2021.06.08

【インタビュー】『魔入りました!入間くん』西修「最高にウルトラハッピーな物語にしたい」

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『入間くん』のキャラクター制作秘話!

―主人公の鈴木入間はどのような思いを込めて描いていますか?

西:一話から、おとなしい優しい子というのを前面に出して描きました。

編集:序盤の彼はいかんせんまだ本人が「何かしたい」という、我がない。みんなに「こうしてほしい」と言われると「いいよ」という子なんですけれども、本人は何がしたいのか全くわからない。

西:そう、だから何をしたいのかひたすら周りが聞き続けて、本人が考える、というのを繰り返しましたね。

──入間くんには過去に親に売られたり、人生が特殊ですよね。

編集:その過去が彼の心の基軸になっていますね。アニメの森脇真琴監督が「これは入間くんが人間性を取り戻すストーリーである」と言ってくださっていて、ああ本質をついているなって感動しましたね。

西:人間界で培えなかったいろんな感情を魔界で拾っていってますね。

編集:ドキドキするとかムカついたとかワクワクするとか。そういう当たり前の感情と出会った時に入間くんは口にしてくれて、その度にそのシーンが印象的になる。「そうかこれがムカつくってことか」みたいな。

西:そういう気持ちを培った上で彼は少しずつわがままに…なるかもしれないですよ? 周りの言うこと聞かなくなったりとかね。

──毎話、何かしら成長している感じがします。

西:その成長を見守りながら、この子が将来魔王になるのか? ならないのか? とワクワクしながら見てもらえると嬉しいです。

編集:普通に考えると、絶対ならなさそうですもんね。でも、もし魔王になるなら、入間くんはどんな成長を遂げるんだろう。どんな心境の変化があるんだろう。もちろん、魔王にふさわしい器の悪魔は他にもたくさん出てくるし。

西:敵や障壁は強大なほうが燃えますよね!

──入間に忠誠を誓って寄り添うアスモデウス・アリスはどんな意図で作られましたか?

西:アスモデウスは、入間の身近にいて味方になってくれる子がほしいって最初に思って、そういう主人公を支える役として横に置いたキャラクターなんです。読者が読んでいて、主人公のことをいっぱい褒めてくれるキャラクターが隣にいたら嬉しいだろうなって。

それにこれから入間が魔界で過ごしていく中でいろんな困難があるはずだから、それを乗り越える時に助けになれるような強い首席の子という設定にしました。

──間違いなく強い子ですよね…単純な戦闘力でいえばトップクラスじゃないですか。

西:めちゃくちゃ強いはずなんだけど、戦闘シーンとかはそんなにがっつり描いてはないんです。見返していくと、ひたすら入間のことを好いてくれるシーンばかり(笑)。入間の周りにいるのは、実はすごい子たちばっかりっていう状態が楽しいですよね。

編集:アスモデウスの優秀さは一巻からぶれないですし、ギャグシーンがあってもみっともなかったり情けない感じにはしないでおこうと意識していますよね。誰が見ても凛々しくて頼もしくてかっこいい、そんな悪魔が入間に心酔していることが嬉しいし、同時に入間くんも背筋が伸びる。2人はお互い尊敬しあえる関係性でありたいんでしょうね。

──フリーダムでマスコット的な存在のウァラク・クララはどういう経緯で生まれましたか?

西:クララはヒロインではあるんですけど、できるだけヒロインっぽくない子を置きたいというのが念頭にありました。「この子と付き合いたいから頑張るぞ」みたいなモチベーションになる子をあんまり置く気はなかったです。

でも、やっぱり女の子を横においてあげたい。ならばちょっと変わった子がいいなって。当時よくカートゥーンをよく見ていて、海外のアニメにはすごくぶっ飛んだキャラクターがいっぱいるけど、かわいいんですよね。それを日本版として「ぶっ飛んでいるけどちゃんとかわいい子」を作ってみようという経緯で生まれました。

編集:バーンと走ってきてドカーンとぶつかってケラケラケラ、みたいなですね(笑)。

──彼女がいると画面のハッピー感がすごくでますよね。

西:彼女が出てくるだけで場が明るくなってコミカルになるので、場の転換とか清涼感を出してくれるっていう素敵なキャラクターですね。

──この3人を軸にした漫画にしたいという思いは最初からあったんですか?

