『恋をするには透明すぎる』

切ない系の現代ものシリアスBLです。人間同士でファンタジー設定はなし。東京を舞台にしたスタイリッシュな男たちの恋模様をお楽しみください。

カップリングは、「年下わんこ×ビッチ系クールビューティ」の下剋上ラブです。

過去に失恋して以来、恋愛に本気になることはなく、恋愛は遊びと割り切って相手をとっかえひっかえしている一哉。その失恋が原因で職場を辞め、今は小さな店で店長としてスタイリストをしているのですが、ある日、アシスタントとして見習いを一人押し付けられます。

「ミキ」というからには女性だと思い込んでいたらまさかの男で、またその彼が一哉の好みのど真ん中で、しかも明らかに自分に好意を寄せている気配がするのです。

まさに踏み抜かれるのを待っている地雷のようなものですね。踏んではいけない、一定の距離を保たないとと自分に言い聞かせながら指導する一哉ですが、ミキはストレートにフットワークも軽く「好き」などと言ってきます。

一哉に一途すぎてまさかのチェリーボーイなんですが、彼の過去を知り、ちょっとした事故で一線を越えてしまって露骨に距離をとられても諦めません。

まさにご主人様が大好きな大型犬の様相を呈しており、そうそう簡単に振り払えません。頑なに真剣な恋愛から背を向けていた一哉も、あまりのミキのまっすぐさに次第に気持ちがほぐれていきます。もうとっくにミキのことを好きになっていたのになかなか認められなかった一哉ですが、ミキがお客さんに笑いかけているのに嫉妬していることに気付くに至って白旗です。

両思いになるまでの気持ちの変化がとても丁寧に描かれており、恋に臆病になっていた一哉にまっすぐ向かっていくミキは、気持ちいいくらいまっすぐな気性が本当にわんこそのもので、とてもいい組み合わせだなと思わせてくれます。強がりながらも心も体も全部預けられる相手が欲しかった一哉にはぴったりの相手ではないでしょうか。

切ないけどちゃんと両思いハッピーエンド。

当て馬君ですらなんかちょっといい感じに無邪気で、気持ちよく読み進めて幸せな安心感と共に読了できます。清涼な空気みたいなBLなので、心の洗濯になること間違いなし。正統派の恋愛ものをお求めのにはぜひ、手に取っていただきたい作品です。