2018.02.28
創作テクから作品のルーツまで!『いきのこれ! 社畜ちゃん』ビタワン×結うき。特別インタビュー
コピペだと思われないように見た目を工夫して、視覚的なマンネリを防ぐ
───ここからは作画担当の結うき。先生にもご参加いただきます。作画される際に気をつけている事はありますか?
結うき。先生(以下、結うき。):背景はしっかり描いて、デフォルメに逃げないようにしてます。基本的に社内の話になるので、「これコピペだろ」みたいな同じ絵でも、いけるといえばいけるんですけど(笑)
───確かに、机に座っているシーンが多いですからね(笑)
結うき。:似たようなシーンはなるべく作らないように、カメラアングルを考えて声をかける方向を変えたり工夫してます。コピペと思われないように、途中から机の上を模様替えしたんですよ。
結うき。:途中から社畜ちゃんがダブルディスプレイになっていたり、先輩さんはダブルで片っぽを縦長にしていたり。視覚的なマンネリ化を防ぐ努力をしてます。最近、休憩室もアップグレードしたんで、見比べてみて下さい。
マンガのネームもGoogleスプレッドシートにしてしまうのが、SEの習性!?
結うき。:絵でも一ネタ追加できないかっていうのは常に意識していて、勝手にネタを突っ込むこともあります。
ビタワン:例えばこのネームが、
ビタワン:完成だとこうなります。
───前を向いているアングルだったのが、完成原稿では後ろを向かせてるんですね。というか、気になったんですが、これ、Googleスプレッドシートにネームが描いてありますよね?
担当編集:Googleスプレッドシートでネームを描くマンガ家は、ビタワンさんしか知りません(笑)
ビタワン:なんでもスプレッドシートにしたがるのがSEの悪い癖でして(笑)
───結うき。先生のアレンジで盛り上がったネタは?
結うき。:後輩ちゃんの1本指タイピングは話題になりました。あと擬音をけっこう入れてます。私は『ONE PIECE』が好きで、あのマンガは「どん」とか擬音がいっぱい出てくるじゃないですか。擬音は勢いも出てきますし、画面密度も高くなるのでこだわってます。
───苦労した作画はありますか?
結うき。:③巻の13ページ、朝チュン回が今まで一番時間がかかりました。投稿版とWeb掲載版で原稿も2種類用意したこともあって作業量が大変でした。
担当編集:『社畜ちゃん』は「ニコニコ静画」と「コミックウォーカー」でも配信しています。どちらもアプリを配信しているのですが、エッチすぎるとレーティングに引っかかるので、配信版とコミックス版で差し替え用に原稿を2パターンもらっています。
───他に工夫してらっしゃる部分は?
担当編集:通常の1ページ2ネタの4コマではなく、1ページ1つのワイド4コマなんですが、タイトルと注釈を入るためにコマの左右を小さくしているのも結うき。さんの提案でした。
結うき。:『社畜ちゃん』が始まった頃、ワイド4コマをいっぱい調べたんですが、『月刊少女野崎くん』だけ横にちょっと潰れていたんです。横をめいっぱい長く使うと、タイトルや注釈を右左に振ることになるので、癒し系のマンガで目が疲れるのは嫌だなと。
───連載開始当初は、紙の本になることを想定してませんでしたよね? その時からこういう着想に至ったのはなぜですか?
結うき。:基本的にWeb上で投稿している人は、誰でも同人誌など紙にまとめたくなるので(笑)
ネットで無料公開を続けることで、長期的にファンを獲得する
───単行本化するにあたって、Web公開を取り下げることはしなかったんでしょうか?
担当編集:その考えもありました。ですが長い目で見た時に、公開し続けた方が作家さんのフォロワー数が増えて、宣伝になるんじゃないかと思いまして、公開し続けています。
もし連載が終わっても、作家さんにはフォロワーが残ります。それで次の展開が望めるなら、公開し続けるのもありじゃないかと。
実際、お客様から「早くコミックスを出してほしい」という声が多くて、ありがたかったです。
ビタワン:フリーミアム(※)って言葉を知ったのは後からで、そういうのはまったく意識していませんでした。
(※フリーミアム:基本的なサービスや製品は無料で提供して、高度な機能や特別な機能については料金を課金する仕組みのビジネスモデル。/出典:Wikipedia)
担当編集:まだマンガが1冊分出来てなかったんですが、これは早く単行本を出さなきゃってことで、プログラミングの記事を入れたんです。
───えっ! あれは苦肉の策なんですか!?