西:そうですね、できるだけあの3人を見守っていきたい。それを軸にクラスメイトだったり教師だったり家族だったりが出来ていった感じがしますね。

──強くて凛々しいアザゼル・アメリ会長はいかがでしょう。

西:クララとは違うタイプの女の子がほしい、っていうところで最初から案としてはいたんですよね。

編集:初期設定資料からいて、ヒロイン格としてイメージは固まってましたね。強くて普段は凛としている生徒会長なのに、かわいいものが大好きという設定を見た時に、この子大好きだなと思いました。けれども、あそこまで身長が大きいとは(笑)。

西:入間くんと一緒に並んでいる時の明らかなサイズ差が出したかったんですよね。当初からの設定で、彼女は入間には惚れるだろうと思っていたので、できるだけ障害が多いほうが面白いだろうって。

編集「もしかしたら私はでかいのではないか?」と気づくっていうシーンもかわいい。こんなにかわいくて入間の前ではいつも隙だらけなんだけれど、生徒会長としての格は落とさない。2巻で「それは理想だろ 私がきいたのは野望だぞ 理想と野望は違う」っていう入間の核心に触れてくれたのが素晴らしく、すごく好きなやり取りです。彼女は入間が成長するための鍵になっているんだなって、その時気づきました。

西:アスモデウスは入間に対して全肯定マンだからなんでもハイハイっていうし、クララに関してはそのへんのこと考えてなくて「わーい」って自由だから、入間の成長を促す点ではアメリが最適でしょうね。先輩だし。

──厳格なカルエゴ先生も、成長を引き出す一人だと感じています。

西:カルエゴも厳しいことを言ってくれるんですけど、若干私情の恨みが入っているから……(笑)。まあカルエゴにとって入間はいち生徒なので、個人的に一人だけ贔屓するわけにいかないんですよね。平等に全員生徒を見ているから。

もちろんカルエゴが入間の背中を押すシーンもあるんですけど、そこをキャラクターの本質として前面に押し出すのは難しい。アメリだったら同じ生徒として入間を贔屓的に押すことができる。

入間の先生、ナベリウス=カルエゴ

編集:そこは顕著な違いですよね。アメリは後ろから背中を押してくれるイメージですけど、カルエゴは懸命に手を伸ばす人は引っ張るけどそうじゃないなら簡単に見放すイメージがあります。生徒が頑張っているんだったら補佐をするのは教師の役目っていうポリシーに基づいている感じが彼の魅力ですよね。

西:無条件では助けないですね。大人です。

──描きやすいキャラ、苦労するキャラを教えて下さい。

西:クララとロビン先生。わかりやすいんですよね、行動パターンが。私が操縦するまでもなく勝手にどっかいくので、「よしよし好きなとこ行って来い」ってなります。クララも、自然と「クララっぽい行動」をする子ですし。たまに編集さんから、「もう少し美少女ムーブ入れましょう! ヒロインだから!」と言われます(笑)

編集:クララは美少女ですから! でもキャッキャ動かしていくうちにデフォルメされて、どんどん輪郭がなくなっていっちゃう(笑)。

西:あと、描いていて難しいのはバールかなあ。敵の親玉なので、彼の一挙手一投足にはカリスマや格みたいなものがどうしても必要だし、変なことがさせられない。慎重に描いていますね。

魔界秩序崩壊を狙う黒幕・バール

ークラスメイトだといかがですか?

西:7巻以降で出番の増えるシャックス・リードは描きやすいです。わかりやすいティーンエージャーキャラですね。珍しく、入間のことを叱れる男子です。あとアスモデウスとはエロ本の話とか絶対できないじゃないですか(笑)

入間のクラスメイト、シャックス・リード

編集:クラスの子たちが入間くんにどういう思いを持っているのか、どういう声をかけるのか千差万別なのが面白いですね。問題児クラスのキャラに関しては、悪入間編以降、彼らの個性がドンと出てくる感じでワクワクしますよ。

──特殊なキャラとして、本編にほぼ登場しないエイコはどういう経緯で生まれたんでしょうか。

西:一般生徒から見た入間ってどうなの? っていうのを補う一面として、入間に気があるけど話しかけられない立ち位置の子をおまけ漫画で登場させました。入間がどういう扱いなのか客観的に見ることを念頭に置いていたんです。けれども……。

おまけ漫画で登場する・エイコ

編集:まあ「一般生徒」ではなくなりましたね。ファンが高じて彼女もどんどん迫力を増して成長していくから……。まさかのアスモデウスと仲がいい、唯一の他クラスの女子になってしまった(笑)

──絶対に入間の横にいない、という立場は保たれていますね。

西:ファン目線だから、接触は絶対しない。本人がしたいと思っているかどうか微妙なところですが、入間とエイコが話したら終わりだと思っています。

編集:かわいそう!(笑)。まあ彼女は単行本のおまけ漫画のヒロインですからね。

西:そうです。彼女は絶対皆勤賞にしたくて。どんだけおまけ漫画が少ない巻でも、エイコは出さなきゃいけないんですよ。そこを考えるのが楽しいですね。

──描いている中で、自分が考えていたのと大きく変わってきたキャラクターはいますか?

西:やっぱりケロリかな。アイドルの話もそうですし、そこからの佇まいも変わっていったのは彼女ですね。最初こんなに前に出るタイプじゃなかったのに。どんどん女王になっていく。

編集:元々自信家だった子ですけれど、そこから風格めいたものに変化していますね。あとはバラム先生じゃないですか?

