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2018.04.26

【インタビュー】ヴィレヴァン「百合棚」の仕掛け人! 大岩朋子店長「本を求める人に届いてほしい」

ヴィレッジヴァンガードのいくつかの店舗で展開されている「百合棚」をご存知でしょうか。

「百合棚」、それは限られたスペースの中に余すところなく百合のマンガや文庫、関連書がぎゅっと詰め込まれた、ファンにとっては夢のような陳列棚なのです。

「ららぽーと立川立飛店」の「百合棚」

「マルイシティ渋谷店」(現在は閉店)、「池袋マルイ店」「池袋サンシャインシティアルタ店」「吉祥寺パルコオンザコーナー店」、そして「ららぽーと立川立飛店」……百合棚はこれらの店舗で展開されており、その裏には必ず一人の百合愛好家の姿があります。

それは、「ららぽーと立川立飛店」の現店長である大岩朋子さん。

大岩さんは店舗を異動していく先々で「百合棚」を作ってきた、正にその人です。今回は、百合棚がどのタイミングで立ち上がったのか、そのきっかけやこれまでの反響などと共に百合作品にかける熱い情熱を伺ってみました。

大岩朋子店長の略歴:2011年にヴィレッジヴァンガードへ入社し、京都の新京極店へ配属された大岩さんは同年イオンモールKYOTO店へ異動。2014年からはご結婚を機に上京されマルイシティ渋谷へうつります。マルイシティ渋谷店閉店に伴い2015年には池袋サンシャインシティアルタ店へ配属。同年に池袋マルイへ異動。2016年には吉祥寺パルコオンザコーナーの店長に昇格されました。2017年にはららぽーと立川立飛店に配属され現在もそこで店長をつとめています。

(取材・構成:玉置こさめ/編集:コミスペ!編集部)

やりたいことを思いっきりやったらどうなるんだろう?

──番最初にはまった百合は何でしたか?

大岩朋子店長(以下、大岩):幼稚園か小学生の頃に『美少女戦士セーラームーン』ウラヌスとネプチューンが好きだったなあと。

当時「百合」としては認識していなかったんですが、女の子のカップルがいる! と思いました。よくよく考えてみると、ウラヌスとネプチューンが初めて見た百合かもしれません。

──百合の本の展開はいつ頃から意識的に始められたのでしょうか?

大岩:元々マンガが好きで、「新京極店」に配属されてから「マンガ・エロティクス・エフ」(大田出版)の『青い花』を何気なく美しいなと思って読んでいて、仕入れて棚に置いていました。

また、その前からも『少女革命ウテナ』が好きで、これはもしかして自分の中で「百合」で興味がつながっているのかしらと。

そこから、田仲みのる先生の『メッてされてキャッ』など「コミック百合姫」(一迅社)の単行本も置いていました。当時はあまりにさりげなく百合を置いていたので、お客様からの反応は薄かったですね。そのあとに『彼女とカメラと彼女の季節』が流行しました。

百合だからというよりは、作品として爽やかで良かったなと感じます。『彼女とカメラと彼女の季節』が売れると「ガールズラブ」が周囲で話題に上がるようになり、私が元々百合を読んでいたので「あれ? その本は何?」と周囲も反応するようになって。そこからです。

──百合のマンガを棚全体に展開するようになるきっかけはありましたか?

大岩:入社して数ヶ月経ってから、コミックの棚を丸々任されるようになりました。百合作品を厚く取り扱うようになったのは「イオンモールKYOTO店」に異動してからで、棚の中の一列、二列を百合の本で埋めることを少しずつ始めたんですよ。『citrus』の単行本が出始めた頃です。

そして「マルイシティ渋谷店」に移ってから、ある日思いついたんです。「やりたいことを思いっきりやったらどうなるんだろう?」って。棚が二面あり、裏にも二面の合計四面の棚。このうち棚の一面をばーん! と全部百合にしてみました。

「マルイシティ渋谷店」の百合棚(大岩さんご提供)

「百合姫」の単行本や百合のアンソロジー『ひらり、』も、ひたすら表紙を表に向けて面出しをしました。

そんな中、ある時女性が百合のコミックスを購入しているのを見て、「あれ? 女の人も百合を買うんだ。私と同じだ。これはいけるかもしれない。棚をでかくしてみたらどうなるだろう」と思いまして。丁度「ユリイカ」でも百合特集を組んでいて、日頃発注していた百合マンガもそろそろ集まってきていました。「これはいいタイミングだ」と、表側に向けた棚の二面で展開したんです。

──お客さんの反応はどうでしたか?

