2020.04.10
【インタビュー】『君は放課後インソムニア』オジロマコト「こんな景色が見れるなら、眠れないのも悪くない」
高校生の演劇を見て、着想が広がった
──最初に文化祭の準備から始まるのは、映画のオープニングのような印象がありますね。
オジロ:そうですね、文化祭って当日より前日の方がちょっとお祭りな感じありますよね。主人公が段ボールで寝ているっていう絵から始めたいなと思って、段ボール、段ボール……そうだ文化祭! みたいな(笑)。
──文化祭って大体秋じゃないですか。普通に過ごしていたら学生生活で接点がないふたりの関係性が、半年ぐらい本当に何もなかったんだなというリアル感があって、納得しました。
オジロ:でも実は、時期をいじっているんです(笑)。
加納:あ、そうだそうだ! そう思うと、本当に色々ありましたね……。
オジロ:これから冬になるより、夏にしたい! って……。海や花火、大事ですからね。
加納:もう連載始まっていたんですけど、「土下座するので、季節の巡りを逆にしませんか?」と電話しました……。進学校って受験があるので、春に文化祭をやるみたいなので、そういう学校ということになりました。
──なるほど! おかげで春から楽しい学生生活を送っているようですが、主人公の丸太や女友達(蟹川、穴水)や白丸先輩、倉敷先生など、個性豊かなサブキャラクターたちはどのように決めていきましたか?
オジロ:丸太は最初からずっと今のままですね。理屈っぽくてメガネをかけていて……ヒロインが奔放なので、その対比をイメージしていました。
奔放な伊咲の影響を受けて段々と変化していく丸太
加納:サブキャラクターたちは、何回目かのネームで、文化祭始まりの今までで一番面白いネームがどん! ときたタイミングと同時に一気にラフがきたんです。
蟹川の初期ラフ画
穴水の初期ラフ画
野々の初期ラフ画
オジロ:ストーリーもキャラクターも一気に固まったんですけど、何がきっかけだったんだろう……あ、そうだ。舞台を見に行きましたね、担当さんと。
加納:確かに、そうでした! 『リボンの騎士-県立鷲尾高校演劇部奮闘記2019-』と、『高校演劇サミット』を見に行きました。舞台観劇に行ってお話ししていたら、色々とストーリーがつながりましたね。
──ふたりはよく一緒に映画や舞台を見にいくのですか?
加納:今回が初めてでした。長い間御一緒させて頂いているので今回は、新しいものに触れてみてもいいかもと思ってオジロ先生を誘ったら、うまくいったというか。いま思えば、あの劇の内容も天文部の先輩と後輩の話でした。あと、月とLINEする話とか。
オジロ:倉敷先生は『富士山さんは思春期』の時の保健の先生がそのまま登場で、白丸先輩は部活の先輩がいない中で教えてくれる人ポジションとして考えました。
左:保健の倉敷先生/右:天体写真のことを教えてくれる白丸先輩
白丸先輩は、これまた担当さんから教えてもらった、SEKAI NO OWARIの「スターゲイザー」のPVで、夜に踊る銀髪の平手友梨奈さんのイメージを参考にしています。
クリエイターからの支持がアツい
──今回の舞台に、なぜ石川県の七尾市を選んだんですか?
オジロ:新しい漫画を描くときに、舞台をちゃんと設定して話を作りたいと思って、先に取材に行きたいと相談をしました。海がでてくる漫画を描いたことがないので、海がいいなって。
そしたら一回目でもう、いい場所が見つかっちゃったという……。観光で能登方面まで足を運んだことはありましたが、作品の舞台に決まってからは頻繁にお邪魔しています。
──七尾のお気に入りのポイントは?
オジロ:海と山と……海に向かう川と繋がってる感じとか。街がコンパクトにまとまっている感じですかね。あと、とても空が広く気持ちいいですね。
──2巻発売時に、七尾市で聖地巡礼イベントも開催されましたね。
加納:七尾市の皆さん、ものすごく協力的なんです! 七尾高校も公式に取材させていただきましたし、七尾街づくりセンターのみなさんが聖地巡礼イベントや複製原画展も企画してくれました。
七尾市内だけじゃなくて石川県内全域のコンビニにコミックスを置くために自主的に動いてくれていたりと、援護射撃が素晴らしくて、本当にアツいんです。
──聖地巡礼イベントで何か印象深いことはありましたか?
加納:こっそり、オジロ先生が参加者として混ざっていたってことですかね(笑)。
全部で2〜30人くらいいて、県内の方だけでなく遠方から来られている方や、若いカップルの方などもいました。熱烈なファンの方がいらっしゃって、競輪のレースって出資するとレースタイトルを付けられるそうなんですが、つい先日「君は放課後インソムニア記念レース」をやって下さった方がいたんです!(笑)
──それは嬉しいですね! 支持してくれている声がそんな形で見れる経験はなかなかできなさそうです……!
加納:3集の帯を書いていただいたテレビ東京の佐久間宣行さんもインスタで呟いてくださったり、「漫道コバヤシ漫画大賞」でこの作品のために「甘酸っぱい賞」を新設してくださったり、バンドのマカロニえんぴつさんがコラボする漫画として指名してくださったり、『君は放課後インソムニア』はクリエイターの方からの支持の声をよく聞く気がします。
特にマカロニえんぴつさんは「マンガミュージックビデオ」という漫画とMVがシンクロする企画でコラボさせて頂いて、今YouTubeで視聴できます。その「遠心」という楽曲はなんと『君は放課後インソムニア』をイメージして書き下ろされた新曲なんです! ストアのサムネイルも作中伊咲が「月から手ぇ振るね」と言うコマがそのまま使われています。
オジロ:びっくりしました。歌詞も「この場所を許して」とか「ダンボールの惑星」とか「眠れぬ夜の心音の風景」とか、ずばりみたいな歌詞が入っていてすごく嬉しかったです。
加納:最近も、「天気の子」のヒロインなどで大人気の女優・森七菜さんがインスタライブで受けた、好きな漫画は? という質問に『君は放課後インソムニア』を「大好きです!」と挙げて下さってて、すごく嬉しかったですね。
©オジロマコト/小学館