西:悪入間編の次に、最初は他クラスの生徒を描こうとしていたんですけど、展開が上手くいかずそれなら新キャラ一本絞って出したほうがいい、という打ち合わせがあって登場しました。キャラクターデザインは他の作品でやろうと思っていたお気に入りのデザインがあったので、そこから引っ張ってきました。性格はネームの時に決まりましたね。

編集:悪魔学校の教師で印象的にするならどうしたらいいのか。ただ単純に強いとか怖いとかじゃキャラが立たないよね、って話していた時に、カルエゴと仲がいいっていうのはどうか? って急に思いつきましたよね。

西:すごく仲がいいか、すごく悪いかどっちかだよねって話になり、カルエゴはみんなと仲悪そうだから仲がいいほうが面白そうだなと。カルエゴと並ぶと、強者感が出るんですよ。

編集:カルエゴとバラムの仲がいいんだったら、元々知り合いだったオペラと三人組だったんじゃないかっていうイメージが沸いてきて、あとから大人組が誕生したんですよね。

西:最近オペラの人気が上がってきている感じが嬉しいんですよ。

カルエゴ先生の先輩でもあるオペラ

──大人と子供はしっかり分けられていると思いました。

西:ちゃんと大人がいる以上は子供がやらかしたことは叱ってほしいし、危ないところは助けてほしい。そこの役割は分けたいと思って描いてますね。

入間の存在は魔界において貴重なものですから、できるだけ強い人をそばに置いておきたくて、カルエゴは(使い魔として)無理やりそばに置かせていただいて。おじいちゃんやオペラさんやバラム先生など、強い大人を固めました。

見開きへのこだわり

──特に見開きを含めて、迫力のある作品だと思っていました。描く際にこういうところを盛り上げたいというのがありましたら教えて下さい。

西:その「キャラクターが見える」ような見開きにしたいんです。印象的なセリフの瞬間や、活躍の瞬間を切り取りたいんですよね。

編集:見開きは打ち合わせのキーワードになっていて。「今週どこを見開きにしましょうか」と話した時に見開きのイメージがわかないなら、じゃあこの回は山場がないか、たどり着いていないかとなって、もう一回打ち合わせを詰めることが多々あります。アニメサイドにも「見開きのシーンは大事にしてください」と始めにお伝えしました。そこが読者に一番伝えたいところなので。

西:ここが難しいところで、アニメって画面の比率が変わらないから、漫画と違って一つのシーンの画角の大きい小さいがないんですよね。だから見開きのシーンでは、できるだけ迫力を出してほしいとお願いするようにしています。

編集:森脇監督はその意図を敏感に察知して、迫力が出るように演出をくんでくださってますよね。見開きの場面は、アニメでももの凄くかっこよくしてくださっているので、先生が描かれた原作の熱気がアニメのファンにも届いている感じがして嬉しいですね。

──アニメで印象的なシーンがあったら、是非漫画と比較して見てほしいですね。

編集:そうですね! それぞれ印象が変わると思います。

──作者として、アニメから入った人やこれから読む人に、『入間くん』という漫画の見てほしい部分を教えて下さい。

西読者の思いを絶対裏切りたくない、っていう気持ちでいつも描いています。

編集:安心して楽しんでほしいですね。「そうそうこれが見たかったんだよ!」ってなるような漫画だと思います。

西:あと作っている側もすごく楽しんで描いてます。毎週担当さんと一緒に、「読者にどんな爆弾を送ってやろうか」って話をしながら作っていますよね。入間くんを好きになってもらえればもらえるほど、楽しめるようなものを毎週更新していこうと思っています!

──本日はありがとうございました!

作品情報

『魔入りました!入間くん』プロモーションビデオ

TVアニメ情報

©西修(秋田書店)/NHK・NEP

あらすじ:頼み事を断れないお人よしの少年・鈴木入間はひょんなことから魔界の大悪魔サリバンの孫になってしまう! 溺愛される入間は、彼が理事長を務める悪魔学校バビルスに通うことに…。戸惑いながらも、アスモデウスやクララ、クラスメートたちと楽しい学園生活を送る入間。しかし、そんな魔界に馴染(なじ)んだと思ったある日、さらなる受難が! 指輪がしゃべりだし、入間が…グレた!? 入間の波乱万丈な魔界学園生活はまだまだ続く!

TVアニメ『魔入りました!入間くん』第2シリーズ

【スタッフ】
・原作:西 修
・監督:森脇真琴
・シリーズ構成:筆安一幸
・キャラクターデザイン:佐野聡彦、原由美子
・音楽:本間昭光
・アニメーション制作:BNピクチャーズ
・制作:NHKエンタープライズ
・制作/著作:NHK
・オープニングテーマ:DA PUMP「No! No! Satisfaction!」
・エンディングテーマ:天月-あまつき-「ココロショータイム」

【キャスト】
・鈴木入間:村瀬歩
・アスモデウス・アリス:木村良平
・ウァラク・クララ:朝井彩加
ほか

【TVアニメ公式サイト】
https://www.nhk.jp/p/iruma2/ts/Q8ZL6MQQ4Y/

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