2020.02.27
【インタビュー】『この美術部には問題がある!』いみぎむる「宇佐美さんが赤面している顔は可愛い」
中学二年生の美術部に所属する宇佐美みずきは、同じ美術部員の内巻すばるに片思い中。ところがすばるが夢中なのは、現実の女子ではなく、絵に描いた「二次元の嫁」!?
「片思いする女の子は可愛い」を真っ向から描いたラブコメ漫画『この美術部には問題がある!』(以下、この美)の最新12巻が2月27日に発売されました。
2012年に「電撃マオウ」にてスタート、2016年にはTVアニメ化。単行本10巻からは内巻すばるの姉・ゆりねも登場して、ますます盛り上がっている本作をコミスペで大特集!
デビュー時に起こした残虐非道行為って!? 宇佐美みずきの意外な源流ヒロインとは? 舞台を中学校にした意外な理由など、作者のいみぎむる先生にすべて答えていただきました。
電撃コミックグランプリで受賞するも…? 紆余曲折の『この美』スタート
──いみぎむる先生のデビューは、どういう経緯だったんでしょうか?
いみぎむる先生(以下、いみぎ):これには複雑な経緯がありまして……「電撃コミックグランプリ」で優秀賞をいただいたんですよ。その授賞式で上京している間に、実家にワニブックスの編集さんが入れ違いで電話してこられまして、えええ~っ何それ!って(笑)。
──タイミングが一致してしまいましたね。
いみぎ:結論を言うと、電撃さんで受賞させてもらったのにワニブックスでデビューしました。これ、真っ当な新人作家さんは真似しちゃいけませんからね!(笑) 当時の自分は若気の至りで、そんな残虐非道な行いをしてしまったわけです……。
──残虐行為ですか(笑)。
いみぎ:それから時を経て、「ペルソナマガジン」に掲載する、ゲーム『ペルソナ4』のショートコミックの仕事を現担当編集の浅川さんからいただきました。その時に「オリジナルもやりたい」とお伝えして、すぐに企画書をお送りして『この美』が掲載されたという流れです。
担当編集・浅川さん(以下、浅川):『ペルソナ4』のマンガが面白かったので、絶対に連載してほしかったんです。でも当時いみぎさんは他誌でも連載されていたので、まず読み切りを2本描いていただきました。それが単行本1巻の第1話と第2話にあたります。
いみぎ:当時の負い目もありましたので、「もちろん描きます!」って即答でした。でも後で聞いたら、特に「電撃コミックグランプリ」繋がりでオファーがあったわけじゃなかったそうです(笑)。
──でも今こうして『この美』でヒット作を飛ばしているわけで、受賞した恩に報いた形になりましたね。
いみぎ:『この美』がなければ、僕は賞金をもらい逃げしたヒドイ奴のままでした(笑)。
みずきの激しいツッコミは、高橋留美子の暴力ヒロインの系譜!?
──『この美』といえば、「宇佐美みずきちゃん可愛い!」という感想で溢れかえります。宇佐美さんをここまで可愛らしく描かれる、秘訣や心構えはあるんでしょうか?
いみぎ:宇佐美さんが赤面している顔は可愛いので、極力そういうシーンは入れるように心がけています。でも宇佐美さんの空回りする片思いは要素の一つであって、最初はメインでもなかったんですよね。
──そうだったんですか?
いみぎ:はい。コミックス1巻に収録されている第1話と第2話は、読み切りという形で雑誌「電撃マオウ」に掲載されました。その時に編集さんから「宇佐美さんの内面のセリフは頻繁に出てくるけど、内巻くんは全然出てませんね」って指摘されまして。
言われてみると1話目の冒頭から、宇佐美さんが内巻くんを紹介するモノローグから始まります。なので、この物語の主人公は宇佐美さんだろうって流れになりました。
それで連載の第1回目、つまり単行本1巻の第3話目から、宇佐美さんの片思いがメインになったんです。
──では連載開始前は、もっと別のテイストも入っていたと?
いみぎ:そうです。もっとギャグ寄りを想定していたんですが、今は絶対に、単行本一冊の中に宇佐美さんの片思い回が入る構成にしてますね。
──宇佐美さんの造形は、どうやって生まれたんでしょうか?
いみぎ:元々ショートカットのヒロインが好みで、宇佐美さんのイメージは『らんま 1/2』の天道あかねがモチーフになっています。みずきがすぐ手が出るのも、そのノリだったりしますね。
──ああっ、なるほど! 高橋留美子先生の暴力系ヒロインの系譜だったんですか!
いみぎ:内巻くんへのアタリが強いツッコミも、あかねの早乙女乱馬に対するツッコミに共通するところがあります。
──うさぎの髪留めがチャームポイントです。
いみぎ:天道あかね同様に、初期のみずきもシンプルでした。でもキャラ表を見た編集長から「誰が描いてもキャラの見分けがつくような特徴を入れてください」ってオーダーがあって、髪留めを付けました。
ウサギ柄なのは、みずきがうさ耳好きだからです。あと、キャラの名前で韻を踏むのが好きで、「ウサ耳が好き → うさみみ好き → うさみみずき」、みたいな。
──フルネームで韻を踏んでるんですね。
いみぎ:他にも「伊万莉(いまり) まりあ」は「まりまり」で韻を踏んでいます。名前を付けるのが苦手なんですけど、逆にこういう縛りを入れた方が思いつきやすいんですよね。
キャラ造形は全体のバランスを意識してデザインする
──内巻すばるにはモデルがいるんでしょうか?
いみぎ:モチーフはありません。「二次元の嫁が好き」って要素も、宇佐美さんに対する真逆の性格として、「変な絵を描く男の子」って要素から決まっていきました。
こんな男の子がいたら、宇佐美さんがぎゃあぎゃあ文句を言ってくるシーンが自然に生まれるだろうなって想像しながら内面を膨らませていきました。
──キャラの役割からだったんですね。
いみぎ:自分は他のマンガ家さんと比べて、内面も外見もキャラ同士のバランスを気にする方らしくて。例えば、髪の毛の長いキャラやメガネのキャラが複数いるのが気になってしまう性質なんです。
後輩のコレットさんも中一に見えないくらい小柄ですし、部長もおっさんっぽい。極端なビジュアルが好きなので、割り切って描いています。
──すばるが女装した、すば子に激萌えします。コンテストで再登場したのも滾ります…!
いみぎ:女装させて宇佐美さんと絡ませたら面白そうってワンアイディアだけで、何回も出すつもりはなかったんです。でも、あれはあれで良いという感想をちらほらといただきまして(笑)。
初回のすば子になった状態を、コレットさんたち他のキャラクターは目撃していません。なので面白い化学反応を期待して再登場させました。
──すば子は9巻の表紙も飾りました。
いみぎ:それはカバーデザイン上の問題からですね。巻数が増えてくると、構図が限られてくるんですよ。
冬服の宇佐美さんばかり並べたら、そのうち激似な巻がどうしても出てきてしまいます。なのでバリエーションを増やすために、ブレザーを脱いだり夏服にしたり。そういう理由で、すば子の状態でバリエーションがひとつ作れるから、これは描かない手はないって。
──中身を読む前の読者には「新キャラかな?」って誤解されませんか?
いみぎ:そこなんですよね! 11巻で幼少の宇佐美さんが表紙を飾った時も同じなんですけど。雑誌で読んでいない人からすると「この子は誰なんだ?」って思われてしまうことに、後から気づきました(笑)
©いみぎむる/KADOKAWA
伊万莉まりあは、みずきの「ムムム!」の表情を引き出せる存在NEXT
1/4
2