2018.02.28
創作テクから作品のルーツまで!『いきのこれ! 社畜ちゃん』ビタワン×結うき。特別インタビュー
ブラックなIT企業に勤める女の子・社畜ちゃんのIT会社あるあるネタが満載の『社畜ちゃん』。
毎週日曜日の20時に更新される個人のWebマンガとして、2014年12月にスタートしました(「ニコニコ静画」と「コミックウォーカー」でも掲載中)
『いきのこれ! 社畜ちゃん』としてKADOKAWAから単行本化もされて、①巻~③巻で累計30万部突破(電子書籍をのぞく)の大ヒットを記録しています。
そこで今回は原作のビタワン先生と作画の結うき。(ゆうき)先生にインタビューを敢行!
『社畜ちゃん』独特の変わった創作テクニックから、Twitterのフォロワーが19万人を越えるビタワン先生からお訊きしたフォロワーを増やすコツまで。2時間を越えるロングインタビューになりました。
SNS時代だからこそ生まれた『社畜ちゃん』のセルフプロデュース術など、他では読めない貴重なインタビューになってます。それではどうぞ!
新卒で入ったブラックIT企業が『社畜ちゃん』の元ネタ
───『社畜ちゃん』がスタートしたきっかけは何だったんでしょうか?
ビタワン先生(以下、ビタワン):Twitterで日常や体験談をマンガにしてアップしている人をみて、自分も仕事の愚痴っぽいマンガを面白おかしく描きたくてはじめました。
───『社畜ちゃん』というキワドい単語をタイトルにつけたのは思い切っていますね。
ビタワン:「社畜」ってタイトルでも、読むと笑えたりほっこりするような明るい内容にした方が良いと編集さんから意見を頂き、結果的にギャップが出る形になりました。
扱うテーマがネガティブなだけに、暗くなりすぎたりしないように気をつけてます。題材が暗い時ほど、意識的に明るくしようと、わざとギャグぽい顔にしたりしてますね。
───トラブルネタを笑いに転換するテクニックはありますか?
ビタワン:なるべく意地悪なキャラクターを作らないようにしています。職場の人間関係が悪いと、実際の業務もしんどいんですよ。長時間労働よりも、嫌いな人が同じ場所にいる方が辛くて……。
私が初めて新卒で入った会社はブラックだったんですが、みんなニコニコしてて和気あいあいで、人間関係はすごく良かったんです。『社畜ちゃん』はその時のブラック職場がモチーフになっています。
Twitterの反応を見ながらコンセプトを固めていく
───最初からすんなり、今の形になったんですか?
ビタワン:いえ、初めはコンセプトが決まってませんでした。Twitterでアップするたびに「この回が受けたな」って反応を見ながら、手探り状態で三つのコンセプトを決めていきました。
・ITネタ
・社会人あるあるネタ
・おっぱい
この三つをコンセプトに掲げて、なるべく外れないようにしています。TwitterのRTは数字が出るので傾向が分かりやすいんですよ。
───『週刊少年ジャンプ』のアンケート至上主義ならぬ、RT至上主義ですね。最後のおっぱいって、三段オチで最後にボケるとかそういう……。
ビタワン:本気です! 私は大きい方が好きなので、Twitterでもおっぱいマンガだって常に言ってます!
───あ、はい。すいません。
Twitterアンケートで実装された「百合要素」
───次にITネタですが、これもバズる要素なんですか?
ビタワン:最初に『社畜ちゃん』がバズったのが、①巻46ページに収録されているITあるあるネタでした。シェアされやすいネタだったみたいで、当時6000RTぐらいまで伸びました。
最近だと180話の「上司さんと『簡単な』説明」という回が、今までで一番伸びてます。こういうのはマンガの面白さというよりは、シェアされやすいのが要因だと思います。
───そういう反響を分析しながら方向性を決めていったんですね。
ビタワン:はい。読者の皆さんに Twitter でアンケートを取ることも当初は積極的にやっていました。
───「お客様が欲しいのは何か、すぐリサーチする」っていうのは、まさにシステムエンジニアっぽいです。
ビタワン:ユーザーからの要望があって、「じゃあこの機能を追加します」みたいな。『社畜ちゃん』もWebサービスを運営しているかのようです(笑)
───アンケートで新たに実装された要素はあるんですか?
ビタワン:『社畜ちゃん』は百合マンガではないんですが、百合要素(※女の子同士の恋愛、もしくは友情以上にイチャイチャする事)を追加しました。
最初の方向性を探るときに、男女の恋愛か、百合か悩みました。モブと社畜ちゃんをくっつける話も考えていましたが、アンケートをとったら圧倒的に百合が多くて目から鱗でした。
私は「自分がこうしたい」というよりは、皆さんに楽しんでもらえるものを作りたいタイプなので、喜んで百合を勉強したという経緯です。
───具体的に参考にした作品はあるんですか?
ビタワン:『NEW GAME!』ですね。『きらら』系が大好きで、モブさんや上司さんがだんだん出番が減っていったのも似てしまいました(笑)
「がんばるぞい」が流行った当時、1巻がどこにもなくて、秋葉原を駆け回ってようやく手に入れたのが懐かしいです。『社畜ちゃん』も『NEW GAME!』みたいなのが描きたくて描いている側面もあります(笑)
①巻描きおろしのデスマーチ回は、実際に経験した出来事から
───①巻収録の、出向先でどんどん人が消えたり、病気や失踪していくデスマーチの話。どこまで本当なんですか?
ビタワン:これは私の体験談そのままです。全然知らない会社に売られていって、そこで人が消えていくんです。
最初の進捗会議で「○○さんは?」って訊いたら「入院している」と。
次の会議で「△△さんは?」って訊いたら「来てない」と。
───『社畜ちゃん』まんまじゃないですか! そこから逃げずに立ち向かったわけですよね。
ビタワン:マンガはかなり美化してますけど(笑)、頑張ってそのプロジェクトはなんとか収束しました。読者さんからは「話し盛りすぎだろ」って意見と、「本当はもっと酷い、こんなもんじゃねぇぞ」って意見が両方来て面白かったです。
©ビタワン,結うき。/KADOKAWA
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