担当編集:はい(笑) ①巻制作時、ページが足りなくてビタワンさんに急遽作ってもらいました。③巻目の時はゲームを作ることになって30ページになったのですが、編集部に多すぎるから20ページにしてと言われまして。
ビタワン:2/3になったらプログラム全体も変えないといけないんですよ。上の事情で仕様変更になってコードを書き直すって、本業とやってることが同じだなって。
(一同笑)
結うき。先生こだわりのキャラデザインについて
───各キャラクターデザインについて伺っていきます。まずは社畜ちゃんから。
結うき。:ビタワンさんが昔作ったアプリがありまして、それ用にデザインしたキャラが元になってます。当時、AKBの制服みたいな衣装が可愛かったので、社畜ちゃんは夏服も冬服も学生服っぽいデザインにしました。
ビタワン:『NEW GAME!』で涼風青葉ちゃんが学生服で間違えられるので、前例があるからOKだろうと。
───さっきから『NEW GAME!』好きすぎですね! 後輩ちゃんはいかがでしょう。
結うき。:社畜ちゃんや先輩さんは表情をコロコロ変える子じゃないので、後輩ちゃんは表情を豊かにしています。可愛い感じにしたかったので丸を意識したデザインで、髪の毛もロングウルフっぽくしました。
ビタワン:ネームで胸を大きくしようとすると、いつも結うき。さんに止められます。
結うき。:自分がいつも全力で拒否してます、後輩ちゃんはずっとAAカップなので(笑)
───先輩さんや同期ちゃんはいかがですか?
結うき。:先輩さんは夏服も冬服も谷間が見えてますし、サービスシーンに特化しました。同期ちゃんは、若干ですけどゴシックロリィタ的な装飾多めなデザインです。
───全体的にアホ毛が多めなんですが、お好きなんですか?
結うき。:自分は『Fate/stay night』がきっかけでオタクになったんです。当時の流行として、とりあえずヒロインにはアホ毛をつける風潮があったので、ついつい入れてしまいますね(笑)
スピンオフは、後輩ちゃんの「オタクあるあるネタ」が盛りだくさん!
───スピンオフ『いきのこれ! 社畜ちゃん~後輩ちゃんオタ活動記~』の①巻も発売されました。こちらはどんな内容なんでしょうか?
ビタワン:社畜ちゃんの会社あるあるネタに対して、スピンオフは後輩ちゃんの「オタクあるあるネタ」がコンセプトです。
『げんしけん』とか『俺の妹がこんなに可愛いわけがない』といったオタクを扱った作品が大好きなので。バイトちゃんも本編ではあまり出番がなかったので、スピンオフでいっぱい活躍させています。
───スピンオフの方は、人気の傾向はありますか?
ビタワン:ソシャゲのガチャあるあるネタはたくさんRTされますね。バイトちゃんのガチャ廃人の奇行は、同僚の人たちがモデルになっています。
システムエンジニアなのにオカルト的なことを信じていて、謎の理由付けでゲン担ぎをしているのを見ながら、面白いなってこっそりネタにしています。
担当編集:本編はフェチズムが強いんですけども、スピンオフは湧井想太さんが可愛い女の子を描かれていて、差別化ができていると思います。
ビタワン:スピンオフ①巻の描き下ろしは、後輩ちゃんが入社する前のエピソードです。コンセプト的に本編では描けなかったので、スピンオフならではのネタを楽しんで頂けたらと思います。
担当編集:あと、スピンオフ①巻でも結うき。さんに、社畜ちゃんが秋葉原に行く話を描きおろしてもらっています。
結うき。:秋葉原に取材に行く時間もないので、Googleストリートビューで背景を見ながら一生懸命描きました(笑)
©ビタワン,結うき。/KADOKAWA