2021.02.08
人間に捕らえられた鬼の子×見世物小屋の美青年。幸せで穏やかな暮らしを送りつつ、背中を見せ続けていたトラウマと向き合う二人のストーリー。『べな』こふで【おすすめ漫画】
『べな』
『べな』、まさかの続刊がきました(1巻のレビューはこちらをどうぞ)。
江戸時代、社会から弾かれた者同士でくっついたカップルのその後を描いております。
「人間に捕らえられた鬼の子×見世物小屋の美青年」という、それぞれがトラウマを持っているカップルですが、周囲の人々に受け入れられ、それなりに穏やかな暮らしを手に入れています。
それでも、べなは鬼であるがゆえに強すぎる力の加減がうまくいかずに悩み、壱もそんなべなをうまく気持ちを伝えることができません。平穏で幸せな暮らしの中で自分の異端が浮き彫りになってしまうべなは、人間以上に繊細な心を持っているように見えます。
抉れて無くなったはずのツノが、怒りに我を忘れたときにまた現れるのではないか……鬼である自分を、べな自身が一番恐れている気がします。
そんな中、友人の手紙を届ける仕事を受け、二人は初めて旅に出ることになります。
道中、紆余曲折がありながらもラブラブ新婚旅行の様相を呈した旅路です。べなはやはり悩みを抱えたままですが、旅の途中で自分を追い出した鬼の群れに挨拶に寄り、自分の過去に一区切りをつけます。壱も、そんなべなを見て、旅から戻った後、見世物小屋に、亡くなった双子の弟の形見を弟の想い人に渡し、墓の場所を聞きます。
二人とも、背中を見せ続けていたトラウマと向き合うことで、未来に向けて顔を上げて進みやすくなったのではないでしょうか。問題はまだありそうですが、この1冊で大きな前進ができたように思います。
基本的に両思いでラブラブなカップルなので、作中はいい感じにお洋服を脱いで楽しくイチャイチャしている幸せシーンも多く、癒し効果は抜群です。画面は美しいし、少し心がすれ違っていても決定的に別れにつながるような深刻な諍いはないので、そこは安心して楽しめます。
現代ものとは一味違ったシリアスさと雰囲気を、ぜひ味わってみてくださいね。2巻、一気読みがおすすめです!
©こふで/双葉社