2021.01.27

【インタビュー】『下を向いて歩こう』湖西晶「離れていても孤独じゃない、現代的な距離感を描く」

最近のきららは、また尖った作品が増えてきた

──湖西先生がマンガを描き始めたのはいつごろですか?

湖西:本格的にマンガを描くようになったのは中学生からですね。友達の影響で、それまでノートに鉛筆で適当に描いていたのをちゃんとペン入れするようになったり。

──そのころから、将来はマンガ家になりたいと考えていたんでしょうか。

湖西:いえ。むしろ「マンガ家になりたい」と思ったことは一度もないんです。もちろん憧れてはいましたが、昔は今以上に絵が下手でしたし、マンガ家の道は早々に諦めて大学を卒業したあと普通に就職しました。

──何か転機となる出来事があったんですか?

湖西:やっぱり、アンソロジーの仕事をもらえるようになったのが大きかったと思います。もともとテレビゲームは好きだったので『火の玉ゲームコミックス』なんかもよく読んでたんですけど、本の巻末に作家募集のページがあったんですね。

好きなゲームの4コマなら私にも描けるかなと軽い気持ちで応募してみたら運良く採用されて。それから定期的に執筆依頼をいただけるようになり、会社勤めをしながらアンソロジーを描くという生活を7・8年続けていました。

──以前『星屑テレパス』の大熊らすこ先生にインタビューしたとき、大熊先生も子どものころ湖西先生のアンソロジー4コマを読んでいたと仰っていました。

湖西:その記事、私も拝読しました。その大熊先生が大人になって今きららで連載されてるのだから、そりゃあ自分も歳を取るはずだわ……と(笑)。

他の作家さんでも、「小学生のとき湖西先生のマンガ読んでました」と言ってくださる方が結構いて。嬉しい反面、若くて才能のある人たちにどんどん追い抜かれてます(笑)。

──「まんがタイムきらら」で連載を始めたきっかけは何だったのでしょうか。

湖西:私の場合、最初はきらら本誌ではなく姉妹誌の「まんがタイムきららキャラット」創刊にあわせてのオファーでした。アンソロジーで描いていた4コマを読んだ当時の担当さんに声をかけていただいて。

──そうして生まれたのが『かみさまのいうとおり!』だったと。

湖西:いや、実は『かみさまのいうとおり!』は2作目で、キャラット創刊号では『突然無人島』という別の読み切りを描いていました。もともとキャラットは「女性向けのきらら」というコンセプトで作られた雑誌だったので、その作品にも男性キャラが多かったんですね。

けれど大人の事情なのか、「やっぱり男性向けにしよう」とすぐ方針転換したらしく……。『突然無人島』は1話限りで終了して、そのあと『かみさまのいうとおり!』の連載が始まったという流れです。

──創刊初期の話はあまり知らなかったので、とても興味深かったです。長年きららで活躍されている湖西先生から見て、デビューしたころと現在のきららに違いは感じますか?

湖西:初期のきららはカラフルというかカオスというか、いろんな作風のマンガがあったなと思います。萌え系がメインではありつつ、阿部川キネコ先生の『ビジュアル探偵明智クン!!』みたいにギャグに特化した作品があったり。

そうした混沌の中から次第に「きらら」という雑誌のカラーが固まってきて、女子高生たちのゆるい日常ものが多くなったように感じた時期もありました。最近はまた、尖った作品がちょっとずつ増えてきている気がします。

──ある意味、きららも原点回帰している時期なのかもしれません。

湖西:どちらかいい、という話ではないですけどね。かわいい女の子たちが見たくて買ってるんだからギャグはいらないと思う方もいるでしょうし。でも、甘いものばかりだと飽きちゃうからたまには塩辛いものも食べたい方もいるんじゃないかと。

──今のきららで、湖西先生が注目している作品はありますか?

湖西:大熊先生の『星屑テレパス』は画面全体が星空みたいにきらきら輝いていて、自分には描けない絵だなと羨ましく思ってます。長年一緒に描かせていただいている荒井チェリー先生の『むすんで、つないで。』も読みやすいですし、さすがチェリー先生だなと。

きららMAXだと、しろううらやま先生の『エンとゆかり』も好きです。あと、どんな作品を描いてくれるんだろうとすごく期待しているのは……ちょぼらうにょぽみ先生。

──あの方がきららに来るとは予想していませんでした……。

湖西:最初は「イキリにゃんぽこ」名義でしたけど、みんな気づいてましたよね。一体何らうにょぽみ先生なんだ……? って(笑)。

この作品を読んでビーチコーミングしている気分を味わってほしい

──「4コママンガ」を描く上で気をつけているポイントはありますか?

湖西:きららの4コマは1ページに2本の話が並んでいるので、左右のコマが同じ構図にならないように注意しています。片方が顔のアップなら、もう片方は画面を引いてみたり。

あと、いつもギャグで落とす必要はないですけど、4コマ目に何かしらの「区切り」をつけるようにも意識しています。どちらも4コママンガでは基本なので、そこまで難しいことは考えていません。

──『意味がわかると怖い4コマ』(双葉社)ではワイド4コマにも挑戦されていますが、従来の4コマとの違いは感じますか?

湖西:作業量でいえば、ワイド4コマのほうが圧倒的に楽ですね。絵も大きく描けてセリフもたくさん入れられますし。もちろん、コマを横長にしただけだとただの水増しになってしまうので、別の難しさはありますが。

──自身の作風に影響を受けたマンガはありますか?

湖西:やっぱり、ファイアーエムブレムやドラクエのアンソロジー4コマが自分のマンガの原点になっていると思います。ちょっと毒のあるギャグという点では、新井理恵先生の『× ペケ』の影響も受けているかと。

──最近読んだおすすめのマンガがあれば教えてください。

湖西:4コマだと、若林稔弥先生の『幸せカナコの殺し屋生活』が面白かったです。あとはみなさん読んでると思いますが、『鬼滅の刃』。最終巻を読んだときは、久しぶりに声を上げて泣きました。

──それでは最後にメッセージをお願いいたします。

湖西:特にヒット作があるわけでもない私が20年以上マンガ家を続けられているのは、ひとえに読者の方々のおかげだと思っています。本当にありがとうございます。

コロナ禍で外出しづらい世の中ではありますが、そのぶん『下を向いて歩こう』を読んで、自分がビーチコーミングをしている気分を味わっていただけると嬉しいです。今作はこれで完結となりますが、また新しい作品でお目にかかれると嬉しいです。引き続き応援よろしくお願いいたします!

──ありがとうございました!

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作品情報

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