2話に出ているのはすさみんに見た目が似てるだけのモブだったんです。単行本ではあとづけで、硝子の後ろの席にちゃんとすさみんが座っているように修正しました。
©湖西晶/芳文社