2021.05.03

【インタビュー】『チ。ー地球の運動についてー』魚豊「大地のチ、血液のチ、知識のチ。その3つが渾然一体となっているのがこの作品。」

ソクラテスに触れて「どうせ死ぬんだったら、漫画家を目指してもいいじゃん」と吹っ切れた

──漫画を描いていて楽しいのはどんな時ですか?

魚豊:好きな音楽を聴きながら、絵を描いている時ですね。楽しくて、これでお金が稼げるのは本当に恵まれていると感じます。「僕が今、この線を引いたら楽しい。」だから線を引く、みたいな。読者のために線を引くのがプロの仕事ならば、僕は完全にプロ意識が足りて無いと思います(笑)。僕のためにやっているので。

──プロットやネーム作業は苦しい生みの作業なんでしょうか?

魚豊:「これ、面白そう!」って思いついた時は楽しいんですけど、そのつじつまを合わせる作業は面倒くさいですね(笑)。でもその思いつきに、ペン入れをして完成させていくのは好きですね。

──ラストシーンをどうするのか、決めた上で連載開始されたのでしょうか?

魚豊:はい。『ひゃくえむ。』と同じく、細かく決めてから連載を始めています。どこに向かうのか分からないまま漫画を描くのが不安で、そんな度胸もありません。ラストまでおおまかに決めることで、自分の100%が出せると思い、作ってます。

──創作に影響を受けた作品はありますか?

魚豊:セネカの「人生の短さについて」、プラトンの「ソクラテスの弁明」、デカルトの「方法序説」などです。哲学や天文学の本は知識欲も満たせますし、エンターテイメントとしても面白いので影響を受けました。歴史に残る本って古びず、面白さに普遍性があるのが偉大だと思います。

──具体的にはどのあたりに興味を惹かれたんでしょうか?

魚豊:「ソクラテスの弁明」では、「君たちは死刑が一番の刑罰だと思っているが、死後なんて誰も知らない。だから良いか悪いか判断できない。にもかかわらず、『死を悪いこと』だって捉えてるのは君たちの傲慢だよね」みたいな事を主張しています。

魚豊:その上で死について言えることは2パターンあって、

・死後の世界がある場合→いろんな神々に会ってめっちゃ訊きたいことがあるから最高。
・死後の世界がない場合→夢一つ見ないで熟睡するほど気持ち良いものはない。煩わしい現世から素晴らしい無に行けるなら、最高のプレゼントだ。

つまり「私は死ぬことを何も恐れない」ってソクラテスの言葉は、死にずっと怯えていた僕の心を軽くして、感動して興味が出たんです。

──ソクラテスは毒杯を煽ることになるわけですが、1巻のラファウも、それを意識したんでしょうか?

魚豊:意識はしました。

──昔から死ぬことについて、ずっと考えてらっしゃったんですか?

魚豊:高校一年のある夜、「あれ? いつか死ぬってやばくない? これまで楽しかったけど、全部が無になるんだよな……」って急にタナトフォビア(死恐怖症)みたいになってしまいました。

今でもその気持ちは抱えているのですが、「いつか死ぬんだったら後悔なく生きよう」って心構えができるようにもなりました。死ぬのは怖いんですけど、「いつか死ぬんだから飛び出してみようぜ、挑戦してみようぜ」って勇気が出せることにも繋がります。

僕も、「どうせ死ぬんだったら、漫画家を目指してもいいじゃん」ってことで何度も背中を押されました。

──そこから漫画家を志望されたんでしょうか?

