2018.03.31
【日替わりレビュー:土曜日】『あたしの家庭教師がショタなんだけど』くりもとぴんこ
『あたしの家庭教師がショタなんだけど』
ヤングエースUPで連載中の『あたしの家庭教師(カテキョ)がショタなんだけど』。
タイトルから期待されるとおり、おねショタマンガである。
須崎水緒、20歳。派手めの風体がよく似合うフリーター女性。いわゆるギャルだ。
家がお隣さんで親しくしていた「タク兄」が海外へ引っ越して5年間、ずっとメールでやりとりしながら遠距離片想いを続けている彼女は、翌年の春にタク兄が日本へ戻ってくるという連絡を受けて慌てふためいた。
真面目なタク兄に対して見栄をはった水緒は、あろうことか自分がいま東大に通う知的な女子大生だと大ボラを吹いていたからだ。
ウソを真にするべく一念発起して勉強を始めるも、なかなか捗らず途方に暮れる水緒。
そんなとき、ひとりの幼い男の子が現れ、難解な英語の教材をすらすら解いて彼女を驚かせる。
少年の名前は、夕月要。11歳。IQ200を誇る天才小学生……そして、日本に残されたタク兄の弟だった。
生意気なほどクールで毒舌あふれる要に水緒は最初反発するが、彼が兄と父に連れて行ってもらえず、また天才あつかいで人から距離を置かれる境遇によって寂しさを抱えていることに気づき、情がわいてしまう。
そこで水緒は、家庭教師をしてやるという要の申し出を受け入れて、接点をもつことにした。
かくして、小学生ショタに受験勉強を教えてもらう成人ギャルという不思議な関係がはじまる……。
本作最大の特徴は、同じエピソードをおねえさん視点とショタ視点で繰り返す構成にある。
それによってビジュアルのディテール的に、おねえさんから見たショタの可愛さ・ショタから見たおねえさんの綺麗さの両方が漏らさず描き込まれるのがありがたい(視点が単一の作品だと、どちらか一方が保証されなくてモヤモヤする場合がありますからねえ)。
さらに、一方が何気なくとった言動がもう一方にとって大きな影響を与えていたり、つれない態度の裏にドキドキいっぱいの純真な照れがあることが分かったり、「あのとき実は……」という裏側を“全体通して”俯瞰できるのが読者の特権となっている。
もともとマンガというものはコマ単位で視点の主体をころころ切り替えたり、ひとつの構図に複数人の視点を混ぜたりすることができる表現メディアである。
そこを、あえてエピソード単位でまとめて折り返すというひと手間を選んだのが面白い。
©くりもとぴんこ/KADOKAWA