2018.02.19

【まとめ】あの話題作もここから生まれていた!「なろう小説」原作で、注目のコミカライズ10作品

『薬屋のひとりごと』

薬屋の娘として優れた見識を培いながらも、人さらいに売り飛ばされて宮中の下働きになっていた少女・猫猫(マオマオ)。
あるとき後宮では帝の世継ぎとなるはずの赤子が次々と亡くなり、誰かの呪いかと噂が流れて2人の妃に確執が生じていた。薬や毒に対する興味が誰より強い猫猫はいち早く真相に気づいたため、正体を隠して妃へ子供の命を守るためのメッセージを送ったのだが、宦官の壬氏(ジンシ)に差出人として見破られてしまう。
妃の一人・玉葉妃(ぎょくようひ)は己の子を救った猫猫に身分をかまわず礼を述べたうえ、自分の侍女になるよう求めてきた。これにより、猫猫の宮仕えに思いもしなかった波乱が訪れる。

原作小説ミステリ寄りのサスペンス色を帯びた後宮ストーリーという意味で、例えばコバルト文庫などにみられる少女小説のムーブメントも参照できるわけだが、そうしたジャンル的バックグラウンドが活きる見事なコミカライズがおこなわれているのが『薬屋のひとりごと』(日向夏,七緒一綺,ねこクラゲ,しのとうこ/スクウェア・エニックス)。

主人公の猫猫は顔にそばかす、体型は貧相、目つきや挙動も愛嬌があるタイプではないそこそこの見た目だが「賢そう」なオーラがにじみ出ており、きらびやかな妃や眉目秀麗な宦官青年の描写とあわせたキャラクターの描きわけが舞台設定や物語の流れときれいに一致し、とても内容をつかみやすい。
小説のビジュアル化としても、マンガ単体の出来としても上々という、原作のファンと未読者どちらもしあわせなケースの最たるものである。

なお、コミカライズ担当のねこクラゲ『曹植系男子』『剣の詩 筆の詩』といった中国物の作品を過去に描いている。適材適所。

試し読みはコチラ!

『Re:Monster』

おおもとは『Re:Monster――刺殺から始まる怪物転生記――』という題名で「小説家になろう」に投稿されたWeb小説。
のちに商業出版される際、版元のアルファポリスの方針に添って「なろう」から本編を削除、アルファポリスの投稿サイトへ移された(現在「なろう」には外伝のみ掲載)。それをマンガ化したのが『Re:Monster』(金斬児狐,小早川ハルヨシ/アルファポリス)である。

超能力などのSF要素がある現実でストーカー女性に腹を刺されて死んだ人間の若者が、(人間基準で)醜怪な緑肌の亜人モンスター「ゴブリン」の赤子に前世の意識を持ったまま生まれ変わり、肉体や戦闘力を急成長させつつ同族の仲間を引っぱるリーダーとなっていく。

ただのゴブリンからホブゴブリンへ変化、さらにオーガとなり原作ではついに鬼神の域まで達する出世魚っぷりはまさにゴブリン界の島耕作力強くもシャープな画風によってゴブリンの個体ごとの違いがぱっと見で分かりいやすいのがマンガ版の特色だ。
現実でもフィクションでも、人間視点だと別種の生物の見分けはなかなかつかないが、向こう側の視点からは逆も然りだろうなあ、という気持ちになる。

まったくの余談だが、ネット掲示板のAA読み物を原型にもつ小説『ゴブリンスレイヤー』という作品がある。
ひたすらゴブリン狩りに徹して凄腕冒険者になった男の生きる過酷な世界を描いたハードな内容で、『Re:Monster』とあわせてチェックすると面白いかもしれない。マンガにもなってますね。

試し読みはコチラ!

『蜘蛛ですが、なにか?』

前世で現実世界の女子高生だった記憶を持ちながら蜘蛛の弱小モンスターに生まれた主人公「私」が迷宮を探索しつつ、毒カエルや巨大蛇など上位捕食者に対して鋼のメンタルと特殊スキルをフル活用して立ち向かう、種族ヒエラルキー下剋上ファンタジー。

蜘蛛がドラゴンと戦って勝つよ!
『蜘蛛ですが、なにか?』(馬場翁,かかし朝浩,輝竜司/KADOKAWA)では、さまざまなキャラクターの視点が挟まれて群像劇に近い形式になるが、コミカライズは主人公にふりかかるシチュエーションに的を絞ることでマンガとしての読みやすさを上げている。
並列思考というスキルを身につけて以降は3種類の別人格と内面会話がおこなわれるようになり、公式サイトでは主人公ひとりだけで人物紹介欄を四枠使うという面白い状態に。『ボボボーボ・ボーボボ』の人気投票みたいな。

試し読みはコチラ!