魚豊:それはもっと早く、中学一年の時にアニメの『バクマン』を見て、「こういう方法で漫画家になれるのか」と知りました。

部活もいってませんでしたし、何もやらないよりもやった方がいいだろうと。でも年に2、3本しか投稿していない緩さだったんですけど。

「これは正義」「これは悪」といった二元論ではない作品に惹かれる

──その頃からお好きだった漫画など、漫画遍歴をお訊かせください。

魚豊:それまでギャグ漫画しか読んだことがなかった自分が、中学一年の時に初めて『カイジ』の2部、地下チンチロ編を読んで、こんな面白いものが世の中にあるのかと衝撃でした。

いきなり一話目の一番最初に、「ああ…それにしても金が欲しいっ…!!」って書いてあって、そこがストーリー漫画の本質に初めて触れた瞬間です。

──背景が黒いバックに、文字だけで。あれはインパクトが大きいですよね。

魚豊「本当の面白さってのは、こういうもんだぜ!」って見せつけられたようで、ガツンとやられました。『カイジ』はオリジナルゲームなど、馴染みのないものを描いてるのに、エンターテイメントとして楽しませてくれるんです。

──他にはありますか?

魚豊:高校生になって『寄生獣』と『闇金 ウシジマくん』にも出会いました。『寄生獣』は、僕が生まれる前に描かれた作品なんですけど、古さを全く感じさせません。今にも通じるメッセージ性があって、こういう作品が歴史に残るんだと感銘を受けました。普遍的な面白さが伝わってきます。

魚豊:『闇金 ウシジマくん』はストーリーが重たいんですけど、同時にどこか、人間を信じる愛や爽やかさも存在しています。そういうアンビバレントなものに触れたのもこの作品が初めてでした。

──白黒はっきりしない作品に惹かれるんですか?

魚豊:どちらも「これは正義」「これは悪」って二元論ではない部分に惹かれます。「良かったのか悪かったのか分からないけど、世界ってそういうものだよ」って読後感を感じるところが良いですね。

──『闇金 ウシジマくん』のエピソード毎のラストって、モヤモヤっと白黒つけずに物語を締めるんですよね。

魚豊:そうです。他にも『ピンポン』は、スポーツに興味がない僕が読んでも死ぬほど面白かったです。

DEATH NOTE』も今までに経験したことがない内容で興奮しました。『亜人』は絵が死ぬほどカッコいいし、一つだけの設定でここまで描けるのか!って素晴らしい。絵も設定も今まで見たことがないものを感じさせてくれるものが、僕には刺激的でした。

──次に、お気に入りの映画を教えて下さい。

魚豊:「第9地区」「インターステラー」「桐島、部活やめるってよ。」、あとは「タクシードライバー」も好きです。

──「インターステラー」は難解な内容でしたけど、理解しながら観られていたんですか?

魚豊:そこがすごく良いんです! 細部まで理解できなくても、「とんでもないもの見た!」ってエンターテイメントに仕上がっています。それで少し調べていくと、ちゃんと作られてることがわかる。作品を観終わったあとに、自分で調べることができる作品が好きです。

──『チ。』の天文学の扱いにも通じます。

魚豊:『チ。』は一応勉強もして取材とかもしてますが、勿論「インターステラー」ほどゴリゴリにできていないです(笑)。でもそういう作品を作りたい気持ちはあります。

──『チ。』では専門的な天文学の知識について、分かりにくい部分を分かりやすくするような工夫をされているんでしょうか?

魚豊:僕の漫画はすべて、高校生の僕が読むことを意識して描いています。だから専門的な議論には踏み込まないようにしているんです。僕自身、それを面白くする想像力もないので(笑)。

──過去の自分が仮想の読者なんですね。

魚豊:僕の描いた漫画を、他の人がどう喜んでくれるのかが全然予測できなくて。でも「昔の自分だったら喜んで読んでそう」って予測なら出来るかもと、なので自分が面白がれる漫画は目指してます。

引っ越しの時に捨てられないような漫画を描きたい

──5巻以内で連載中の漫画で、お薦めを教えて下さい。

魚豊:これはもう『レモンエロウ』がすごく面白いですね。AVが表現規制されてしまった近未来の話で、エネルギッシュなパワーを感じます。これまでに見たことがない設定で、絵もカッコよくて、『レモンエロウ』だけじゃなく作者の古町先生の作品は今後とも読みたいです。

──3巻のヨレンタのセリフを引用するならば、「時間と場所を超越して、未来の人に思考を伝えたい」。ご自身の漫画を通じて、後世に思考を伝えたい欲求を、先生自身が持たれているんでしょうか?

