2018.10.10

【日替わりレビュー:水曜日】『ヤンデレ少女にいちゃラブされちゃうアンソロジーコミック』

『ヤンデレ少女にいちゃラブされちゃうアンソロジーコミック』

偏執的なほどに愛し愛されたい

「ヤンデレ」という言葉がオタク界隈のみならずあらゆるところに根付いて久しい。定義は色々あるが、大体の場合は偏執的なまでに恋をする様子を指す。

そのバリエーションとして楽しめるのがこのアンソロジー。5通りの異なる、恋ゆえに道を踏み外した女性たちの恋愛模様を楽しむことができる。

「カゴノトリ」は、純朴な青年と、大家の孫娘の物語。普段から仲がよく、彼女は昼食用の弁当を作ってくれるほど。きわめて幸せそうな距離感だが、実は彼女には秘密があった。そうとも知らず、青年は少しずつ彼女に惹かれていく。

VRゲームを描いた「FulldiveLovers」は、現実から逃れて理想の世界を求める少年の物語。VR空間内にいた美少女ミュール。人と仲良くなるのが苦手だった少年は、ミュールの寄り添うような優しさに惚れ込む。しかし現実のTV番組で、VR世界で意識を失う人が続出するというニュースが流れ…。

「私が愛した幼なじみ」に登場する男1人女2人の幼なじみ。その中の愛深と圭太が付き合い始め、関係は変わってしまう。もうひとりの雪乃は「私は圭太のこと幼なじみとしか思ってないし」と気にしていないようだが、彼女は圭太に押し倒されるがままに身体を重ねる。

一人暮らしの青年アキの部屋に、元カノのイバラキが訪れてくる、「アキくんは愛されている」。成り行きで遊園地に行くことになった2人。観覧車に乗った時イバラキは詰め寄る。「アキ君 どうして私たち別れたか覚えてる?」彼女は手に持ったバイオリンケースを開ける。

「私ノ想イ人。」の主役は、盗撮を続ける1人の少女。彼女はいつも見かける美少女くもちゃんのことが好きになり、ストーキング行為を行っていた。彼女のタイムスケジュールをメモし、後をつける。ただし声はかけない。ところが彼女がくもちゃんのペンケースを拾い、言葉を交わしてから事件は一変する。

ヤンデレは、恋愛の描写の1つであると同時に、推理・サスペンスジャンルとして描かれることもある。恋愛少女たちの真実がクライマックスで一気に明かされて、予想もつかない展開になるのは、楽しみの1つだ。

今回掲載された5本は全て、何かしらトリックが仕込まれている。愛に狂う女性たちがアリバイをつくり、相手を警戒させないように近づく描写は、ミステリー作品のように巧み。加えて予想外の後味の悪さでゾクリとさせるホラー要素も盛り込まれているものばかり。

ヒロインはみんなかわいいけれども、ちょっとでも触れたら急転直下、ジェットコースターのようなスリルを味わえる作品揃いだ。

独占欲強めな、モンスター的な女性が多い今回のアンソロジー。怖い恋が好きならマストバイ。ただヤンデレといっても幅は非常に広いので、電波型や自虐型、攻撃型やナイーブ型など様々なヤンデレ恋愛物語を、シリーズ化して見せて欲しいところ。ハッピーエンドなヤンデレも見てみたい。

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たまごまご

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