『転生したらスライムだった件』

会社の後輩から彼女自慢に呼び出されたうえ通り魔に刺されて殺されるという、一度に二回死ぬような最期をとげたアラフォー童貞・三上悟が生まれ変わった先は、剣と魔法のファンタジー世界。
ただし新たな人生は勇者でも魔王でもなく、「スライム」としてのものだった。ヒトのような感覚器官がいっさいないため何も見えず何も聞こえず途方にくれかけたが、応用範囲の広い「捕食」ともうひとつの特別なスキルによって活路が開かれる。
見た目は弱々しいたった一匹のスライムは暴風竜ヴェルドラと友好を結んだのを皮切りに、さまざまな巡り合わせをへて配下を増やし、やがて強国も無視できない一大勢力を築いていくことになる。

異世界転生の変化球としてゴブリンなど非人間種族への転生物があるわけだが、さらにその変化球としての、非人間かつ非人型への転生ストーリー『転生したらスライムだった件』(伏瀬,川上泰樹,みっつばー/講談社)。
『蜘蛛ですが、なにか?』に並ぶ、無理ゲーっぽいところから最強にのしあがっていくのが気持ちいい趣向である。
コミカライズは、巨大なドラゴンや大きな構造物にちっぽけなスライムが向かうスケール対比が見た目に分かりやすく、作品のコンセプトがきわだって楽しめる。

ところで、『ドラゴンクエスト』シリーズなど一部の和製ファンタジーの影響で弱小イメージがついたスライムだが、洋物のPRG(TRPG含む)においてスライム系モンスターはむしろ始末の厄介な強敵である。
打撃や斬撃が意味をなさないわ、見境なしになんでも喰らって溶かすわ、あからさまな弱点を設定しないと際限なく強キャラと化してしまうからだ。

それをふまえて、ドラクエ系スライムの弱小イメージから洋物の強いスライムのイメージまでひとつの作品内に接続したうえで、さらに独自のアレンジを加えたのが「転スラ」なのだ。

試し読みはコチラ!

『転生したら剣でした』

奴隷として引き回されていた猫耳獣人の少女がモンスターに襲われた。
死を意識したそのとき少女の眼前にあらわれたのは、威容を放ち、ひとの言葉で語りかけてくる大剣。
不思議な剣を手に取った少女は的確な指示を受けてモンスターを打ち倒し、奴隷商人の死によって自由の身となった。
じつはこの剣、少女の住む世界とは異なる世界で命を落とし、この世界で剣に生まれ変わった元・人間であった……。

非・人間かつ非・人型、かつ無機物への転生という変化球の三段重ねを投げ込んでくる作品『転生したら剣でした』(棚架ユウ,丸山朝ヲ,るろお/幻冬舎コミックス)。
それでいて、異世界サイドの少女「が」神秘的な剣に出会うという主語の置き方によって力強いヒロイックファンタジーとしても成り立っており、歯ごたえがある内容だ。
肉体がないので保護者として純粋に女の子を見守る形になるのも、上品さがあっていい。

原作小説は剣になった男の一人称で、プロローグもそちらの独白から始まるのだが、順番を入れ替えたうえで少女にも内面描写をわりふったコミカライズの構成は、絵で明示的に描かれることによってキャラクターの立ち方が小説とは異なってくるマンガの性質上、大正解だろう。

単純に原作をなぞるのではなく、マンガに翻訳するために最大の努力をはらっているところに好感がもてる。

試し読みはコチラ!


さて、いかがだっただろうか。
現時点、「小説家になろう」以外にもKADOKAWAの「カクヨム」など有力なWeb小説投稿サイトは複数あり、それらも書籍化→コミカライズの起点を生んでいる。まずは上に挙げたラインナップを手かかりに広い裾野へ目を向け、自分好みのベストを探す楽しみを得ていただきたい次第である。

1

2/2

関連画像

この記事を書いた人

miyamo

このライターの記事一覧

無料で読める漫画

すべて見る

    人気のレビュー

    すべて見る

        人気の漫画

        すべて見る

          おすすめの記事

          ランキング