魚豊:それができたら本当に最高で、夢や理想の位置ですね。大きい夢は、100年間は後世に残る作品をいつか作りたい。小さい夢は、引っ越しの時に捨てられない漫画にしたい。引っ越しの時に「これ要らねーや」って廃棄されずに、「まぁ持って行ってやってもいいか」くらいのポジションになれたら嬉しいです(笑)。

──デビュー前はずっとギャグ漫画を描かれていたそうですが、今でもギャグ漫画への意欲はありますか?

魚豊:描きたいんですけど、難しすぎて……『魁!!クロマティ高校』が大好きなんですが、ギャグ漫画はセンスが物を言うジャンルですから、僕には難しいだろうなって。敷居が高く、常に尊敬と憧れをずっと抱いています。

──4巻の発売はもう少し先になりそうですが、これからの展開について教えて下さい。

魚豊:4巻では、オクジーと二人の運命が大きく動いていきますので、乞うご期待です。

──ずばり訊いちゃいますけど、第3部ってあるんですか……?

魚豊:そうですね、第3部はあります。

──おおっ! 『ひゃくえむ。』も同じでしたが、時間軸を固定せず、どんどん早回しして描かれますよね?

魚豊:自分が面白そうと感じるのか、そういう物なんだと思います。

──そのあたり、先ほど挙げられた『DEATH NOTE』のドライブ感にも通じます。

魚豊:言われてみると、『寄生獣』『闇金 ウシジマくん』『ピンポン』、どれもポンポンと展開が進みますね。急に数カ月後とか、何年後とか、キャラがイメチェンしたり。僕が憧れる物語の面白さが共通しているんだと思います。

──それでは、最後に意気込みをお願いします。

魚豊:今後も飽きられないように尽力いたしますので、よろしくお願いします!

チヨダ&テラモト(担当編集):魚豊先生と一蓮托生で面白い作品を世に送り出して、我々編集サイドも盛り上げていきます。最後まで読んでいただければ嬉しいです。ぜひ応援してください!

──本日はありがとうございました!

作品情報

サイン入り色紙を読者プレゼント!

今回のインタビューの実施を記念して、魚豊先生のサイン入り色紙1名様にプレゼントいたします!

下記の応募要項をご確認の上、どしどし応募くださいませ!

プレゼントキャンペーン応募要項

【賞品】
魚豊先生のサイン入り色紙1名様にプレゼント

【応募期間】
2021年5月5日(水)~2021年6月5日(土)23:59まで

【応募方法】
以下の2点の手順にしたがい、ご応募ください。

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第5回 みんなが選ぶTSUTAYAコミック大賞

日本全国に数多くの書店とレンタル店を展開する「TSUTAYA」が、漫画に特化した読書記録・管理サービス「comicspace」と、電子書籍配信サービス最大手の「ブックライブ」のサポートのもと、 【第5回 みんなが選ぶTSUTAYAコミック大賞】の投票受付を、2021年4月1日(木)より開催中!

本賞は「2021年3月31日現在で単行本が最大5巻まで発売している未完結の漫画作品」を対象としており、次にヒットすることが期待される、まさに「ネクストブレイク作品」を読者投票によって決める漫画賞です。

大賞作品と各部門賞は6月中旬頃に授賞式イベントにて発表し、全国TSUTAYAの書籍販売・レンタルコミック売場にて大々的に展開を行い、読者からの作品に対する想いをのせた投票コメントも全国の売り場にて紹介予定です。

投票受付は2021年5月16日(日)まで! 今年はどの作品が大賞を受賞するのか!? ぜひみなさんの投票をお待ちしています!

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かーずSP

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