大岩:すごく反応がよくてツイッターでも拡散されたのを覚えています。それを見て来店されるお客様もいましたし、出版社の担当の方が立ち寄った時も百合棚の話をしてくれました。当時目安箱をお店に置いていましたが、「ここでしか百合が買えないので嬉しい」「こんな百合を置いて下さい」とメッセージを入れてくださる方や、女性同士のカップルからのメッセージもあって。やって良かった、需要があるんだと嬉しかったです。

一番実感したのは、マルイシティ渋谷店が閉店する時ですね。百合棚の解体を知らせたら大量に買い求めてくれるお客様方がいて、みんなが見てくれてるんだと思いました。

「マルイシティ渋谷店」の百合棚で展開されていたポップ(大岩さんご提供)

──目安箱は現場性がありますね。

大岩:アナログの良さがあり、結構面白いと思いました。実験的ではありますが、間違いではないなと。

──当時注目されていた作品はどういったものがありましたか?

大岩:当時は百合姫コミックスの大判(A5判)の単行本が主流で。天野しゅにんた先生やロクロイチ先生の作品などを置いていました。大判で棚に並べるとめちゃめちゃ迫力があって良かったんです。

──印象的なお客さんはいましたか?

大岩:外国人の方に「『妹』に頼まれたんだが百合のエッチな本はないか?」とたどたどしい日本語で聞かれたことがあります。百合棚の存在を最初からご存知でしたが、最初は間違って「フリークス渋谷パルコ店」へ来店され、連絡を受けてお待ちしていたお客様でした。

でも、「妹に頼まれた」ならしょうがないですよね。それはもう全力でお応えしたい! と思いまして。「妹に頼まれた」のですから、がんばっておすすめしちゃおうと。結果的には、岸虎次郎先生の『オトメの帝国』をおすすめしました。

私ができることは店舗に棚を作ること

──その後も各店舗で百合棚を作って巡られていますね。

大岩:渋谷から異動する時に集めた本を棚ごと「池袋サンシャインシティアルタ店」へ送りました。骨組みだけ作って、百合のマンガを集めて。それから二ヶ月で「池袋マルイ店」へ異動だったんですが、その後配属された店でも全部百合の棚を展開していますね。関係者の方には「大岩さんの行くところに『百合の道』があるね」と言われます。

「池袋マルイ店」の百合棚

「吉祥寺パルコオンザコーナー店」の百合棚

──普通ではないことをやるのは最初勇気がいると思うのですが、着々とやっているのが素晴らしいですね。

大岩「個性が強み」というヴィレッジヴァンガードの社風の支えもあります。百合関連の人とのつながりが増え、『百合の世界入門』など百合関連書の寄稿や百合関連イベントのお声がけも頂くようになりました。

『百合の世界入門』(玄光社)

──売行きの傾向や、お客さんを広く受け入れるための工夫はどのように?

大岩:百合全体としては、最近はやはりKADOKAWAさんが強いように感じます。一方でヴィレッジヴァンガードでは、新刊だけでなく玄鉄絢先生の作品や『メバエ』などの既刊を求めていく方が多いです。

『メバエ』は必ずどの百合棚でも置いています。ただ、絶対にアダルトテイストのある百合マンガは人の目線の高さでは陳列しないようにはしていますね。表に向けて面で陳列すると性的な感じが際立ってしまうので、解釈や需要は色々あると思いますが平積みで提供しています。

──お持ちいただいた、おすすめの百合作品『パイをあげましょ、あなたにパイをね』の魅力を教えてください。

『パイをあげましょ、あなたにパイをね』(さかもと麻乃/一迅社)

大岩:ヘアスタイル盛り盛りの女の子やアイドル、人妻など、とにかく出てくる女の子たちのキャラクターが魅力的で、惹かれてしまいます。さかもと麻乃先生もカバーの折り返しに「女の子そのものがもうお花やケーキなんだと思います。」と書かれていて、まさしくそんなかわいらしい女の子たちがたくさん出てくる作品集です。

──最後にメッセージをお願いします。

大岩:本を直接見て買いたい人って、まだまだ多いと思います。そういった人に実際にお店で買ってもらえるのが一番嬉しいですね。お客さんが全国にいるのであれば、そのために私ができることは店舗に棚を作ることで、これからも引き続き「百合棚」を展開していきたいです。

実は今、社内で百合好きを募っていて徐々に同士の輪が広まっています。ヴィレッジヴァンガードは全国で展開しているのですが、最近では北海道に異動した店長が、「ここは百合未開の土地なので何店舗かで仕掛けてみます」と。とても楽しみですね。

何よりもお客さんに満足して頂くことが一番なので、本を求める人に届いてほしい。需要はあると思うので広めていきたいと思っています。

───本日はありがとうございました。

(※記事中の各タイトルは店頭在庫を確約するものではありません。お探しの際は予め店頭へお問い合わせください。)

「ららぽーと立川立飛店」店舗情報

ヴィレッジヴァンガード ららぽーと立川立飛店
・住所:〒190-0015 東京都立川市泉町935-1 ららぽーと立川立飛 3F
・電話番号:042-540-6471
・営業時間:10:00~21:00
・定休日:不定休

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