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2018.03.15

日本の若者が全員『寄生獣』を読むまで、その素晴らしさを伝えることを僕はやめない

『寄生獣』フルカラー版 プレスリリースより(©岩明均/講談社)

こんにちは、フリーライターの紳さんです。
みなさん、『寄生獣』(岩明均/講談社)というマンガはご存知でしょうか?

『寄生獣』1巻 書影

完結したのが1995年の話ですから、もう20年以上も前の作品になります。この作品は僕が何千、何万冊と読んできたマンガの中で1番好きなマンガです。

寄生獣ってどういう話?

寄生獣の説明を文字で、と言われたら、「熱意がすごすぎて最終的に湯気で何も見えなくなる文章」になるのはわかりきっています。なので、感情を押し殺して簡潔に説明しますと

「どこからともなくやって来た地球外生命体が人間に寄生し、人間に化けて人間を喰いまくる」

そういう話です。

『寄生獣』5巻 書影

ちなみに捕食シーンはトラウマになる程に怖い描写です。頭が「くぱぁ」と割れて広がったと思ったら、それが口となって「ばつん」と人間を食べちゃいます。クリオネのバッカルコーンみたいに。わかりにくいですか、すみません。

寄生獣の目的は「人間を喰らい尽くす(絶滅させる)こと」。人類の危機です。

そして、この作品は主人公の設定がとても秀逸。何がすごいのかというと、あろうことか主人公は第1話で寄生獣に寄生されてしまうんですね。

「え? 主人公は寄生獣を倒すヒーローなんでしょ?」

YES。その通りなんですが、主人公は第1話で寄生されます。寄生されるんですが、無事なんです。むしろ寄生されたことにより普通の人間だった主人公が若干、強くなります。

『寄生獣』3巻 書影

※ここから先は、少しネタバレの要素も含みます。気になる方は先に作品を読んでからこちらの記事に戻ってきてくれると嬉しいです。
 


 
さて、このマンガの面白いところは、寄生獣にも個性があるということ。

大体の寄生獣は人間を喰い殺すことに全力を注いでくるのですが、中にはそれだけじゃないヤツもいます。そして人間の方も然り。寄生獣を害獣とみなし、駆逐しようと作戦を立てる者もいれば、寄生獣との共生を試みようとする者など多種多様。

『寄生獣』8巻 書影

このマンガ、ただのモンスターパニックではありません。「愛、生命、地球の環境問題」などをテーマにして描かれる壮大な作品なのです。ラストシーンとか完全に号泣するんで、まだ読んでいない人は絶対に読んでください。

僕がこの作品を好きな理由

あらゆる作品の中でなぜ、僕が寄生獣を1番好きな作品と決めるのか。それはマンガでありながら、「マンガを読んでいる自分の存在価値」を肯定してくれる偉大な作品であるからです。

マンガっていわば娯楽じゃないですか。僕がこのマンガと出会ったのは中学生の時なのですが、学生の頃ってマンガを読むと「勉強せずにマンガ読んじゃった」って感覚になりますよね。でも寄生獣の場合は読み終えた後に、すごく深い勉強をしたような気分になったわけです。

どういうことか。

順を追って説明しますと、この作品がストーリーの冒頭から読者に呼びかけてくる「とある問題提起」があります。それは「人間って生きていていいの?」ということです。

人間とは愚かな生物である。人間とは悪魔そのものである。人間は地球にとって害である。人間は数を減らさなければならない。そのために、寄生獣がやってきたのだ。

と、作中では人間によって引き起こされる様々な地球環境問題を例に、人間の存在価値について読者に改めて考えさせられるように問いかけてきます。(寄生獣が地球にやってきた理由は作中では明らかになりませんが)

『寄生獣』フルカラー版 1巻 書影

こんなテーマであるが故に、読者は単純に「早く寄生獣達を倒さないと! 助けて、主人公!」という思考にならず、モヤモヤと色んなことを考えながらストーリーを読み進めていくことになるんです。

主人公もすごい。例えば、主人公の母親は序盤に寄生獣に殺されてしまうのですが、ストーリーが進むにつれて主人公は「寄生獣を単なる母の仇」として見ずに「あらゆる生命体の中の1種」という見方に変わっていきます。ある意味、ドライ。

『寄生獣』4巻 書影

ぶっちゃけ、ストーリーとしては「仇討ち路線」で復讐に燃えた主人公が寄生獣を掃討していく話の方が王道で分かりやすいと思うんですよね。でも、作者の岩明均先生は複雑なテーマにあえて挑戦していくわけです。そこがまず、素晴らしい。

そして「人間って生きていていいの?」という問題に対する答えですが、結局主人公には分からないんです。
地球からすれば人間は害。大体の生物から見ても、人間は害。じゃあ、人間は何のために生まれてきた? 人間の存在は誰が肯定してくれる?

そこに突き刺さるのが、作中のラストシーンで重要なキャラクターが言うとあるセリフです。

何かと「どうして?」と答えが出せない主人公に、語りかけるように「人間はヒマだから、そうやって色んなことを考えるんだ。しかし、それが人間の最大の取り柄だ。心に余裕(ヒマ)がある人間とは素晴らしい生き物じゃないか!」と。(ちなみにセリフはままではありません。僕なりに解釈して変えちゃってます)

『寄生獣』フルカラー版 10巻 書影

つまり、最終的には「人間って素晴らしいから、とりあえず生きれば?」という提案をして終わるわけです。寄生獣ってそういう話なんですよ。

もうね、衝撃的でしたよね。めちゃくちゃ曖昧な結論だけど、これ以上ない答えなんです。つまり、生きる上で1番大切なのは「自己肯定」なんだという話。
自分が生きる全てを肯定できる。何もしていなくても、マンガを読んでいるだけの自分も肯定できる。

それを教えてくれたのが寄生獣というマンガなんです。後にも先にも、ここまで自分の人生観を変えた作品は他にないので、このマンガを「自分の最も好きな作品」として決めているというわけでした。
女の子とお付き合いできる方法についても教えてくれたら、もっと素晴らしい作品になったかと思いますが。

『寄生獣』10巻 書影

最後になりますが、僕はこの寄生獣を「名作度合いと普及度合いが釣り合っていない、稀有な作品」だと認識しています。

そもそも、20年以上前の作品なのに、実写映画化、アニメ化したのが2014年の出来事。なぜなら、爆発的ヒットというよりも「じわじわ売れて」ヒットを記録した作品だからなんですね。

なので、流行に敏感な若者は原作を読んでいない可能性が高いんです。まぁ、昔のマンガだから線も太いし、絵のタッチも独特だし。女の子も可愛くないし。

ただ、上述の通り、人に生きる希望を与えてくれる名作中の名作。是非とも多くの方に読んでほしいと思います。
特に、自分の存在価値を認められない若者に読んで欲しい。ヒマなことは素晴らしいことなんだと。人間の素晴らしさはそこにあると。だから生きてていいのだと。
 
 
だから、とりあえず寄生獣読めと。
 
 
日本の若者が全員寄生獣を読み終えるまで、この作品の素晴らしさを伝えることを僕はやめない。

そんなことを胸に秘めながら、生きる目的を探しさまよう紳さんでした。

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この記事を書いた人

紳さん

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