2021.03.29
作中内の世界でオメガバースという世界観が出来上がる前に出会ってしまった、人類初の「アルファ」と「オメガ」の熱いBL!『神様なんか信じない僕らのエデン』一ノ瀬ゆま【おすすめ漫画】
『神様なんか信じない僕らのエデン』
いまを時めくBL界の流行設定「オメガバース」。
オメガとアルファ、運命のつがい等、萌えの遺伝子をくすぐる設定がてんこ盛りの世界観ですが、この作品はその世界観が完成する前、人間にアルファやオメガ、ベータの区別が現れる前からスタートし、誰も知らない体の変化に戸惑う高校生を描いています。
人間なのに突然現れる発情期。
訳も分からず同性の同級生からいい香りを感じ取ってムラっときてしまい戸惑う高校生。
まともに学生生活を送れなくなるほどに下半身の抑制ができなくなる高校生。
喬は勉強ができるだけの普通の高校生だったはずなんですが、クラスメイトの西央に(おそらく)人類発の発情期がきたことによって何かが誘発されたのか、彼から香ってくる強烈なにおいに当てられて、体育倉庫に誘い込まれてそのままやっちゃうのです。
会話して友達になって一緒に遊んでとかそういう段階を全部すっ飛ばして、ムードもくそもない汗くさい体育倉庫で欲望の赴くままに……です。
オメガバースの概念のない普通の現代で、抑えきれない性欲に任せて学校内で盛ってたらいろいろまずいと思うんですが、本人たちも訳が分からず、もはや理性ではどうにもできない体の欲求にひたすら流されてしまいます。
頭のいい喬は、自分たちの体の変化について、持てる知識とアクセスできる情報を総動員して調べるうちに、どうやら自分たちは今、イヌ科の発情期に近い状態に陥っているらしいことに気付きます。気付いたところで衝動が収まるわけでもなく、ひたすら体の欲求に身を任せるしかありません。
喬の家族は、様子がおかしいと不審に思ってはいますが、もちろん普通の人類なので、まさか自分たちの息子がアルファで、発情期を迎えたオメガ相手に盛っているとは思いいたりません。この先、いろいろと判明していく中で、周囲の反応がどうなるのかも大変気になるところです。
とにかく上巻は、本人たちも状況が把握できないまま、だいたい欲求のまま致しっぱなしです。
謎にちょっと迫った状態のまま、発情期の終盤まで裸で走り抜けるイメージでお楽しみください。衝動に逆らえない高校生の戸惑いや初々しい肌色シーンがとても良いです。
突然目覚めた本能と、もともと抱いていたほのかな恋愛感情がせめぎ合う感じも、世界観ができる前ならではの手探りな展開がとても熱いので、オメガバースはちょっと……という方にもぜひ、読んでいただきたい作品です。
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©一ノ瀬ゆま/リブレ