2018.09.01

【日替わりレビュー:土曜日】『アイラブ台湾屋台めし』フジナミコナ

『アイラブ台湾屋台めし』

本日はいつもと目先を変えて、実録エッセイ物のWebコミックをご紹介。
イースト・プレス社「MATOGROSSO」にて連載中の作品で、最近単行本が刊行された『アイラブ台湾屋台めし』である。

17世紀の明朝時代およびオランダ領有時代から島に定住する原住民、それ以降に移り住んできた客家語系統の漢民族、ビン南語系統の漢民族、また日本統治時代の影響もあいまって、いまは中国福建地方の料理をベースにさまざまな要素を合成させたユニークな食文化が広がる台湾は、グルメ海外旅行の行き先として大人気。

そんな台湾でいろいろと食を堪能するレポートが本作の主な内容となるのだが、ひとつ面白いのが作者・フジナミコナ先生のモチベーションがまず「屋台の食を楽しみたい」というところにある点だ。

行きかう人々の喧騒と屋外調理の熱気にあてられてテンションが上がり、食べ物の美味しさにやたらとブーストがかかる“屋台めし”の全身官能的な魅力! 例えばお祭りの醍醐味として思い出に刻まれているかたも多いことだろう。
そこで、あの屋台めしのアツさが年中楽しめる! という理由で台湾に注目した作者が実際に現地へ飛び、一人旅のフットワークで食い倒れを満喫した成果が本作というわけだ。

台湾大学の近くで現地学生たちが行き交う師大の夜市ではスッキリさわやかな果汁100%スイカジュースをおともに肉汁あふれる焼き小籠包(生煎包)に感激しつつ、かき氷の屋台を見つければゼリー・白玉・タピオカ・果物……と豊富なトッピングに惹かれて山盛りを頼んでみたり。

台北最大の夜市である士林夜市ではぎっしり並んだ屋台とごった返す観光客にもまれながらチョイスした味噌だれとラー油のワンタン(紅油抄手)が好みに大当たりで目を輝かせ、さらにモチ米の腸詰へソーセージを挟んだライスドッグ(大腸包小腸)のボリュームにお腹をふくらませたり。

メジャーではない小規模な夜市にも足を運び、好きな具材を選んで唐揚げにしてもらう屋台やサクサクもちもちのサツマイモ揚げ(地瓜球)で揚げ物三昧にいそしみ……。

また、目当ての市へ行くだけでなく、前後の道中でそこらのお店に興味を惹かれたらふらりと近寄っていく姿や、屋台の間をぬうように歩き回るプロセスそのものに込められたわくわくした情感など、食そのものだけではなく“雰囲気を味わう”様子がよく伝わってくるエピソードぞろいである。

読み終わると、むしょうに外へ出かけて屋台でなにか食べたくなる一冊だ。

以下余談。
渦巻き状のパンに青ネギをぎっしり詰めて揚げ焼きにする葱油餅に出会うくだりで、「あっ、『美味しんぼ』で見たやつだ!」と進研ゼミでやったやつだ的な反応をしてしまいました。
あれですよね、吹雪で雪山の別荘に閉じ込められる話でわずかな食材から美味しい料理を作ってみせるアレ。山岡さんが中国の家庭料理「ローピン」と呼んでたアレ。

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miyamo

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